今回のコラムは、私の主観が大いに入っています。業界全体での話ではないかもしれませんし、「それは違う」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そうしたことに目を瞑り、一人の現場担当者の意見として捉えていただける方のみご覧ください。難しい方は、ブラウザの戻るボタンを押していただくか、下記よりトップページへお戻りください。
私は一時期、さまざまな業種のキュレーションメディアを運用していました。最高約200記事を毎月企画し、ライターへ指示して納品された原稿を編集し、投稿していたことも。ライターに対して感じていることや、キュレーションメディアについてお話しします。
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私の場合、キュレーションメディアの運用とは、クライアントが「情報を発信したい、自社の認知を拡大したい、商品を売りたい」と考える際、「さまざまなお役立ち情報などと併せて記事を更新し、関連する検索に対応させることで集客を狙うもの」、そして、「発信したい情報をより多くの人に伝えるもの」として記事コンテンツを発信していくことでした。
いわゆるオウンドメディアと呼ばれる媒体として、私はキュレーションメディアの企画から制作、運用まで行っていました。
運営側は記事やコラムと言われる文字ベースのコンテンツによって、Google等の検索エンジンが“良いコンテンツ”と認識してくれるようにするために、解析や分析、トレンドや競合のリサーチなど試行錯誤して行います。
ライターのみなさんにはその元になる文章を作成してもらうため、キュレーションメディアの運用において重要なポジションでした。
さて、「そもそもキュレーションメディアって何?」と思われている方のために、簡単にご説明します。「キュレーション」と「メディア」にはそれぞれ以下の意味があります。
つまり、キュレーションメディアとは、「収集した情報を独自に編集して提供する媒体」という意味です。“まとめサイト”などとも呼ばれています。
私の運用していたキュレーションメディアは、ウェブサイト上に高頻度で記事を配信するというもの。
現状その商品が欲しいと考えている層ではなく、「まだ知らない、欲しいわけではない、将来的に欲しくなりそう」という顧客予備軍に対してアプローチするためのものです。
私が運用していたサイトは、引用した情報をまとめ直しただけのものや、どこかのサイトの記事をRSSで読み込んでいるだけのものではありませんでした。
そのため、手間も時間も予算もかかり、成果が出ていない時期にはオフィス内にピリピリとした空気が流れていたものです。
そんなキュレーションメディアにおいて、「サイトの方針や施策の策定、設計から構築、毎月の記事企画、記事の品質チェック、納品・配信スケジュールの調整や分析等を行う」ことが私の仕事内容でした。
キュレーションメディアについてはおおよそ理解していただけたかと思うので、ここからは簡単に運用の流れを説明します。
本来は、キュレーションメディアの初期要件の定義と構築、運用体制を整備するところから始めるのですが、もっとも重要な運用部分は以下の通りになります。
流れ | 詳細 |
---|---|
①ライターの確保 | メディアのコンセプトや予定している内容に合わせて記事作成のためのライターを複数人集め、スケジュールを調整します。 |
②記事企画 | トレンドや競合分析、ニュースなどからネタとなりそうなものを洗い出し、記事の文章構成を考えます。その後、クライアントに企画の確認を行います。 |
③記事作成 | ①で確保していたライターに、クライアントの了承が得られた企画で記事を作成してもらいます。このとき、記事の参考資料を渡します。 |
④記事チェック | ③で制作してもらった記事をエディター(編集担当)がチェックします。このとき、事実確認などの校閲作業、画像がある場合は適切かどうかを判断します。 ※エディターでは対応できないと判断した場合はディレクターが行います。 |
⑤投稿・配信設定 | チェック後はクライアントの確認を行い、配信スケジュールに合わせて記事を投稿し、配信タイミングの設定などを行います。 |
⑥効果測定 | 配信が完了したら、見られている記事や問合せにつながっている記事、流入経路などのアクセス解析を行い、②の手順へとつなげます。 |
運用するにあたっては、ほぼこの②~⑥が占めています。
他にも、SNSとの連携やレポート提出、広告との兼ね合いなどさまざまな要素がありますが、長くなってしまうので、そうした話はまた別の機会にいたします。
ここまで、キュレーションメディアの運用に関する内容を紹介してきました。
上記を見ていただければお分かりになると思いますが、ライターのみなさんは「③~⑤」の制作の部分に関わっていきます。
つまり、運用の半分はライターに左右されるということです。
そんな大事なライターを決める方法はさまざまですが、1記事あたりにかけられるコストは決まっています。
そのため利益を考えると、どうしても低価格で品質を担保できるライターに依頼したくなるのです。
キュレーションメディアでは、どれだけ情報を継続して発信できるかが要であり、更新が止まってしまうと見てくれるユーザーも減ってしまいます。更新するためには多くの記事が必要です。
ライターがどれだけ納期に合わせてしっかりとした記事を用意してくれるかにかかっているのです。
そこで、「クラウドライター」と呼ばれる、低価格で多くの本数を依頼できる人たちに記事を書いてもらうことにしました。
クラウドライターとはオンライン上に集まった、ライティングをしてくれる人たちのこと。「クラウドソーシング」というプロセスを利用して、主に副業目的でライティング案件を受け持っているライターたちで、れっきとしたプロライターにはライティング技術が遠く及ばない人が多い印象です。
ただ、まれにプロのライターがそうしたクラウドソーシングに登録して活動している場合もあるため、侮れません。
とはいえ、干草の山の中から針を探すかのごとく、プロライターが書いてくれることを期待して依頼することはありませんでした。
クラウドライターとして活動している人には、大きく分けて3種類の人がいると考えられます。
圧倒的に①の人口が多いと思われますが、②、③の人にとって、ライティングの仕事がない時期には頼もしいサービスなのでしょう。
では、こうしたクラウドライターを使った理由は何なのか。前述していますが、費用が安く済むことも理由の一つです。
ただ、安く済ませることが私の一番の目的ではありませんでした。
多くのクラウドソーシング系の依頼方法は、「サイト上に仕事を掲載し、費用感に納得した人が応募して、それに対して掲載した依頼者が採用する人を決める」というもの。
これがもっともスタンダードな方法ですが、デメリットがあります。費用感に納得してもらえず、必要な数の応募者が集まらなければどうしようもありません。
全体の進行にも影響が及び、予算やスケジュールの見直しを図る必要が出てきます。そうなると、クライアントの信用を失いかねません。
そこで、そのクラウドソーシングを運営している会社の営業担当者と直接やりとりをしてライターを募ってもらう、という手法で依頼していました。そうすれば、依頼の掲載や応募者の選別、管理などの煩わしい手間がなくなります。
ただ、そうしたディレクション費が費用に上乗せされている可能性があり、結局のところ、当社と契約しているライターに発注する費用とあまり変わらなくなってしまいました。
では、他に理由があるのか、とお気づきの方もいらっしゃるでしょう。それは、キュレーションメディアの特性と紐づいています。
キュレーションメディアは、さまざまな情報を扱うもの。
たとえばクライアントが、健康食品のショッピングサイトを運営していたとします。その認知拡大のため、健康にまつわるキュレーションメディアを運用するとなった場合、健康食品だけを紹介するのではなく、健康促進のための運動法や食事方法、生活習慣病やその対策など、さまざまな情報を提供します。
そして、バナーや記事広告でショッピングサイトや商品を時おり紹介する、という形をとることが多いです。
厄介なのが、こうした情報に明るいライターを複数人集めなければならないということ。
健康食品に強いライターがいても、生活習慣病にはそこまで詳しくなく、あまり書けないというライターもいるでしょう。互いに弱点を補い合えるライターを確保しつづける必要があります。
そうなると、予算も膨らみ、ライターの管理にも時間を割かれてしまいます。
こうした懸念を払拭できるのが、クラウドライターだったのです。
クラウドライターを抱えている1社に依頼すれば、ライターのスケジュールを押さえてくれますし、費用も一律で一ヶ所に支払えば済みます。
そして何より、さまざまな業種や職種、スキルの人に一度に依頼することができるというメリットがあります。
ただし、そもそもクラウドライターが納品する記事は、誤字脱字が多く、曖昧な情報が入っていたり、断定してはいけない部分で断定して書いてしまっていたりするなど、品質が低過ぎることがありました。
書き直しの作業もよく発生するため、結局は自分の時間を削りに削っていたのです。
長々とクラウドライターを使った運用を行ってきたことを説明してきましたが、現在、私がクラウドライターへ依頼している案件は30記事ほど。
昨年12月のDeNA社のキュレーションメディア問題が波及した結果です。
その間、クラウドソーシング系の企業も変化し、記事の品質を担保するようになりました。
また、オリジナル記事の要望が増え、取材を行ったり、レビュー記事を作成したりするクラウドライターが増えてきています。
いま、クラウドライターとプロライターのボーダーラインが曖昧になり始めていると言えるでしょう。
現在、私はキュレーションメディアの運用をほぼ行っていないのですが、多くの企業のサイト内にあるコラムの運用を受け持っています。
運用の流れはあまり変わらないのですが、ある程度方向性が決まっているため、その業界に明るいプロのライターをアサインすることが多くなりました。
クラウドライターに依頼していた頃とは違い、全体的にある程度品質が良いため、編集にかかる時間も減っています。
しかし、専門的な文章を書けるプロライターはいまだ少なく、最終的なチェックや修正に時間がかかる案件もあるのが実情です。
古くからライターとして活動していても、品質の良さにつながるとは限らず、クラウドライターとあまり変わらないレベルの記事が納品されることもあります。これだと、何のためにプロライターに依頼しているのか分かりません。
こうした悩みはいろいろな方面で耳にすることであり、納品された記事をそのままクライアントに提出できないレベルであることも多々あるのです。
現代のライターには、一般人のライティングとは差別化された、より高品質な原稿を提出することが求められています。
誰もがライターとなれる時代。専門性もなく、そもそも文章構成がきちんとしていない人も多く存在しています。
どこかのサイトから持ってきた文章を軽くリライトし、それを提出してしまう自称ライターも大勢いるのが事実です。
こうしたなか、プロのライターとして得意分野の専門知識を活かし、誇りを持ってライティングができる、そんな人が必要とされているのではないでしょうか。
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