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「営業×マーケティング」の連携で成果を最大化する方法

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株式会社エッジコネクションより寄稿いただいた内容を掲載しています。

マーケティング部門がリードの獲得やナーチャリングの施策をどれだけ精緻に設計しても、「商談につながらない」「案件化率が思うように上がらない」という事象は多く、BtoBマーケティングにおいて直面しやすい課題と言えます。

ただしこれは、必ずしも施策そのものが悪いことが原因というわけではありません。マーケティング部門による“営業側の解像度不足”によって成果が伸び悩んでしまうケースが、実は少なくないのです。

本記事では、精神論ではなく営業現場のデータと実務の構造をベースに、マーケティング責任者の視点で「営業プロセスのどこをどう理解すべきか」「どの情報が施策改善に直結するか」を整理します。

 

▼ 営業組織の作り方については以下の記事をご覧ください。

売上アップを支える営業組織の作り方と人材育成のポイント

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営業マネジメントで解決する「属人化」の課題。再現性の高い“勝てる組織”の作り方とは

マーケティングに“営業理解”が必要な理由

マーケティングは、例えるなら「リレーの第1走者」。「自社製品・サービスに興味・関心を持ったユーザー」というバトンを生み出し、集めるのが役割です。しかし、そのバトンを受け取ってゴール(成約)まで運ぶのは、最終走者である営業担当者となります。

営業現場が日々どのような情報を頼りに判断し、どのような”変数”で戦っているのか。そのプロセスや成功・停滞の分岐点を理解しないままマーケティング施策を設計すると、理論上は正しくても現場では活かされないアウトプットとなってしまいます。

実際の営業現場では、同じリードでも「最初の質問の切り出し方」「次アクションの設計と提示」などのわずかな違いだけで、案件化率が倍以上も変化したりします。私たちは、そうした現実を日常的に目の当たりにしているのです。

営業プロセスは想像以上に細かく可変的で、顧客の温度感や前提情報、意思決定プロセスに応じて瞬時に調整されていく“柔らかい現場”と言えるでしょう。だからこそ営業活動をブラックボックスのまま放置せず、マーケティング部門がその思考、プロセス、ボトルネック構造を理解しておくことが重要です。

この理解こそが、施策の正確性と改善スピードを飛躍的に高めるレバレッジになるのです。

営業プロセスの全体像

営業プロセスを正しく理解するには、「単なる商談のやり取り」ではなく、「見込み顧客が顧客になるまでの一連のプロセス」を捉える視点が必要です。

具体的には、多くの企業における一般的なプロセスは以下のように整理できます。

  1. リード獲得(認知・関心)
  2. 初回接点(商談機会の創出/意欲の見極め)
  3. ヒアリング(課題の可視化・前提の揃え直し)
  4. 提案・価値訴 (=顧客にとっての“導入の納得理由”をつくる)
  5. 検討・調整(社内稟議・競合比較・条件交渉)
  6. クロージング(意思決定に向けた最終的な条件整備)
  7. 契約・導入/継続支援

マーケティング施策が関与する領域は上記の1〜3が中心であることが多い一方、「4以降の営業プロセスで何が起きているか」を把握しているマーケティング責任者は意外と多くありません。

しかし実際には、案件化や受注に“直接”影響を与えるボトルネックの多くは、4〜6に集中しているのが現場のリアルです。ここを理解しないまま「1の母数を増やす」方向に投資を続けると、効率がどんどん悪化していきます。

当社(エッジコネクション)が支援している営業現場では、以下のような構造的な課題が頻繁に発生しています。

  • 初回接点で温度感の高いリードを取りこぼしている(質問設計・優先順位付けの精度不足)
  • ヒアリングが表面的で、顧客の“意思決定基準”を引き出しきれていない
  • 課題解像が不十分なまま提案しているため、顧客の“腹落ち感”が弱い
  • 提案後のフォローが属人化し、稟議や社内巻き込みのプロセスまで設計できていない

つまり「商談の回数」ではなく、「意思決定に至るプロセスの設計力」が成果に圧倒的な差を生むことを認識しなければなりません。そして、ここにマーケティング部門が連携する余地が存在します。

次項では案件化率を上げるための具体的アクションに焦点を移し、営業プロセスの入口そのものをどう再設計するかについて解説します。

案件化率を上げるための具体的アクション

1. 「商談成立の条件」を営業と揃える

案件化率を引き上げる上で最初に見直すべきは、「ターゲット精度」と「初回接点の設計」です。多くの企業では、マーケティング部門が“属性情報ベース”でリードを獲得し、営業部門がそこから“温度感・導入可能性ベース”に変換してアプローチするという流れを取っています。

しかし、マーケティング部門が営業の判断基準を理解しないままリード創出を続けると、営業視点では「興味が薄い」「今じゃない」リードが増え、案件化率は上がっていきません。

重要なのは、「商談として成立する条件」をマーケティング部門と営業で事前に揃えておくこと。営業側の判断ロジックを取り入れたターゲティングにアップデートし、MA(マーケティングオートメーション)/フォーム設計の段階で「違いが出る質問」を入れておくだけでも、初回接点の精度は劇的に変わります。問い合わせ数よりも「1件あたりの真剣度」を高める設計に寄せていく――と考えると、イメージがつきやすいでしょう。

2. 成約までの「ボトルネック」を可視化する

もうひとつの重要なアクションが、“成約までのプロセス”の可視化です。多くの企業では「架電本数」「商談数」までしかトラッキングされておらず、その後の段階(提案→比較→稟議→経営層承認→契約)で「どこで・なぜ停滞しているのか」が把握されていません。この構造では改善策の立案が常に「上流(リード創出)」に偏ってしまうため、最終的な営業効率が上がらなくなるのは自然なことです。

成約までのプロセス全体を分解し、「反応はあるのに案件化しないのか」「商談化はするが失注するのか」「提案後の稟議通過率が低いのか」を定量化・見える化することで、改善の打ち手は全く変わります。例えば「ヒアリング後に停滞が多い」なら、“課題の言語化”が弱い可能性が高いと言えます。「提案後に稟議落ちが続く」なら、“根回し前提の次アクション設計”が不足している可能性があるでしょう。

マーケティング部門がこの構造まで理解して初めて、「ターゲティング精度の向上」「マーケティング段階での教育」「比較材料の事前提示」など、より成約につながる施策へと進化させることができます。

チーム内共有とマーケティング部門との連携設計

【連携の土台】営業チーム内の「記録の質」を統一する

営業とマーケティング部門の連携を語る際、最初に整えるべきは“営業チームの情報共有の質”です。ここが整っていない状態でマーケティング部門との連携を強化しても、そもそもの営業側データは個人依存のままとなります。結果として、マーケティング部門に還元される情報の精度が低くなります。

重要なのは「どう共有するか」よりも、先に “何を記録すべきか” の統一です。例えば、以下のような項目をCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)に記録するルールを明確化します。

  • 初回接点時に判明した“検討理由”と“現時点での優先度”
  • 意思決定プロセスに関与する人物
  • 「実施確定」or「情報収集中」などの“温度感分類”
  • 「次回何をすれば進むのか」という“具体的アクション定義”

記録は単なる「商談メモ」ではなく、“次アクションへ引き継げる情報”であることが重要です。ここが明文化されていると、属人化を防げるだけでなく、マーケティング目線での分析にも有効なデータとなります。

【双方向の連携】思考プロセスを交換できる仕組み

次に、一方向的に営業へリードを流すだけでは、営業現場は情報の意図を理解しきれません。顧客の行動履歴やスコアリングだけでなく、「なぜこの顧客を優先すべきなのか」「マーケティング部門側として何を期待しているのか」まで説明が済んだ状態で引き渡す仕組みを整えることも重要です。

さらに、営業活動の中で得られた「リアルな意思決定背景」や「導入時の障壁」などの情報は、マーケティング部門にフィードバックされるべきです。それらがコンテンツやスコアリングロジックに反映されれば、好循環をつくる土台となっていきます。

この循環を成立させるには、営業とマーケティング部門は「どの企業が成約したのか」というような、ただの取引記録だけを交換するのでは不十分です。互いの部署が「どのようなロジックで物事を判断しているか」という思考プロセスまで交換できるレベルに、連携を引き上げる必要があります。これによりお互いの判断基準がさらに噛み合い、認識の齟齬や意識合わせにストレスがない営業とマーケティング部門の連携が完成していきます。

分断を防ぐ「共通KPI」の設計

最後に、最も見落とされがちなのが「共通KPI設計」の視点です。リード獲得数やCPAをマーケティングのゴールとして設定している場合、営業の評価軸(受注・単価・LTV)と噛み合わず、両者の動きが分断されてしまいます。理想は “商談化率”や“案件化後7日以内の進捗速度”など、成約までのプロセスを前に進める指標を共通目標とすることです。

以上の体制を実装できている企業は改善スピードが圧倒的に速く、マーケティング施策の成功率も高いのが特徴です。

成果が出た実例と改善ポイント

事例1. ターゲティングの“判断軸”を揃え、商談化率が12%→28%に改善

あるBtoB企業では、リード獲得数は安定していたにもかかわらず「商談化率が12%前後で頭打ちになっている」という課題を抱えていました。

ヒアリングの結果、マーケティング部門は「業界」「従業員規模」など属性ベースでターゲティングを行っていた一方、営業側では「意思決定までの距離」や「導入までの障壁の低さ」といった“導入の必然性”を基準に、力を入れて提案すべき先を判断していることがわかりました。

このギャップを埋めるために、マーケティング施策の初期段階から 「導入検討の背景」や「情報収集フェーズの明確化」など、BANTに近い判断軸を質問項目としてMAに組み込み、スコアリング設計を再構築。さらに営業側のSFAでは「次回アクションが定義されているか」を必須入力に変更し、温度感の分類を“感覚”ではなく“具体的な行動条件”で統一しました。

その結果、12%だった商談化率は28%まで改善。見込み顧客の絞り込みが強化されたことで営業投入リソースの集中度も高まり、提案まで進む比率と受注率も安定的に伸びる結果となりました。

事例2. 営業フィードバックで“稟議通過率”を改善した情報循環

MAとSFAを連携した情報循環の成果です。ある企業では、失注した案件の多くが「稟議時に別部門のキーマンが関与する」パターンであることが営業側のSFA分析で判明。そこでマーケティング部門は、「導入効果を“部門横断の視点”で伝えるホワイトペーパー」 を新たに制作しました。

さらに、「競合比較の判断基準」を商談後の営業ヒアリングから蓄積。その情報をもとにMA上で「導入検討者が“社内説得に使える材料”」を提供するコンテンツを展開し、競合製品との優位性を明確にして稟議を通しやすいようにしました。

結果として、営業から「戦い方が明確になった」というフィードバックが増え、提案後の稟議通過率が向上。結果的にマーケティング施策のROIも向上し、施策の改善サイクルが加速しました。このように「営業→マーケティング部門」への情報循環が成立すると、“リードの質”ではなく“リードの前進速度”を改善できるのが大きな利点です。

まとめ|営業×マーケティングの連携で施策精度を高める

営業とマーケティング部門の連携は、「リード数を増やす」「情報を共有する」といった表層的な話ではありません。顧客の意思決定プロセスを営業・マーケティング部門の双方が“同じ構造”として理解し、共通の指標と仮説で動く状態をつくることが本質です。

とくにBtoBの場合、顧客の意思決定には複層的なプロセスが存在します。そのため、どのフェーズを“誰がどう前に進めるのか”までが明確に設計されていることが重要になります。

本記事で触れてきた通り、マーケティング部門側が営業プロセスの解像度を高めるだけで、施策の改善方向は劇的に変わります。ターゲットの選定基準は「属性」から「導入の必然性」へ。MAは「リード獲得装置」から「営業の判断材料を事前に整える支援装置」へ。そしてSFAは「商談結果の記録」ではなく、「次アクションの再現性を高める情報提供装置」へと進化します。

営業とマーケティング部門、両者が分断されている組織ほど施策は点で終わり、改善サイクルが回りません。組織の成長を持続させる鍵は、マーケティング部門が営業活動の詳細を理解することから始まる全体構造としての連携設計です。ここに本質的な時間を投資できれば、マーケティング施策のROI・営業の生産性・LTVの最大化を同時に実現できます。

Yasuo Omura

執筆者

株式会社エッジコネクション 代表取締役社長

Yasuo Omura

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慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。 2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。 これまでに1700社以上を支援し、継続顧客割合は75%を超える。 2024年7月には「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。

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