※株式会社エッジコネクションより寄稿いただいた内容を掲載しています。
トップセールスが辞めた途端に売上が激減する……そんな「属人化」した営業体制に課題を感じていませんか?
強い「営業組織体制」とは、個人の能力だけに頼らず、チーム全体で安定して成果を出すための仕組みを指します。そして、成果の出る「営業組織の作り方」には、人材育成と組織運営の両面からのアプローチが不可欠です。
本記事では、持続的に成果を上げる「営業体制」の構築方法について、具体的な人材育成策や組織運営の工夫を分かりやすく解説します。この記事を読めば、自社の課題を明確にし、新人からベテランまでが成長し続ける組織づくりのための、具体的なアクションプランを描けるようになります。
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営業の成果は、個々の営業パーソンのスキルや努力に大きく依存しているように思われがちです。しかし、属人化した働き方では成果が出るのも一時的で、持続的な売上拡大にはつながりません。
重要なのは、営業活動を「組織全体の仕組み」として設計し、人材育成とチーム連携を通じて安定した成果を生み出す体制をつくること。優れた営業組織は単にトップセールスの個人技に頼るのではなく、教育制度や評価基準、日々の情報共有の仕組みなどを整えています。
このような組織的なアプローチによって、具体的には次のような好循環が生まれます。
● 新入社員が早期に戦力化できる ● 既存社員が継続的にスキルアップできる ● マネジメント層がチームを適切に導ける |
この流れが定着することで組織全体としての営業力が高まり、長期的な成長を実現できるのです。
また、人材育成は「教育コスト」ではなく「未来への投資」と捉える視点が欠かせません。OJTや研修、フィードバックを仕組みに組み込み、個人の成長を組織成果に結びつけることが、営業組織を強くする最大のポイントです。
営業活動において、人材育成は単なる教育施策ではなく、成果を左右する極めて重要な経営戦略の一部です。
営業成果を上げ続ける企業は、例外なく「人を育てる仕組み」を持っています。ここでは、その中核となる「研修」「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」「評価制度」の3つの柱がそれぞれどのような役割を果たし、いかに個人の成長を組織全体の成長へとつなげているのかを解説します。
新入社員研修や営業スキル研修は、営業パーソンが基礎知識や商談スキルを短期間で習得するために不可欠です。とくに商材や市場の変化が激しい昨今では、知識やノウハウを体系的に学び直す場がなければ、営業力はすぐに陳腐化してしまいます。
研修を通じて共通言語や標準スキルを整えることは、営業成果の再現性を高める基盤づくりに直結します。
営業には、実践を通じてしか身につけられない要素が多く存在します。例えば顧客との距離感の取り方や断り文句への対応、商談の空気を読む力などは、現場で先輩や上司から学ぶ経験が何よりも効果的です。
OJTの強みは、こうした「個別具体的な経験知」を共有できる点にあります。属人化しがちなノウハウを組織全体で共有することで、チームとしての底上げが可能になります。単なる同行や指示に終わらせず、振り返りやフィードバックを丁寧に行い、学びを言語化して次に活かすことが大切です。
評価は「人材をどう育てるか」のメッセージそのものであり、営業パーソンの行動に大きな影響を与えます。数値目標の達成度だけでなく、プロセスや努力、チーム貢献度も評価軸に組み込めば、短期成果に偏らない健全な営業文化を築くことができます。
例えば「提案数」「新規顧客へのアプローチ件数」「既存顧客のリピート率」といったKPIを設定し、過程を重視した評価を行うと、営業パーソンは挑戦を恐れず積極的に行動できるようになるのです。
これら3つの要素を組み合わせることで、人材育成は単発の施策ではなく「成果を生み出す仕組み」へと昇華します。「研修」で基礎を固め、「OJT」で実践知を学び、「評価制度」で正しい行動を後押しする――。このサイクルが回り始めれば、営業組織全体が継続的に成長し、個々の成果が積み重なって企業全体の売上拡大につながっていきます。
重要なのは、人材育成を「コスト」ではなく「未来への投資」と位置づけること。短期的には時間や費用がかかるかもしれませんが、社員が成長し、組織に定着し、成果を出し続けることは、中長期的に見れば大きなリターンを生み出します。
結果として営業組織の強靭さが高まり、どんな市場の変化にも対応できる持続的な競争力を獲得できるのです。
人材育成を「具体的な施策」としてどう実行するかは、営業組織の成長を左右します。単に研修を行うだけでは一過性の成果で終わってしまうため、現場に即した施策を継続的に運用し、その効果を組織全体に還元する仕組みが不可欠です。
ここでは、実際に成果を上げている代表的な施策を紹介します。
「営業スキル研修」や「商品知識研修」はもちろん、「提案書作成」や「プレゼンテーション力」、顧客心理を理解する「応酬話法」など、幅広いスキルを計画的に学ぶ場を設けることができればより効果的です。
というのも、昨今では営業職につきたがる若者が減っています。そんな中で営業職に就く人の多くは、営業という仕事が好きで、仕事に高いモチベーションがあります。そういった人材はスキルアップのスピードが非常に早いため、すべての営業パーソンに対してそのスピードについていくように期待するのは少々酷です。会社として、定期的に知識やスキルを習得できる環境を整えてあげることが欠かせません。
営業現場では、担当者が抱える課題は一人ひとり異なります。トップダウンの指導だけで、個々の強みや弱みに応じて成長を支援するのは難しいものです。
コーチングやメンタリングを駆使した「1on1」を取り入れることで、営業パーソンが自ら課題を言語化し、解決のためのアクションを主体的に考える習慣が身に付きます。これにより「やらされ感」ではなく、「自分ごと化」した状態で成長が促進されるため、モチベーションの向上と継続的な成果の創出につながります。
成功・失敗事例を定期的に共有する場を設けることで、属人化しやすい営業ノウハウを組織全体の資産に転換できます。
例えば、週次ミーティングでの成功事例発表や、SFA・社内ポータルを活用した事例データベースの整備などです。こうした仕組みは「成果の再現性」を高め、チーム全体のレベルアップを促進します。
外部の専門家からの講義や、代行サービスからのフィードバックを受けることで、自社だけでは得られない視点やノウハウを吸収できます。
とくに営業代行サービスは、同じ業界における営業活動の成功事例やケーススタディを持っている可能性があります。そのような企業と一緒に連携することで、それらを学びとして社内に取り込み、成果につなげやすくなります。
研修を実施して満足するのではなく、研修の効果が現れるKPIを適切に設定し、効果を確認することが欠かせません。これによって「形だけの施策」に終わらせず、成果につながる人材育成を実現しやすくなります。
こうした取り組みを組み合わせることで、営業パーソンは着実にスキルアップし、組織全体の営業力が底上げされます。実践的な人材育成施策は「点」ではなく、各施策を「線」として設計することで、持続的に成果を生み出す営業組織へと進化できるのです。
営業組織の成果は、個々の能力だけではなく「チームとしての連携力」に大きく左右されます。仮に優れた営業パーソンが一人いたとしても、組織全体の仕組みが整っていなければ成果は持続せず、逆に個人依存のリスクが高まってしまいます。
そのため、全体としての営業成績を安定・向上させるには、営業チームの連携を強化する「組織運営の工夫」が不可欠です。
営業活動の最終目標は「売上」や「成約数」ですが、それだけを指標とすると担当者の行動が短期的になりがち。効果的なのは、最終成果に至るまでのプロセスを分解し、中間指標をKPIとして設定することです。
例えば「初回商談数」「提案書提出数」「見積書提出率」などを設定することで、営業パーソンは日々の行動に具体的な指針を持ちやすくなります。このような指標の可視化は組織全体の収益経路を意識した営業活動につながり、成果の再現性を高めます。
営業活動は、「案件獲得」「資料作成」「顧客フォロー」など多様なタスクから成り立ちます。これらを個人が全て抱え込むと非効率になりやすいため、可能な限り分業することで生産性が向上します。その際には担当する部門と売上貢献度をシェアするなどきちんと責任を持たせることで、同じ温度感で対象顧客に向き合えるようになるでしょう。
また、週次の定例会議やオンラインツールを活用した情報共有を徹底することで、チーム全体が「誰がどの顧客に、どの段階で対応しているか」を把握できます。これにより、抜け漏れや重複対応を防ぐことが可能です。
営業パーソンは往々にして「成功パターンを独り占め」しがちですが、これをチームに還元することで組織全体の底上げにつながります。
定例ミーティングや社内チャットで事例の共有を徹底するだけでなく、SFAやCRMにナレッジを蓄積していけば、誰もが必要なときにアクセスしやすくなります。積極的にナレッジやノウハウを共有してくれた人を称える制度なども有効です。
目標達成を評価する仕組みを個人単位だけでなくチーム単位でも導入すれば、自然と「助け合い」や「連携」が促進されます。さらに、評価制度を通じて「数値成果」だけでなく「プロセスへの貢献」や「仲間へのサポート」も評価軸に加えると、営業チーム全体の心理的安全性が高まり、健全な組織文化が形成されます。
最終的に目指すべきは、個人の力を最大限に発揮させつつ、それを組織全体の成果に変換できる仕組みです。目標設定とチーム連携を強化した組織運営は、単なる売上や成約数の向上だけでなく、持続的な営業力強化と人材定着につながります。
このように、営業組織を「個人頼みの集団」から「成果を再現できるチーム」へと進化させることが、長期的な成長を実現する鍵となるのです。
営業組織を強化するための理論や施策は数多く存在しますが、実際に成果を上げている企業の取り組みから学ぶことが、何よりのヒントとなります。ここでは、成功している営業組織の事例をいくつか紹介し、そこから得られる示唆を整理します。
A社では営業の属人化に悩まされていましたが、営業プロセスを「収益経路」として定義し、初回商談から成約までを可視化しました。
具体的には、各営業担当のそれぞれの判断で成約までの流れを想定していたところ、以下のような成約までの流れとして定義し、その流れに沿って営業活動をすることを指示しました。そして、各段階ごとにKPIを設定し、営業パーソンがどこでつまずいているのかを把握できる仕組みを導入したのです。
初回商談 → 提案書作成 → デモ実施 → 見積書作成 → 成約 |
その結果、これまでは一部のトップ営業しか成果を出せなかった状態から、チーム全体の成約率が均一に底上げされました。営業活動が「属人技」ではなく「再現可能な仕組み」となったことで、持続的な売上拡大が実現しました。
B社は、新人営業の早期戦力化に課題を抱えていました。そこで導入したのが「メンター制度」と「ロールプレイ研修」の組み合わせです。
新入社員一人ひとりに先輩社員をメンターとして配置し、商談後には必ずフィードバックを行う仕組みを構築。さらに、定期的に断り文句への切り返しや提案練習をロールプレイ形式で行い、現場力を磨かせました。
この仕組みを継続することで新人が入社半年で一定の成果を上げられるようになり、組織全体の営業力が安定的に高まったのです。
C社では、チーム連携を強化するために「社内発注制度」を導入しました。
営業が新規案件を獲得した際、その一部を専門部署に発注し、売上を分配する形を取り入れたのです。例えば提案資料の作成は営業サポート部門に依頼し、アフターフォローはカスタマーサクセス部門に任せるといった分業体制を確立しました。
これにより営業担当者は新規開拓に集中でき、部門間の透明性と責任意識も向上。結果として営業効率が飛躍的に改善し、顧客満足度も高まりました。
D社では社内のリソースが不足していたため、休眠顧客の掘り起こしやアポイント獲得を営業代行に委託しました。その一方で、商談やクロージングは自社の営業が担当。役割分担を明確にしたことで、自社の強みを活かしつつ、外部リソースで弱点を補完することに成功しました。
「外部との連携」を前提に営業組織を再設計したことが、成長の加速につながったのです。
これらの4つの事例から共通して言えるのは、「営業を個人の力に依存させず、仕組みと連携を通じて成果を再現可能にする」という点です。
仕組み化・育成制度・部門連携・外部リソース活用といった営業体制に関する工夫は、それぞれの企業規模や業種に応じてアレンジ可能。重要なのは「自社の課題に即した形で取り入れる」ことであり、それが営業組織を持続的に強くしていく鍵になります。
営業成果を持続的に高めるためには、個人の努力やスキルだけに依存するのではなく、組織運営と人材育成を両輪として機能させることが不可欠です。
「研修」や「OJT」でスキルを磨き、「評価制度」で正しい行動を後押しし、「チーム連携」や「仕組み化」で成果を再現可能にする。この一連の取り組みは、短期的な売上や成約率の向上だけでなく、中長期的な企業成長の基盤を築くものです。
そして、こうした営業活動の仕組み化や効率化は、今後AIやデジタルツールの活用によってさらに加速していくでしょう。
しかし、いかにツールが進化しても、それを最大限に活かすのは「人」であり、学び続ける文化や心理的安全性のある組織です。企業は人材育成を「未来への投資」と捉え、社員が安心して挑戦できる環境を整える必要があります。営業組織の強化は、一過性の施策ではなく「持続可能な成長モデル」を築くプロセスです。
本記事で紹介した実践的な手法を自社の状況に合わせて取り入れ、進化させていくことで強い営業組織が育ちます。経営者に求められるのは、未来を見据えた投資と仕組みづくりを惜しまない姿勢です。それこそが、売上アップと企業の持続的成長を支える最大の原動力となるでしょう。