テキストや動画をはじめとする「コンテンツ」を活用したマーケティング手法「コンテンツマーケティング」を効果的に行うには、ユーザーとの接点を積極的に生み出す必要があります。そして、ユーザーとのコミュニケーションの質を高めていくには、コンテンツのあり方が重要なファクターとなります。では、この「コミュニケーションの質」とは何を指すのか――。
それは、「ユーザーが強い興味を持ってコンタクトを取ろうとするかどうか」です。より具体的に言えば、企業や商品へのファン化や消費行動を促せるかどうか、ということになります。
そして、そのために大切になるのが、「ユーザーの求めているものを提示できるユニークなコンテンツ」なのです。ユーザーの求めるものとは、「有益な情報」「有益・無益にかかわらず、興味を惹かれる情報」「周りにシェアしたくなる情報(あるいは、シェアすることで、自分のブランディングになり得る情報)」ということになります。
このなかでもとくに注目したいのが「興味を惹かれる」という部分。興味を惹くことで、ユーザーのファン化・消費行動は、さらに加速していきます。そこで、本連載コラムでは、人がもっとも「興味を惹かれる」もののひとつ、“物語”にフォーカスしてお送りしていきます。
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ここにまったく味の同じ3つの「美味しいみかん」があったとします。そのみかんに以下の説明を添えるとしたら、みなさんはどれにもっとも「価値」を感じるでしょうか。
どれも同じ「美味しいみかん」ですが、おそらく多くの方が「3」にもっとも価値を感じたはずです。おそらくそれは、「3」にほかの2つにはない「ストーリー」が内包されているからでしょう。「みかん農家の中西さん」を修飾語として登場させることで、ただのみかんに物語が付与されているのです。さらに空想を広げようと思えば、瀬戸内海を臨む青空のみかん畑や日焼けした中西さんの顔、みかんを屈んでもぎとる姿まで思い浮かべることもできるかもしれません。
もし味がまったく同じであったとしても――それどころか、仮にまずかったとしても――人は、ものの背景にこそ大きな価値を見出しているのです。言い換えれば、物語は、もの自体が持つ絶対的価値に、プラスアルファの価値(付加価値)を与えることができる、ということになります。
人、もの、出来事、時間――これらはそれぞれ単体ではさほど意味を持ちませんが、互いに関係をつくり影響を与え合うことで、大きな意味を持つようになります。これが「物語」です。そして、物語が、企業や店舗、商品と結びつくことで、その単純な物語は「ドラマ」へ昇華することもあります。
何かの選択で迷ったとき、人はしばしば、感情をものさしとします。「その商品に関わっているあの人が好きだから」「助けたいから」「応援したいから」などの気持ちの揺らぎが、決断を強力に後押しします。逆に、決断したいがために物語を求めることもあるでしょう。つまり、こうして選択を容易にすること(=消費行動を促すこと)は、ものに価値が加わっているのと同義と言えるのです。
そういった意味では、コンテンツマーケティングは、「もの」と「物語」を強固に関連付けるためのツールと位置づけることができるでしょう。テキストや動画などのコンテンツによって物語を深めていくことで、価値をどんどん付加していくことができ、「より売れる仕組み」の形成を可能にするのです。
次回のコラムでは、「ストーリーの連続性」がもたらす価値についてご紹介していきましょう。
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