企業のフリーランス活用には、様々な落とし穴が潜んでいます。その中でも特に気をつけたいのが、報酬の支払いに関する事項です。報酬の支払いに関するトラブルは、業務が滞るだけではなく企業にとって大きな信頼を失う結果となるため、何よりも慎重に行う必要があります。
では、トラブルが起こるリスクを減らしてフリーランスへの発注を行うにはどのようにすればいいのでしょうか。企業がフリーランスを活用することは、多くの場合、下請法の対象取引となります。そのため、下請法に対する理解を深めることが大切になります。
下請法では、親事業者に様々な義務を課しています。その中でも今回は支払いに関する義務のうち、トラブルを回避するために大切な「下請法3条書面」についてまとめてみました。
実際の3条書面は下記になります。
1 書面の交付義務(第3条)
親事業者は,発注に際して下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。
【3条書面に記載すべき具体的事項】
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法
非常に多くの項目があります。法律の文言にある通り、“下記の具体的記載事項をすべて記載している”書面を作成して交付する必要があります。下請取引においては、下請事業者の利益保護が優先されるため、発注者側にはトラブルを未然に防ぐために充分な管理が求められる形となっています。
下請法3条書面で注意したいポイントについて以下にまとめてみました。
発注日や納期を記載するだけでなく、「検査を完了する期日」「支払期日」をそれぞれ定め記載する必要がある点です。その中で特に気をつけなければいけないのが、「支払期日」に関する項目です。「支払期日」については、「支払期日を定める義務(第2条の2)」にある通り、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内を必ず指定しなければいけません。
注意したいのは発注者側が納品物を検査した受領日ではなく、フリーランス側が納品を行った日から起算して60日以内に代金の支払を行う必要があることです。そのため、3条書面においても60日以内の日付にて「支払期日」の指定を行う必要があります。
問題となるケースが出てくるのは、企業取引でよるある月末締め、翌月末支払いの支払いサイクルとなっている場合の60日以内の支払いに関する取り決めです。
例えば、当月の月末31日にフリーランスより成果物の納品を受けて翌月に検査を行う想定の取引を行った場合、検査の有無に限らず、この取引については当月の取引完了分として、処理を行わないと、60日以内に代金の支払を行うことができず、下請法に即した取引が行えていないことになってしまいます。
今回は、「下請法3条書面」についてまとめました。個々に担当者が発注を行うのではなく会社でフォーマットを作り、弁護士など専門的な人に確認することが企業としてフリーランス活用に大切なポイントになります。
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