生成AIとAI Overview時代におけるサイト運営の考え方
こんにちは。今回もブログを担当しますWebディレクターの佐藤です。
この数カ月、検索順位は改善しているのにセッション数が伸びない悩みを抱えていました。
検索順位、表示回数は改善しているものの、クリック数が減少しています。
おそらくAIの影響だろうと考えていますが、これを機に今後のサイト運用の考え方についてまとめることとしました。
はじめに
生成AIの急速な進化と検索エンジンにおける「AI Overview(生成AIによる検索結果のサマリー提示)」は、サイト運営の在り方を大きく変えています。
これまで成功していた「コンテンツSEO」、特に2次情報をわかりやすくまとめる手法は、AIによって一瞬で代替されるようになりました。
この変化は「SEOを工夫すれば流入が増える」という従来の常識を揺さぶり、多くの運営者にとって転換点になるかと思います。
さらにその先には、膨大なコンテンツの中で、限られたユーザーの時間をどう獲得するか という本質的な課題が待っています。
本記事では、特に コンテンツSEOや2次情報量産に依存してきたサイト運営者 に向けて、
- AIとAI Overviewがもたらす環境変化
- 一次情報へのシフトの必要性
- ターゲットとタッチポイントの再設計
- 広告とコンテンツの役割分担
- そして「ユーザー時間の取り合い」を見据えた戦略
を包括的に解説し、最後に具体的な運営シナリオ例をご紹介します。
1. 生成AIとAI Overviewがもたらす変化
(1) ユーザー行動の変化
- 従来:検索 → 上位サイトをクリック → 情報収集
- これから:AIに直接聞く、もしくは検索結果のAIサマリーで完結
ChatGPTやGeminiのような生成AI、GoogleのAI Overviewが普及し、従来の「検索結果経由でのサイト流入」という導線は短縮され、サイトに訪れる機会が減少しています。
(2) サイトトラフィック減少のリスク
特に影響が大きいのは:
- 用語解説や定義
- 基本的な手順やFAQ
- 汎用的な比較やまとめ記事
これらはAIが即時に答えられるため、クリック率(CTR)の低下は避けられません。
少なくとも自身が検索し、サイトへ訪問する機会は減少しています。
2. 「2次情報SEO」依存モデルの陳腐化
過去のSEOでは、公開情報を整理・編集して「分かりやすい記事」を量産することで成果を出せました。
しかし今後は:
- AIが圧倒的なスピードで代替
- Googleが「独自性・専門性」を評価軸に強化
- ユーザーがサイトに求めるのは「一次情報」や「実体験」
という変化が進むため、2次情報中心のSEO施策は持続可能なモデルではなくなっていきます。
3.コンテンツ運営の方向性
(1) 一次情報へのシフト
- 自社調査や独自アンケート
- 専門家インタビューや事例取材
- 社内の実践記録やノウハウ
「自社にしか出せない情報」を軸に据えることが必須になります。
(2)編集力とストーリー化
一次情報そのものは価値がありますが、ただ出すだけでは埋もれてしまいます。
- データの背景や意味を編集して提示する
- 継続的に追跡・シリーズ化して「知見」として蓄積する
ことが差別化に繋がると考えます。
(3) ユーザー体験の強化
- 診断ツールやチェックリスト
- 事例投稿や口コミを集めた参加型コンテンツ
- コミュニティやイベントでの双方向性
これにより「読む」以上の価値を提供でき、AIでは代替されにくくなります。
4.ターゲットとタッチポイントの再設計
(1)ターゲットの見直し
- AIで満足するライトユーザー → 流入は期待しにくい
- 深い情報や事例を求めるユーザー → 狙うべき中核層
- 購買や行動に直結するユーザー → 優先的に設計
(2) タッチポイントの多様化
- 広告 → 新規獲得
- SNS → 認知・拡散
- オウンドメディア → 深い情報・信頼
- メール/LINE → リピート接触
- コミュニティ/イベント → ファン化
「検索に依存しない流入経路の多層化」がより必要になります。
1次情報にシフトした場合においても、新規ユーザーの検索流入は減る可能性が高いと思います。
5.広告との関係
質の高い一次情報や体験型コンテンツを制作することは多くのリソースを消費します。
新規ユーザーとのタッチポイントの創出は広告と分担できるため、費用バランスの再検討と予算の計画が必要です。
- 広告:短期的なタッチポイント獲得、新市場での露出
- コンテンツ:中長期的な資産形成、ブランド信頼性の構築
短期は広告、長期はコンテンツ。両者を補完関係で運用することが現実的です。
6.コンテンツが溢れる時代の本質:ユーザー時間の取り合い
ここからは少し内容が変わります。
競合他社含め各社が1次情報を積極的に制作し、発信するようになった場合の未来を想像した時、今よりもコンテンツの質は上がるかもしれません。
しかし、未来でそれが普通になれば結局のところ自社のコンテンツを見てもらうことは難しくなり、今よりも費用対効果は悪くなります。
感覚値ですが、2次情報よりも1次情報の方がコンテンツとしての質が問われる、読んでもらうハードルが高いと感じます。
独自性のあるコンテンツの方が、ユーザーにとって不要なコンテンツにもなりやすいと考えています。
そのため、もう少し引いた視点で考えることも重要です。
(1) 競合は同業他社だけではない
ユーザーの「時間」を奪うのは:
- Web内:オウンドメディア、SNS、YouTube、Twitch
- Web外:ゲーム、書籍、雑誌、テレビ、ラジオ、映画、スポーツ
「同じ検索ワードを狙うサイト」ではなく、あらゆるコンテンツ産業も競合と考えられます。
(2) ユーザーがコンテンツに触れる目的
- 情報収集:課題解決や最新情報
- 娯楽:楽しみや暇つぶし
- 勉強:スキル習得や自己成長
(3) ユーザーが触れる時間
- 隙間時間:通勤や待ち時間 → SNS・短尺動画が強い
- 余暇の娯楽時間:夜や休日 → 長編記事、動画、ゲーム
- 勉強・集中時間:まとまった時間 → 専門記事、教材、E-Book
7.時間への差し込み方
(1) 隙間時間を狙う場合
- スマホで即解決できるQ&A記事
- 1分で読めるTips
- SNSやショート動画連動
(2) 余暇の娯楽時間を狙う場合
- 読み物系コンテンツ(インタビュー、ストーリー記事)
- 体験型企画(漫画化、動画化、ユーザー参加企画)
(3) 勉強・集中時間を狙う場合
- ホワイトペーパーやE-Book
- 実践的な長編記事や講座型コンテンツ
- 有料会員制の教材や専門解説
「どの時間帯に差し込むか」を意識すると、コンテンツの形式や設計が明確になります。
8.具体的な運営シナリオ例
シナリオA:隙間時間狙いのメディア
- 形式:短尺記事、SNS投稿、ショート動画
- 目的:ライトユーザーの認知拡大
- 導線:広告 → 短尺コンテンツ → メルマガ登録
シナリオB:余暇の娯楽時間狙いのメディア
- 形式:インタビュー記事、ケーススタディ、読み物企画
- 目的:ブランド体験・ファン化
- 導線:SNS拡散 → 読み物記事 → コミュニティ参加
シナリオC:勉強時間狙いのメディア
- 形式:体系的な専門記事、E-Book、オンライン講座
- 目的:深い信頼構築とリード獲得
- 導線:SEO流入 → 詳細解説記事 → 資料DL/会員登録
まとめ
生成AIとAI Overviewの登場により、
- 2次情報SEO依存モデルは限界を迎えつつある
- 一次情報と体験価値が差別化の鍵
- 短期は広告、長期はコンテンツ
- ターゲットとタッチポイントを再設計し、検索依存を脱却する必要がある
- 最終的には「ユーザーの限られた時間」をどう獲得するかが勝負になる
これからの運営者に求められるのは、
- 何を伝えるか(一次情報)
- どの時間に届けるか(時間差し込み戦略)
- どの体験を提供するか(UX設計)
という三位一体の視点だと考えています。
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