こんにちは。
ファングリーのコンテンツディレクター、宇佐美です。
ファングリーの設立から、はや3ヶ月が経ちました。
会社のロゴもようやく見慣れてきて、「自分たちのもの」として馴染んできた感覚があります。
戦国時代では真田幸村の「六文銭」や石田三成の「大一大万大吉」などは特に有名ですが、自分たちの想いを込めた旗印はいつだって戦場に立つ者の士気を上げてくれます。
今回のテーマは現代における旗印、企業ロゴです。
ファングリーでは、2名による社内コンペを経てロゴが決定しました。
参加した2人のデザイナーに、“壮絶だった”と噂されるプロジェクトストーリーの裏側についてたっぷりと語ってもらいました。
――まずはファングリーのデザイナー、宮越さんです。よろしくお願いします。
宮越:「よろしくお願いします」
――そしてもうおひと方、松井さんです。
松井:「よろしくお願いします」
――松井さんは、グループ会社のブランディングテクノロジー所属ですね。
松井:「はい。デザイナーではあるのですが、今はブランド・プランナー協会の理事長として、ブランディングの普及・啓蒙やプランナーの育成につながる活動をメインで行っています。ブランディングテクノロジー社のCIデザインもつくりました」
――お二人はどういった経緯でコンペに参加したのですか?
松井:「企業ブランディングの文脈においてロゴデザインの制作実績があることから、代表の松岡さんに声をかけてもらえたのかなと思います。松岡さんとは付き合いが長く、僕の手の内もよく知っているので、何か意味あっての起用でしょう(笑)」
「宮越さんはちょうどこのコンペの前、ある金属加工会社様の企業ブランディング支援でカッコいいロゴをつくってお客様に喜ばれていましたよね」
宮越:「触れていただきありがとうございます(笑)。ファングリーのロゴ制作については、まだ社名も決まっていない段階から声をかけてもらっていました。なので、かなり意気込んでいたのですが、最初は自分ひとりでやるものと思っていたんですよね。実は、後になって『松井くんにも声をかけたので、コンペで決めましょう』という話をされました。いざ本番という段階になって、急に競わせたくなったのかもしれません(笑)」
松井:「なんか松岡さんっぽいですね(笑)。コンペでは、まず松岡さんに会社の事業戦略や外部に共有したいイメージをヒアリングしました。その後、ロゴデザイン案とコンセプトをプレゼンし、フィードバックをもらってブラッシュアップする――というのを、何度も繰り返しました」
――どのようなフィードバックがあったのですか?
松井:「細かく言うとそれこそ切りがないのですが、BtoB事業がメインということもありすごくシンプルな感じが望ましい、だがロゴにはディテールまで意味を持たせたい――ということでした。それを受けて細部まで意図をたくさん込めたのですが、自分の中でしっくりくるバランスをなかなか見出せず苦戦したのを思い出します」
宮越:「私も、松岡さんのこだわりや好みを探りながらひたすらパターンを出しました。ずっと一人で考えているとイメージがズレてしまうので、ヒントが得られたらすり合わせて調整――の繰り返し。でも、ブラッシュアップしていく過程で松岡さんが思い描くイメージに着実に近づいていけました」
――最終的に、コンペの結果はどうなったのでしょうか?
宮越:「もう結果の話をします?早いですね(笑)」
――読んでくれている方は気になるじゃないですか。
宮越:「最終のひとつ前のプレゼンミーティングでは、松岡さんから『宮越の案が良い』みたいな意見があったんですよ」
松井:「そうでしたね。そして、少し時間を置いての最終決定だったかと思います」
宮越:「そこで、最終的に松井さんの案に決まったと(涙)」
――な、なるほど。
松井:「僕はいろんな角度から検証を繰り返して少しずつ調整したいタイプなので、お客様のプロジェクトでもそうなのですが、長考される方には好まれる傾向があるのかなと思っています。結果的に僕の案が採用されましたが、決まった後も細かい調整がかなり多かったので『やりきった!』という感覚には全然なりませんでしたね(笑)」
松井:「フォントにも時流というかトレンドがあるので、それを汲んだ上で『ファングリーらしいフォント』になるよう意識しました。ベースになるフォントは、線の端につけられる“うろこ”や“ひげ”と呼ばれる飾りがない書体を使っています」
――「サンセリフ」ですね!
松井:「そうです。サンセリフは先進的な印象を与える書体ですが、上記の資料にあるように一部の角を取ることで“お堅い印象”を軽減し、どこか温かさが感じられるデザインにしています。色、ウェイト、文字間にもそれぞれトーンがあるので、一つひとつテーマに沿って細かく調整しました。『F』と『Y』の文字にはそれぞれスリットを入れてあり、価値あるコンテンツをつくる工程に欠かせない『インプット』と『アウトプット』の意味合いを持たせています」
――「口角が上がる瞬間をイメージしたカーブ」にはどんなこだわりが?
松井:「依頼者である松岡さんの話を聞いていて、ファングリーの『FUN』は明るい感じの楽しさというより、達成感を得たときの楽しさというか、ある種のストイックさを含んだ感情なんだと理解しました。クリエイターにとって楽しい瞬間というのは、大笑いではなく自然と口角が上がるような『ほくそ笑む』感じなのかなと思い、そのイメージを表現しています。本気で取り組んだ後に感じる『FUN』は、“ニコッ”ではなく、じわじわ湧き上がってくる感じですよね」
「それと、『プロとしての自信は欠かせない』という松岡さんの意見もあったので、フォントを少し太くしてずっしり構えている雰囲気を演出しました。文字と文字の間隔も少し開け、余裕のある佇まいにしています」
――宮越さんのプレゼン資料も見せていただきましょう。
宮越:「数あるコンテンツマーケティング企業の中から選んでもらえるよう、一目で覚えてもらえるようなロゴは何かと考えました。何となく目に触れた人の『無意識』に刺さる特徴的なデザインというか、思わず二度見てしまうようなフックをつくりたいなと」
「FUNGRYという社名は、『FUN(楽しい)』と『HUNGRY(渇望している)』を掛け合わせた造語です。『FUN』と『FAN』を間違えられると自社のコンセプトが正しく伝わらないので、『U』の部分のデザインを工夫して、『ファングリーのファンはFUN(楽しい)なんだな』と理解してもらいやすいようにしました」
――最終案の上のロゴは、「U」の部分が顔のように見えますね。
宮越:「そうですね。お客様はもちろん、取引先様や外部のクリエイター、ファングリーで働くスタッフたちも含めて『みんなを笑顔に』という想いを込めました。それと、文字でも楽しさを表現したいという思いから、『N』や『R』の文字を少し尖らせ、スピード感と躍動感、自由さを演出しました。全体的にはややアンバランスになりますが、それが逆に個性や切れ味を表現するアクセントになればと思い、ちょっと冒険しています」
――なるほど!
宮越:「個人的に気に入っていた最終案の下のロゴは、コンテンツ(Contents)を意味する『C』の中にFUNGRYがあるというイメージでデザインしました。コンテンツマーケティング市場の中心を担いたいという想いと、自分たちの殻(=四角い枠)を破りたいという想いを込めています」
――伝えたいことやありたい姿などがしっかり表現されていて、こちらも素敵ですね。
宮越:「もし良ければ使ってくれていいですよ(笑)」
――今回のロゴデザインコンペには、どのような気持ちで臨みましたか?
宮越:「宮越はファングリーのスタッフであり、個人的には『自社のロゴは自社のデザイナーがデザインしないと!』という気持ちが強かったので多少の対抗意識はありました。というか、『自分が会社の想いを一番表現できる存在でないとダメ』という焦りのようなものがあったかもしれません。なので、松井さんの案に決定した瞬間はショックでした。壮絶な打ち合いを経て顎にストレートを食らい、白目をむいて倒れ込んだ感じというか(笑)。10秒では立ち上がれず、その後もしばらく放心状態が続きましたね」
――直後に行われた公式サイト制作プロジェクトのミーティングでも、「抜け殻のようだった」と聞きました。それだけでも本気度が伝わってきます。
宮越:「よっぽどだったんでしょうね(笑)」
――ただ、宮越さんは次の日からしっかり気持ちを切り替えていましたね。松井さんのロゴをしっかり自分のものにして、ロゴのイメージをもとに公式サイトのデザインを一から構築してくれました。
松井:「まさにプロフェッショナルの鑑ですね」
――松井さんはどのように臨んだのでしょうか?
松井:「僕はそこまで対抗意識を持ってなかったです(笑)。でも、参加するからには選ばれる可能性があるので、『どの案になっても自信を持って世の中に出せるものにしたい』とは思っていました。それがクリエイターとしての責任ですから。宮越さんとは思考や視点が似ている部分も多いので、出てきたデザイン案にも納得でした。コンペで負けるという結果については僕も経験があるので心中お察ししますが、ゴールまでが長かったこともあり、振り返ってみると『2人で協力してひとつのものをつくった』という感覚のほうが強いですね」
宮越:「そう言ってもらえるのはとても嬉しいです。自分も、松井さんのロゴデザインにはブレがなく、ファングリーらしいものが完成したと思っています。今は完全に『自分たちのロゴ』という感覚がありますし、とても愛着を感じていますよ」
――社内コンペは「競争」ではなく「共創」だったわけですね。ファングリーが掲げるミッションともしっかりリンクしていて、素晴らしいです。
松井:「『競争』ではなく『共創』、うまいこといいますね」
社内の重要なロゴコンペ最終章。選ぶ側として、約1週間悩みに悩んでようやく決断。時間がかかったのは、提案側の本気度を超える本気度にまで自分を高め、考えに考え抜いてから選びたかったから。
— yuji_matsuoka | ファングリー | ブランディングテクノロジー (@yuji_matsuoka) June 2, 2020
相手の本気以上の本気で応える──関わったメンバーは絶対に成長している。
――今回のコンペを経て、「得たもの」があれば教えてください。
宮越:「一番は『経験』ですかね。この社内コンペの後、お客様からご相談を受けて取り組んだ企業ロゴ制作コンペに参加し、勝つことができました。そしてそこから名刺デザインの受注にもつながりました。表現からではなくコンセプトからしっかりと決めていくスタイルに、明確に振り切れたように思います。別件で担当しているロゴ提案でもかなり良い反応をお客様からいただいており、少しずつ自信も取り戻しました。そういう意味でも、非常に学びが多いコンペだったなと思います」
――最後に松井さん、新会社ファングリーに期待したいことはなんですか?
松井:「僕は『新しい制作会社の形』をファングリーにつくっていってほしいと思っています。松岡さんには『そもそもオレたちは制作会社じゃないけど』って言われそうですが、そういう機能も持っているので突っ込まないでいただいて……(笑)」
――それ、確かに言われそうですね(笑)
松井:「今、制作会社を取り巻く環境は大きく変わってきています。デザイナーも、お客様の意向を汲んで形に落とし込むだけの“作業者”ではなくなりました。求められる価値も、必要なスキルやアプローチも変わってきています。そういった流れを踏まえて、ファングリーには従来のやり方にとらわれずにいろんなことに挑戦していってほしいです。今回、宮越さんや松岡さんにはたくさん刺激をもらったので、僕も頑張ります!」
ロゴ制作の裏側には、コンセプトを深い部分まで理解するためのコミュニケーションと、地道な調整・修正の積み重ねがあるんですね。
話を聞いて、クリエイターの“凄み”をあらためて感じました。
ファングリーでは今回のコンペのように、さまざまなスタッフ、外部クリエイター、取引先様、そしてお客様と、「共創の機会を増やしていくこと」を大きなテーマに掲げています。
私たちとの共創に価値を感じてくださる方が一人でも増えるように、頑張るのみです。
次回もどうぞ、お楽しみに!