景表法とは、消費者向けの記事や広告といったコンテンツの表現および、消費者への景品提供のあり方を規制する法律です。
「自社のサービスをWebコンテンツで発信したいけど、具体的にどのような表現を避ければいいの?」と疑問に思っているマーケティング担当者やサービス責任者の方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、景表法の内容や景表法違反に対する措置内容について解説したうえで、コンテンツ制作で気を付けたい景表法のポイントについてわかりやすい事例とともに解説します。
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景表法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」で、略して「景表法」や「景品表示法」と呼ばれることもあります。景表法では、消費者に誤解を与えることなく商品やサービスを提供するために、以下のようなことについて規制されています。
商品・サービスを紹介する記事や広告コンテンツを制作する立場のライターや編集者、マーケター、プランナーにとっては、「知っておくべき法律」のひとつと言えるでしょう。
本章では、景表法の概要と目的、薬機法との違いについて解説します。
景表法の目的は、以下のとおりです。
つまり、消費者の知らないところで消費者の自由な意思が妨げられるのを防ぐために制定された、「消費者を守るための法律」と言えます。
景表法と似ている法律に、薬機法(旧:薬事法)があります。
薬機法は、医薬品・医療機器・化粧品などの品質や有効性・安全性を守り、製造・広告などについて細かく定められています。薬機法も景表法と同じように、コンテンツを制作するにあたって配慮が必要な法律です。
景表法と薬機法の違いは、以下のとおりです。
景表法 | 薬機法 | |
---|---|---|
目的 | 消費者が自分の意思で商品やサービスを選択できる環境を確保する | 医薬品や化粧品などの性能や安全性を確保し保健衛生を向上させる |
規制事項 |
|
承認されていない効能や安全性に関する表現 |
管轄 |
|
|
景表法の管轄は、平成21年(2009年)9月に公正取引委員会から消費者庁に移管されています。
ただし、公正取引委員会では消費者庁長官から景表法違反事件に係る調査権限の委任を受けているため、必要に応じて調査業務や同法違反の疑いに関する情報の受付業務、相談業務などを行っています。
薬機法については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
薬機法とは?近年の法改正や薬機法違反した場合のペナルティ等を簡単に説明
景表法の内容には、「不当表示規制」と「景品規制」があります。本章では、「不当表示規制」について詳しく説明します。
「不当表示規制」とは、企業が「不当な表示」によってコンテンツを配信することなどを禁止するものです。景表法における「表示」とは、次のようなものを示します。
上記に該当する「表示」のうち、「優良誤認表示」または「有利誤認表示」に当てはまるものを「不当表示」と言います。それぞれの表示について詳しく見ていきましょう。
優良誤認表示とは、商品・サービスの品質や価格などについて以下のような表示をすることです。
優良誤認表示に該当する事例には、次のようなものがあります。
以上のように、合理的な根拠がない効果・性能の表示は優良誤認表示と見なされます。
一方で、優良誤認表示に該当しないのは次のようなケースです。
なお、優良誤認表示に該当するかどうかを判断するために、消費者庁や都道府県は事業者などに対して、合理的根拠を示す資料の提出を求めることがあります。
合理的な根拠を示す資料には、以下のようなものがあります。これらの資料が提出されない場合は、不当表示と見なされる恐れがあるので注意しましょう。
有利誤認表示とは、価格や商品の量、アフターサービスなどの取引条件について以下のような表示をすることです。
有利誤認表示に該当する事例には、次のようなものがあります。
一方で、次のようなケースは有利誤認表示に該当しません。
優良誤認表示と同様に、「実際よりも有利である合理的な根拠」などをあわせて表示すれば、有利誤認表示には該当しないと判断されるでしょう。
ここまでで説明した「優良誤認表示」と「有利誤認表示」以外にも、景表法には以下のような規制が存在します。
「景品規制」とは、過大な景品類を提供することを禁止するためのルールです。
景表法における「景品」とは、消費者に商品やサービスを買ってもらったり、契約してもらったりするためにプラスで与えるものやサービスのことです。例えば、「来店者全員にメモ帳をプレゼント」「購入者の中から抽選で商品券をプレゼント」などが該当します。
度を超えた高額な景品を消費者に贈呈する場合は、その景品欲しさに本来必要のない商品を購入することになるケースも考えられます。このようなケースが増えると、消費者の自由な購買意思が妨げられると言えるため、そうならないように景品規制が定められているのです。
景品規制では、主に「一般懸賞」「共同懸賞」「総付懸賞」の3つの規制が設けられています。本章では、それぞれの規制内容について詳しく解説します。
「一般懸賞」とは、くじや抽選、クイズの解答の正誤、競技や遊戯の優劣などにより、購入者のうち一部にのみ景品を提供することです。一般懸賞における景品金額の上限規制は、以下のとおりです。
取引価格 | 5,000円未満 | 5,000円以上 |
---|---|---|
景品の最高額 | 取引価格の20倍 | 10万円 |
景品の総額上限 | 懸賞を提供する取引による売上予定総額の2%まで | 懸賞を提供する取引による売上予定総額の2%まで |
「共同懸賞」とは、商店街や一定の地域内の同業者が共同して景品を提供することです。共同懸賞における景品金額の上限規制は以下のとおりです。
景品の最高額 | 取引価格にかかわらず30万円まで |
---|---|
景品の総額上限 | 懸賞を提供する取引による売上予定総額の3%まで |
「総付景品(そうづけけいひん)」とは、商品の購入者や来店者全員に景品を提供することです。総付景品における景品金額の上限規制は、以下のとおりです。
取引価格 | 1,000円未満 | 1,000円以上 |
---|---|---|
景品の最高額 | 200円 | 取引価格の10分の2 |
なお、一定購入額以上の購入者全員に景品を提供する場合は、その最低購入額が取引金額となります。例えば、5,000円以上の購入者全員に景品を提供する場合の景品最高額は1,000円です。
一方で、購入額を問わず購入者全員、または購入の有無を問わず来店者全員に景品を提供する場合は、「一番安い商品やサービスの代金」が取引金額となります。
特定の商品やサービスについてダイレクトメールを送り、それを見た来店者に景品を提供する場合は、ダイレクトメールに掲載された商品やサービスの代金が取引金額となります。
ここまで説明してきた景品規制に加えて、業種によっては独自の景品規制が必要な場合もあることから、「業種別景品告示」が別途定められています。現在、業種別景品告示が定められているのは次の4つの業種です。
景品は、金額評価ができて初めて「景品規制の上限の範囲内かどうか」を判断できます。ノベルティなどを景品として提供する場合、その景品をいくらと評価するのかが問題になるでしょう。
ノベルティなどの価格については、景品と同じものが市販されている場合は市販金額で評価することが原則です。市販されていない場合は、類似品の価格や仕入れ原価などから市販された場合の想定価格で評価します。
値引きや割引などと認められる経済上の利益の提供は、正常な商慣習を照らし合わせて「景品」には該当しないケースもあります。値引きや割引などで景品に該当するケースと該当しないケースは、それぞれ以下のとおりです。
景品に該当するケース | |
---|---|
値引き分などの金銭の使途が制限される | 値引き分が指定されたレストランの飲食代でのみ使用できる など |
値引きと景品の提供を同時に行う | 購入者にキャッシュバックと景品の提供のどちらかを選択させる など |
同じ商品ではなく他の商品を提供する | おにぎり3個購入でペットボトル飲料1本無料 など |
景品に該当しないケース | |
---|---|
値引きや割引 |
|
既に支払った代金のキャッシュバック | レシートの合計金額から500円キャッシュバック など |
購入者に対して同じ商品をおまけする | ドーナツ5個購入でもう1個無料サービス など |
商品購入者に対して付与するポイントについても、景品に該当するケースとしないケースがあります。
「自店だけでなく他店でも使えるポイント」を付与する場合は景品に該当するため、原則として景品表示法規制の対象です。付与ポイントを値引きに利用するだけでなく、景品との交換を選択できるケースについても景品表示法の適用を受けます。ただしこれらのケースでは、付与ポイントを金額評価した場合に景品規制の上限内となる必要があります。
一方で、例えば「次回以降の購入時に支払いの一部に充当できるポイントを付与する」という場合は値引きに該当するため、景品表示法規制の対象外です。
景表法違反が疑われると、消費者庁から資料の提供や対象者の事情聴取を求められることがあります。景表法違反が認められた場合に科されるペナルティは、以下の4点です。
そのほかの制裁リスクとして、消費者からの通報やSNSなどでの炎上もあります。それぞれのペナルティについて、詳しく見ていきましょう。
景表法に違反すると、以下のような措置を講じるよう命じられます。
措置命令が行われた事実に不服がある場合は、審査請求や取消訴訟などの不服申し立てが可能ですが、不服申し立てをしないと措置命令が確定します。措置命令確定後、それに従わない企業には罰則があります(詳細については後項で解説)。
なお、景表法違反を迅速かつ効果的に規制するため、消費者庁以外に都道府県知事も措置命令の権限を有しています。
課徴金納付命令は、違法な表示によって得た利益を違反者から取り上げるための措置です。
景表法違反に対して措置命令を出すだけでは、違反者が違法な表示によって得た販売利益がそのまま違反者のもとに残ってしまうことになります。「不当に得た利益を返さなくても良いなら、違反が見つかったらやめればいい」という考えにもなりかねないため、それを避けるために講じられるのが課徴金納付命令です。
課徴金納付命令は、以下に当てはまる場合のみ対象となります。
「違反者が相当の注意を怠った者でない」と認められるときや、課徴金額が150万円未満のときは、課徴金は科せられません。
課徴金は、違法な表示が行われた商品やサービスの売上額に3%を乗じた金額となります。また、違法な表示などによって商品やサービスを購入した消費者に対して違反者が自主的に返金を行った場合は、返金額分を課徴金納付額から減額する制度も設けられています。
差止請求とは、消費者団体が景表法違反者に対して、違反している表示の停止を書面で求める制度です。差止請求も課徴金納付命令と同様、「優良誤認表示の禁止」または「有利誤認表示の禁止」のいずれかに違反した場合のみ対象となります。
消費者団体は違反者に対して、違法な表示の停止を求めることができます。違反者が停止に応じないときは、違法な表示の停止を求める訴訟を起こすことが可能です。
景表法違反に対するペナルティには、刑事上の罰則もあります。
ただし、景表法違反でいきなり刑事上の罰則を科されることはありません。措置命令を受けたのにこれに従わず、違法な表示を続けている場合などにおいて、以下の刑事罰が科されます。
消費者庁では景表法に関する違反などの通報制度を通して、消費者からの情報提供を受け付けています。
万が一消費者から通報され、消費者庁から資料の提供や対象者の事情聴取などを求められる――という可能性もないとは言えません。そういった場合に備え、景表法違反がないことを説明できるようにしておくことが重要です。
また、景表法違反が発覚するとSNSなどで企業に関するネガティブな評価が広がり、社会的信用が低下するリスク(レピュテーションリスク)も考えられます。
ここまで、景表法の内容から景表法違反に対するペナルティについて解説しました。本章では、実際にあったコンテンツ制作における景表法違反の事例を2つ紹介します。
※事例をもとにライターが作成
表示内容 | 実際 |
---|---|
9歳以下の患者は、矯正治療にかかる料金について合計233,000円(※)と月3,000~5,000円の管理料を支払うだけで歯科矯正を受けられるかのように表示。 | 9歳以下の患者が歯科矯正を受けるためには、200,000円と初診料3,000円、検査診断料30,000円の合計233,000円と管理料3,000~5,000円の他に、合計233,000円の消費税相当額と、「保定装置」と称する矯正器具にかかる料金として32,650 円の料金負担が必要だった。 |
(※)矯正の料金200,000円、初診料3,000円、検査診断料30,000円の合計
※事例をもとにライターが作成
表示内容 | 実際 |
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表示のある期間内に講座を申し込んだら、正規受講料から1万円が値引きされるかのように表示。 | 平成22年5月から平成26年7月までのほとんどの期間で、正規受講料から1万円値引きされるキャンペーンが行われていた。 |
コンテンツ制作において、景表法に違反しないための2つのポイントを解説します。
コンテンツを作る際は、人の関心を引くためにメリットを極端に強調したり、不確かな優位性を主張したりしてしまいがち。そこに気付けないと、景表法に違反するリスクも高くなります。
そうならないための指針として、消費者庁では以下の7つを示しています。
出典:消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」
記事や広告などのコンテンツを制作する際は、これらの指針を事前にしっかり確認しておきましょう。
景表法を遵守するにあたっては、景表法という法律だけでなく、関連する法令や公正取引委員会のガイドライン、運用基準などがあるため、あわせて確認するようにしましょう(消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等」)。
また、社内で「景表法を遵守したコンテンツ制作」を徹底させるためにも、実際の行政処分事例などを参考に、コンプライアンス研修などを通して意識を高めることが大切です。
コンテンツを制作・公開する際に注意したいのが、「景表法に違反していないかどうか」です。消費者に誤認させるコンテンツを発信してしまうと、記事内で解説したようなペナルティを受ける恐れがあるのはもちろん、企業の社会的信用を棄損してしまうことにもつながります。
景表法そのものだけでなく、景表法や紹介したい商品やサービスなどに関する法令・ガイドラインなどを事前に確認するようにしましょう。この記事が、景表法の理解を深めるための手助けとなれば幸いです。
株式会社ファングリーでは、景品表示法や薬機法、医療広告ガイドラインなどに準拠したライティング支援・コンテンツマーケティング支援を行っています。経験豊富なライターによる執筆や、薬機法管理者による校正や監修にも対応可能。「自社メディアのコンテンツを充実させたい」「コンテンツマーケティングを通じて自社の事業を広めたい」「記事を通して業界や社会の信用を高めたい(ブランディングしたい)」などお考えの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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