外壁塗装メディアの立ち上げから収益化~事業譲渡に至るまでの7年を一気に振り返る!

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こんにちは。
ファングリーのコンテンツディレクター、宇佐美です。

当社は、クライアントワークを中心に展開するコンテンツマーケティング事業とブランドクリエイティブ事業のほか、自社のバーティカルメディア運営事業にも取り組んでいます。

今回は、そんなメディア運営事業の主軸だった『外壁塗装コンシェルジュ』について。
主軸「だった」と書いたのは、2020年11月の事業譲渡により、他社の資産になっているからです。

このメディアがなぜ誕生し、どのように成長し、譲渡に至ったのか。
その流れをダイジェストでご紹介しつつ、当時の運営スタッフの声を交えながら立ち上げの理由や方針・体制における改善プロセスを掘り下げます。

『外壁塗装コンシェルジュ』はどんなメディアなのか

『外壁塗装コンシェルジュ』はどんなメディアなのか

はじめに、この『外壁塗装コンシェルジュ』(以下『外壁コン』)というメディアについて説明します。

・メディア名:外壁塗装コンシェルジュ
・URL:https://gaiheki-concierge.com/
・譲渡先企業:株式会社じげん
・サービス概要:建物に対して不安や悩みを抱えている方への相談対応や解決のアドバイス/希望の修理・工事に対応可能な優良業者の紹介

『外壁コン』の事業が産声をあげたのは2013年。ファングリーのグループ会社であるブランディングテクノロジーがまだフリーセルという名前だった頃、既存事業とのシナジーを目的に作られたマッチングメディアです。

当時は住宅関係、とくに外壁塗装関係の企業様から、Webサイト制作を含むサービスプロモーションに関するご相談をいただく機会が多くありました。そんななかで、「いい塗装会社に依頼したい→でもよくわからない消費者」と「そういったお客様にいいサービスを提供したい→でもその機会が得られていない外壁塗装会社(=既存のお客様)」をマッチングするプラットフォームとして誕生したのが『外壁コン』です。

マネタイズの仕組みは、次の2つです。

【外壁塗装会社からの登録料】
サービス内容が異なる複数のプランを用意し、月額で登録料をいただく。登録している外壁塗装会社には、それぞれに応じたサービスを提供する。

【外壁塗装会社からの成約料】
外壁塗装会社とユーザー(消費者)がマッチングし、施工が無事に完了したら、成約料として外壁塗装会社から工事代金の一部をいただく。

外壁塗装会社選びの経験が豊富な消費者は、そうそう多くないでしょう。つまり、自宅の外壁や屋根になにかトラブルなどが見つかった消費者の方が塗装会社を選ぼうとした際、「どの会社に依頼すべきなのか」を判断できない(その情報がない)ケースが圧倒的に多いのです。そういった消費者に対して「外壁塗装会社の選び方」を解説したり、「安心して任せられる塗装会社」を紹介したりするのが、このメディアの大きな役割でした。

また、塗装工事においては長年「どうやら手抜きも多いらしい」という風評があり、実際にトラブル事例も多く報告されていました。外壁塗装業界の内情やサービスに詳しい自分たちなら、そうした不安(消費者にとっても塗装会社にとっても)を払拭できるんじゃないか。こうした手応えも、立ち上げの理由になりました。

“中途半端”な方針の転換とコンテンツマーケティング

“中途半端”な方針の転換とコンテンツマーケティング

立ち上げ当初は、ユーザー(消費者)・外壁塗装会社・フリーセルの三者でメリットが得られる体制を作ることに主眼を置いていましたが、途中からはシンプルに「ユーザーが抱える不安や悩みにとことん寄り添うこと」へと方針を転換しました。言うなれば、そこでユーザーと一緒になって解決へ導く「コンシェルジュ」としての姿勢・立ち位置を明確化したわけです。

そのように振り切った当時のことを、『外壁コン』に立ち上げから携わった杉山さんが教えてくれました。

杉山:「メディアを立ち上げてから何年かは、成果がゼロに近い状態。広告をかけていたもののコストパフォーマンスは低く、なにをやってもうまくいきませんでした。思えば、初めはいろんなことが“中途半端”だったんだと思います。マッチングサイトは集客が生命線なので、とにかくユーザーの方々に興味を持ってもらわなければならない。そこで、途中から『とことん寄り添うスタンス』に切り替えました。そして、それを機に取り組み始めたのがコンテンツマーケティングです」

杉山:「……今、なんかちょっとカッコいい感じで言いましたが、当時の私は『コンテンツマーケティング』の『コ』の字も知らないような状態でした。このプロジェクトに入ったときはWebデザイナーでしたしね。仕事として記事を書いた経験なんてもちろんありません。そんな状況でしたが、自分がデザインしたメディアへの愛着もあり、とりあえずやれることをやろうと思って記事コンテンツを一から作り始めました。一番の動機は、『この子(メディア)を育てたい』という“母性”ですかね(笑)。誰かにやらされていたらきっと続かなかったと思います」

杉山:「よかったのは、そこから少しずつ集客が軌道に乗り始めたこと。コツコツと投下していたコンテンツのPV数が伸びるにつれて、制作体制(人員)も強化されました。記事を作るネタを考えたり、投稿作業を手分けできたりと、スピーディーに進められるようになったのは大きかったと思います。あとは、精神的な部分もそうですね。結果がなかなか出ない状況で、同じ目的に向かって取り組んでくれるメンバーの存在がいかに心強かったか(笑)」

コンテンツを作ることだけが、コンテンツマーケティングではありません。ニーズのあるキーワードを探したり、どんな記事が読まれているかをツールで解析したり、その解析をもとに修正を行ったりして、仮説の設定と検証を繰り返しながらPDCAを回していく必要があります。これを1人でやるとなると、なかなか難しい。

少人数でオウンドメディアを運用している企業も多いと思いますが、リソースが少ないと成果が出るのも遅くなります。コンテンツマーケティングは長期戦、そして総力戦。経営者や事業責任者には、その意識と覚悟が必要です。思うような結果が出ないなかでも応援し続けてくれた経営者がいたという点で、『外壁コン』は恵まれた環境にあったと言えるかもしれません。

プロジェクトが黒字化したのは、杉山さんが“コツコツコンテンツマーケ”を始めてから2年目に突入したタイミング。広告に頼らずオーガニックだけで集客できるようになり、そこから相談は飛躍的に増えていきました。

“退職危機”をプラスに変えたオペレーティングチーム

“退職危機”をプラスに変えたオペレーティングチーム

コンテンツマーケティング(集客)がうまくいっても、それだけで事業は回りません。ここで重要になってくるのが、集客を受注につなげるオペレーティングチームの存在です。『外壁コン』では、Webで問い合わせをしたユーザー(消費者)に対する架電・ヒアリング、それに伴う外壁塗装会社の選定・案内、加盟を希望する塗装会社の審査・登録、クロージングおよび成約処理といった一連の業務を、オペレーティングチームが担当していました。

もともとオペレーティングチームにいた男性管理者が、一身上の都合で退職。それとほぼ時を同じくして、さらに2名のオペレーターが退職してしまいます。この窮地においてチーム立て直しの鍵を握ったのが、ともえさんです。

当時の状況や、どのようにオペレーティングチームを立て直したのかについて話を聞きました。

ともえ:「私がこのプロジェクトに入ったのは2019年の秋でした。それまではオペレーターの性格やスキルに合わせて仕事を割り振っていましたが、それだと急な休みや退職が発生した際にフォローが難しくなったり、仕事の内容や量が偏ったりするデメリットがあります。『外壁コン』は少数精鋭。じっくり育成するのは『オペレーターが長く就業してくれること』が大前提なので、少人数のチームで業務内容に差がある状態が続くと、かえってスキルがあるオペレーターの離職を招くと考えました。そのため育成にかける期間を短くし、早々にスキル平準化を目指す方向に舵を取りました」

ともえ:「すぐに2名の退職が控えていたので、その方たちの在職中に体制を整える必要がありました。新たに2名を採用し、1ヶ月半から2ヶ月かけて行っていた育成計画を最大1ヶ月で終わらせるように組み直しています。座学研修の内容も問い合わせ対応を軸に変更し、電話対応のコツや事例の共有方法など、従来の研修より実践的な内容の実習も行いました。知識は、詰め込んでも使わなければ忘れてしまいます。なので、内容が難しくても“使い方”を先に教えたほうが効率的なんですよね。オペレーターの方がもともと優秀だったこともあって、採用した2名は、入社後1ヶ月ほどで基本業務を問題なくこなせるようになりました」

ともえ:「追客業務に関しては、クロージングのトークスプリクトとクロージング基準を作成してオペレーターに共有しました。『外壁コン』はユーザー(消費者)に外壁塗装会社を3社紹介する仕組みでしたが、どこか1社を特別扱いするわけにはいきません。公平性を保つため、クロージング時の『押すポイント』と『引き際の見極め方』についても、オペレーター間で共通認識を作りながら進めました」

ともえさんがそうした動きをするなかで、オペレーターの「成約率への意識」は自然と高まっていきました。ただ目標となる数字や実績を共有するだけでは、オペレーターに数字意識を持ってもらうことは難しいでしょう。その点、「その数字を追うにはどう取り組めばいいのか」を理解できるように伝え、常に考えさせるようにしたことが意識づけにつながったのではないか、とともえさんが教えてくれました。

『外壁コン』がもたらした収益以外の価値

事業においては収益を追求することが非常に重要です。しかし、事業を通して得られる価値は収益以外にもあります。『外壁コン』においてそれは、「ユーザーニーズを深堀りするノウハウ」だったり、「事業運営を成功させるプロセス」だったりするのかもしれません。

事業のスタート当時は、メンバー全員が「メディア運営の素人」でした。何が正しくて何が悪いかが判断できず、疑心暗鬼になったり、関係者同士で衝突したりといったこともありました。さまざまな部署のメンバーが参画していたので運営に対する意識やオーナーシップがバラバラだったこと、目に見えた結果がでない焦りから危機感がよくない方向に作用したことが原因です。

しかし、立ち上げからしばらくして『外壁コン』の部署が誕生。メンバーが同じ目標、同じ基準を持てるようになりました。事業が黒字化したのもこの後です。2019年の増税前需要、また同年の都市圏への台風上陸による“外壁塗装特需”もあって、売上が大きく伸びる結果になりました。

そんな『外壁コン』も、2020年11月に事業譲渡の時を迎えました。主な理由は、「経営資源の選択・集中」という会社的な事情と、「外壁メディア事業の今後の安定拡大」というさらなる事業発展への期待感の2点。ライフメディアプラットフォームを数多く手がけている譲渡先のほうが、よりシナジーが生まれやすく、『外壁コン』にとっても幸せだろう――という判断でした。

寂しい思いもありますが、「かわいい子には旅をさせよ」という格言を踏まえれば、あたたかく送り出すのが“我が子”のためなのかもしれません。

まとめ

当社メディア事業としての『外壁コン』は終幕を迎えましたが、「ユーザーニーズを深堀りするノウハウ」や「事業運営を成功させるプロセス」はファングリーに残り続けます。
そして『外壁コン』がもたらしてくれた価値は、また別の新たな価値を生むためのエッセンスとして活かされ続けていくのです。

ファングリーのメディア運営事業では現在、新たなBtoBメディアの“仕込み”を行っています。
ユーザーにとことん寄り添うスタイルで新たな価値をつくっていきますので、ぜひご期待ください。