はじめまして、コンテンツディレクターの宇佐美です。「雑誌畑からWeb畑へ」という潮流に乗っかった転職からはや5年、Webでもコンテンツディレクターとして雑誌編集者のような仕事(ターゲットとなる読み手に対して有益な情報コンテンツを届ける仕事)をしています。
栄えある第1回のテーマにふさわしいかどうかはわかりませんが、今回は「記事コンテンツの賞味期限」について考えてみたいと思います。
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私たちが生きる現代は、膨大な情報に溢れています。電車での移動中や食事中も、私たちは毎日スマホを片手に、あらゆる情報に触れています。そんな現代では、情報の消耗も激しいのが現状。
ここで、「最近心に残ったWebコンテンツ」について考えてみましょう。あなたは「最近心に残ったWebコンテンツを10個教えてください」と尋ねられたら、答えられますか? おそらく多くの人が、5個もスムーズに挙げられないのではないでしょうか。
このように、現代はたとえ一度は話題になったコンテンツでも、溢れる情報の中に紛れて一気に消費され、火が消えてしまいます。では、そのような中でも読者にとって有益で、発信者への信頼を獲得できるコンテンツを提供するためには、どうすれば良いのでしょうか。
読者にとって価値あるデジタルコンテンツを制作し、Google検索エンジンからの評価も上げるためには、コンテンツに「賞味期限」があることを理解しなくてはなりません。ここでは「コンテンツの賞味期限とは何なのか」を解説しましょう。
「コンテンツの賞味期限」とは、コンテンツのキーワードが検索されなくなり、Google検索からの流入が激減したり、なくなったりするタイミングです。
「新商品の発表を紹介する記事」を例にするとわかりやすいでしょう。ある新商品が発表されることを知った読者は、その新商品の名前をキーワードに検索し、ヒットした記事で情報を得ようとします。そして、新商品はいつどこで購入できるのか、自分にとってメリットのあるものなのか、今持っている製品からの買い替えをした方がいいのかを判断します。
しかし、新商品が発売されてしまえば、そのような紹介記事のニーズはたちまちなくなります。実際に新商品を購入した人のレビューがECサイトで見られたり、あるいは実際に購入したりすれば、その商品をキーワードに記事を検索する必要がなくなるからです。このようなタイミングが、コンテンツの賞味期限と言えます。
一方で、新商品の発表を紹介するだけでなく、実際に購入した後のレビューも盛り込んだ記事であれば、賞味期限を伸ばすこともできます。新商品の購入を迷う読者に対して、購入者の視点で有益な情報を発信できるからです。
このようなコンテンツの賞味期限を意識すると、自社サイトの中で賞味期限切れになったコンテンツを把握でき、賞味期限を伸ばす対策をとることも可能になります。
コンテンツの賞味期限を知る上で重要となるのが、検索キーワードの「旬」です。食べ物に旬があるように、検索キーワードにも旬があるのです。
実際にGoogleトレンドで、日本の「引越し」のキーワードをチェックしてみてください。「過去5年」で結果を見ると、毎年2〜3月に検索数がピークを迎えているのがわかるでしょう。日本における「引越し」コンテンツの旬は、会社の異動や学校への入学時期に重なる毎年2〜3月なのです。
コンテンツに賞味期限があるならば、その賞味期限の長短を決める要素は何なのでしょうか。ここでは賞味期限の短いコンテンツと長いコンテンツの定義を解説します。
賞味期限の短いコンテンツとは、前述した「旬」のキーワード=トレンドキーワードを追ったものが一般的です。トレンドキーワードとは、テレビや雑誌等で紹介されて一時的にアクセスが急増したキーワードや、事件やイベントといった一過性の出来事に関するキーワードのこと。このようなキーワードを盛り込んだコンテンツは、サイトの潜在読者にアプローチできたり、SNSでのシェアも期待できたりするのがメリットです。
例えば「ハリルホジッチが日本代表監督を電撃解任」といった内容です。この記事であれば、指揮官がワールドカップ本番直前で解任されるというセンセーショナルな事実を伝えられ、アクセス数(PV数)を稼ぐことができるでしょう。しかし、「電撃解任が世間に認知されるまで」が、この記事の賞味期限です。
このようなトレンド記事は、狙ったトレンドキーワードで検索上位に表示できれば、爆発的なPV数を稼ぐことも可能です。しかしその分、ブームが過ぎ去ればPV数も急激に下がり、場合によっては数日で一気にアクセスが鎮静化します。コンテンツの発信者などは意識されることなく、流行が過ぎ去ればアクセスされなくなるのがほとんどなのです。
つまり、トレンド記事のみでは、本来の目的(自社の認知度アップ・商品やサービスの販促など)を果たすことなく、ただ消費されてしまう可能性が高いでしょう。
では、賞味期限が長いコンテンツとはどのようなものでしょうか。それは流行り廃りに関係なく、いつでも読者が「知りたい」と思える情報が盛り込まれたものです。
前項であげた「ハリルホジッチが日本代表監督を電撃解任」を例にしましょう。これが、「ハリルホジッチ監督の代表3年間の仕事を検証する」「ハリルホジッチ監督が日本代表に残したものとは」といった内容になるとどうでしょうか。
賞味期限は少なくとも本番までのおよそ2ヶ月、結果いかんではその後も十分に読める記事になるでしょう。「電撃解任」はその事実が周知される時期までが賞味期限なのに対し、「3年間の仕事を検証」や「監督が日本代表に残したもの」は、「なぜ電撃解任に至ったのか」「解任までどのような仕事を果たしたのか」という、一歩踏み込んだ情報を提供できるからです。
このほかにも以下のようなものが、賞味期限が長いコンテンツの特徴です。
これらのコンテンツは、読者の悩みを解決したり、読者に課題を認識させたりする内容で構成されます。ある程度時間が経過しても情報価値を失わない=「賞味期限が長いコンテンツ」といえるでしょう。
記事コンテンツの賞味期限は、SEO対策(検索エンジンの最適化)に影響します。SEO対策がうまくいけば、検索エンジンからのサイト流入がアップし、Webでの集客力が向上します。
賞味期限が切れた記事コンテンツで考えてみましょう。Googleの検索アルゴリズムの評価を上げるためには、読者に良質で有益なコンテンツを提供する必要があります。しかし、トレンドの過ぎた賞味期限切れのコンテンツでは、読者にフレッシュな情報を届けられません。これでは検索エンジンからの評価を下げる原因になってしまいます。
つまり、賞味期限が早いコンテンツを量産したとしても、断続的に賞味期限切れのコンテンツを生むことになり、安定的なSEO効果は見込めないのです。
こう聞くと、賞味期限は「長いほうがいい」と思われる方も多いでしょう。しかし、実際はそう単純ではありません。
賞味期限が短いコンテンツとは、表現を変えれば「旬」であり「ホット」な情報のこと。一例として挙がるのが「バズる」コンテンツです。特定の情報や物事がインターネット上で爆発的に話題となり多くの人に拡散されることを「バズる」といいますが、このバズる記事の多くは、トレンドに合致した賞味期限が短いコンテンツです。
ここで、野球の大谷翔平選手に関する以下の2つの記事を例に考えてみましょう。
前者は読み物として3ヶ月後でも半年後でも楽しめます。一方、“瞬間最大風速”が大きいのは後者であることはいうまでもないでしょう。同様に「DAZNのアプリをムダなく楽しむ方法」という記事と「速報!DAZNがJリーグと2,100億円で契約」という記事があったとして、瞬間的にPV数を稼げるのは確実に後者です。
お客様と打ち合わせをしていると、「(自社メディアの価値を高めるために)賞味期限ができるだけ長いコンテンツを作ってほしい」というオーダーをいただくことがよくあります。しかし、単純に賞味期限が長いコンテンツをたくさん作ればそれでいいかというと、そうではないというのが私の所感です。
では、どうすればいいのか。集客を目的としたオウンドメディアの場合、選択肢は大きく2つあります。ひとつは、そのメディアに賞味期限が短い(=瞬間的にPV数を稼げる)記事と賞味期限が長い(=長期的に読む価値がある)記事の両方をバランスよくアップする方法。もうひとつは、すでにアップしている記事(過去記事)を定期的にブラッシュアップしながら、賞味期限を少しずつ長くしていく方法です。
「最新のSEO事情」「集客に使えるホットなツール」「Web担当者におすすめのマーケティングセミナー」といった記事は、目まぐるしく変わるトレンドに合わせて情報価値が減っていきます。ただし、こうしたノウハウを知りたい人の数が減っていくわけではありません。その時々で正しい内容にアップデートしていけば、継続的に価値のある情報を不特定多数に発信できるでしょう。常に最新の情報を発信しているメディアはユーザーに「信頼性が高い」と認識され、ファンも増えやすくなります。
潤沢に広告費や宣伝費を使えるわけではない中堅・中小企業の場合はとくに、オウンドメディアのSEO対策が非常に重要です。しかし、ただ闇雲にキーワードに合わせて記事を作るだけでは効果が見込めません。
コンテンツのトレンド自体を、制作側でコントロールすることは不可能でしょう。ただ、今回の記事で解説した通り、コンテンツに賞味期限があることを意識し、全体のバランスを整えることは可能です。このようなバランスを考えたコンテンツ制作には手間がかかりますが、結果的に安定的なSEO評価につながり、広告費や宣伝費にお金をかけるよりも長期的な効果が見込める可能性は十分にあります。
ユーザーが求める情報をふまえて、賞味期限の長い記事と短い記事、どちらも網羅できるとよいでしょう。ぜひ実践してみてください。
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