ユーザーを“営業マン”に変える
「情緒的ベネフィット」とは!?
~コンテンツマーケティングとストーリー<5>~

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第3回第4回の記事では、ストーリーを重視したコンテンツマーケティングの事例をご紹介しました。5回目となる今回では、「ストーリーコンテンツ」の次なるステージと可能性、そしてそのカギになる「重要なファクター」についてご紹介していきます。

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1.広告の進化と停滞

ストーリーを用いたマーケティングは、連載第2回でもご紹介したように、テレビをはじめとした「マスメディア」で積極的に行われており、大きな広告効果を生んでいます。これらは従来行われてきた「会社や製品・サービスのよさや、価格の優位性などをアピールする」という、広告手法に比べ、より強い興味と共感を抱かせることができるため、ユーザーの「ファン化」を促すうえで大変有効な手法と言えます。

ただし見落としてはいけないのは、ストーリーを用いたCM手法はあくまで企業側からの一方的な発信であるという点です。「コンテンツにストーリーを加える」「積極的な宣伝をしない」という特徴を持つものの、「対大多数」というマスの表現手法である点から言えば、「従来どおりのマーケティング手法である」とも言えるのです。

2.マスメディアの限界が見えた!? ~相互に作用しあう“ソーシャル”の台頭~

自画自賛するよりも、第三者からの客観的な評価のほうが、商品が持つ「価値」に対する信憑性は高まります。「僕は、すごく優しい人間です」と自分で言うより、周りの人から「彼はすごく優しい人間ですよ」と紹介されるほうが、より強い力を持って言葉・意味が伝わることは明らかです。

誤解を恐れずに言えば、マスメディアは「自画自賛」しかできない媒体です。そしてある意味では、ここがマスの限界だとも言えます。さらなるマーケティング効果を狙うには、第三者による客観的な評価が必須。――つまり、ソーシャルメディアによるマーケティングが不可欠になるわけです。

ソーシャルメディアは、ユーザー一人ひとりが発信者であり、同時に小さなメディアでもあります。自分の意見、主義・主張を自由に周りへ広められるとともに、周囲からの意見にさらにアクションを起こすことができるのです。ここにマスメディアとの大きな差があります。一方的に発信するのではなく、発信した先からさらに無限とも言える多方向へ、相互に作用しあうのです。

3.ストーリーのカギになる「情緒的ベネフィット」

ネット上のユーザーが発信者になるということは、素晴らしい製品やサービスがあれば、それを勝手に広めてくれるということでもあります。つまりユーザーを、製品・サービスを宣伝してくれる“営業マン”にすることができるわけです。

この一連のアクションで重要になるのが「ファン化」です。「周りのみんなにも教えてあげよう!」という気持ちにさせるには、製品・サービスのファンになってもらう必要があるからです。そして、ファン化を促す最重要ファクターこそ、ストーリーであり、「情緒的ベネフィット」と呼ばれる考え方です。

機能的ベネフィットと情緒的ベネフィット

「ベネフィット」という言葉をご存じでしょうか? マーケティング業界で頻繁に使われる用語で「製品やサービスからユーザーが得られるメリット・価値」という意味があります。このベネフィットには2つの種類があります。

ひとつは、機能的ベネフィット。これは製品・サービスの特性・機能に結びついた効用や価値のことを言います。車で言うと「最高時速◯◯◯km/h、◯◯◯馬力、V6ツインターボエンジン搭載」――このような、客観的な機能・性能によるベネフィットのことです。

機能的ベネフィットは客観性があるため、競合他社製品との比較が容易です。そのため、ここだけをアピール材料とすると、価格競争に陥りやすいというデメリットがあります。そこで、別の付加価値を付ける必要があります。それが「情緒的ベネフィット」です。

情緒的ベネフィットは、機能とは別のところにメリットを付与します。「とにかく速い車が欲しい」というレーサーのような人なら、機能的ベネフィットのみが購入動機になるかもしれませんが、多くの人にとっては、必ずしも機能だけが購入動機にはならないはずです。なぜなら、ときにはそこに「憧れ」のような情緒的な要素が入ることがあるからです。

4.「情緒的ベネフィット」が人の気持ちを動かす

「いつかは、クラウン。」

……言わずと知れた、トヨタの高級車「クラウン」の名コピーですが、この宣伝コピーに機能的ベネフィットは一切含まれていません。それでもクラウンという車への憧憬を抱かせるのは、このコピーに「情緒的ベネフィット」が含まれているからです。つまり、速いから欲しいのではなく、馬力があるから欲しいのでもなく――「クラウンに乗りたいから」欲しいのです。

では、なぜ機能以外の魅力が「クラウンに乗りたい」という価値を生んでいるのでしょうか。……もうお分かりですね。そこには、「ストーリー」があり、クラウンを欲しいと思っているユーザーのほとんどが、すでにクラウンの「ファン」になっているからです。

次回の「コンテンツマーケティングとストーリー」では、情緒的ベネフィットとストーリーの関連性、そして情緒的ベネフィットを生み出していく方法についてご紹介していきます。

 

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