Googleは2019年3月26日にAMPメールという、新しいテクノロジーを使ったメールの導入を発表しました。
AMPメールはこれまでのメールと違い、メール内でカタログなどをスライド写真で閲覧できたり、アンケートに回答するなどのフォームの送信ができたり、動画再生などのダイナミック(動的)なコンテンツを利用することができます。以下がGoogleが発表した実際のGmailでの表示になります。
普段、HTMLメールを業務としてコーディングしているので、AMP for emailにも関心が強く、実際にやってみたことをご紹介しようと思います。
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AMP(Accelerated Mobile Pages)は、高速でスムーズに表示されるWebページを簡単に作成できるようにするオープンソースのHTMLフレームワークで、ユーザーファーストを優先する新しいテクノロジーです。AMPが発表された当時はモバイルでのWebサイトの表示速度を早くするために開発されていましたが、応用範囲が広がりメールや広告、またInstagramのストーリーのようなAMP storiesという検索結果での新しい視覚的な表現方法も生まれてきています。メールに関してはモバイルにとどまらずPCでもAMP for emailのテクノロジーが利用できます。
従来のメールは、テキストメールとHTMLメールの2種類が送信できます。テキストメールはその名の通り文字ベースのメールで、メールの開封やクリックなどは計測できません。HTMLメールはメールの開封やクリックなどの計測ができるだけでなく、HTMLの機能を使って画像を表示させたりgifアニメーションを使って視覚的に訴求力のあるメールをつくることが可能です。ただHTMLメールでは、Webサイトのような充実した動的コンテンツをユーザーに届けることに技術的な問題で制限があり、またメールを取り巻く技術や環境の変化が長らくない状況が続いていました。
しかし、AMPの技術をメールに応用することで、技術的な限界でできなかったメール内で問い合わせを送れるようになり、これまでのWebサイトへの誘導というプロセスが不要になるなど、受信者側にとっての利便性と、送信者側のコンバージョンまでの離脱を防げるなどのメリットがあります。
AMPメールはテキストメール・HTMLメールと互換性があるので、これまで送信していたメールについて何か影響があるわけではありません。これまでのメールの仕組みにAMPメールを送信する仕組みが新たに追加されたということが変わったところです。
テキストメールとHTMLメールがどのように送信されているかを簡単に説明します。メールはマルチパートという技術で、1つのメールに「テキストメール」と「HTMLメール」を同時に送信することが可能です。テキストメールとHTMLメールのどちらを受信するかは受信側で決まってきます。HTMLメールを表示する機能がないメーラーやHTMLメールの受信を設定で拒否している場合は、テキストメールを受信します。HTMLメールが表示可能な場合は、HTMLメールを表示するという仕組みです。
今回、新たにAMPメール用のパートを作ってメールを送信することによって、これまでのテキストメールとHTMLメールに影響を及ぼすことなくAMPメールが送信できるようになったのです。
AMPメールを送信したり受信するためにはまだ十分な環境が整ってはいません。2019年6月7日現在での送受信についての情報になりますが、テスト送信などの参考にしてください。
AMPメールに対応したメーラーが必要ですが、今のところはGmailで動的メールのデベロッパー向けの設定をすれば、AMPメールを受信することが可能です。今後、Yahoo MailやOutlook.com、mail.RuでもAMPメールが表示されるようになっていく予定のようです。
受信トレイ > 右上のギアマーク > 設定 > 動的メール > デベロッパー向けの設定に、動的メールの送信者のメールアドレスを設定します。
動的メール受信の設定ができていると以下のように、AMPメールを受信することができます。
mail.Ruでもgmail宛のAMPメールの受信表示を確認しましたが、残念ながらまだ対応していませんでした。mail.Ruでの動的メール設定を見つけることができませんでしたが、もしかすると受信するための設定があるのかもしれません。
AMPメールの送信環境も受信と同様に、まだ十分に整っていません。テスト送信として試せる方法と、すでにAMPメールに対応しているSparkPostというメール配信システムツールを使って送信してみようと思います。
Gmail AMP for Email Playgroundを使うと、ブラウザ上でのAMP HTMLのコードの記述とプレビューができ、ログインしているGoogleアカウントのメールアドレスにAMPメールのテスト送信をすることが可能です。AMP emailのドキュメントを参考にカルーセルを導入してみたのが以下になります。
SparkPostはAMPメールに対応しているとのことなので、私の個人のドメインを使って送信までやってみようと思います。SparkPostで送信メールドメインのSPF(Sender Policy Framework)とDKIM(DomainKeys Identified Mail)をDNS設定するように案内されるので対応してください。問題がなければ以下のようにチェック済になります。
AMPメールを送信するにはDMARCもDNS設定する必要があります。https://dmarcian.com/dmarc-inspector/を使って問題ないかチェックしておきましょう。
DKIMのチェックはhttps://dmarcian.com/dkim-inspector/でできます。
SPFのチェックはhttps://dmarcian.com/spf-survey/で可能です。
SparkPostでのメール作成画面にはAMPメールパートがあります。この部分にAMPメール用のコーディングしていきます。
プレビュー画面でも正常にAMPメールが表示されています。
実際にGmailにAMPメールを送信するためには、AMPメール送信者の登録が必要になります。AMPメール送信者登録専用のGoogleフォームから必要な情報を入力して情報を提供し、SparkPostから指定のメールアドレスにAMPメールを送信します。
AMPメールのホワイトリストに登録が完了したら本番環境でAMPメールが送れると思うのですが、私はこの登録がうまくいかない状況で止まっています。このフォームからメールを送信して以下の問題があるという返信がきました。
The email not including a “text/x-amp-html” MIME part or putting your AMP content in the “text/html” MIME part.
The email not passing DKIM, SPF, and DMARC authentication checks.
解決方法がわからず、ちょうどSparkPostからメールがきていたので、上記について質問したのですが回答は得られず…
また時間を作って、AMPメールの送信ができるようになりたいと思っています。
AMPメールのメリットについては冒頭で説明しましたが、デメリットも想定してみました。
これまでのメールは、テキストメールとHTMLメールの制作をする必要がありましたが、AMPメールも作りたいとなると3つのパートのメールの作成しないといけないので、これまでよりも制作コストが上がってしまうことが想定されます。
AMPメールのパートに対応したメール配信システム(Email Service Provider)は、2019年6月7日時点ではごく少数です。現在利用しているメール配信システムのAMPメール送信環境が整うまで待てない場合はメール配信システムを乗り換える必要があり、システムの乗り換えに関わるコストが発生することが想定できます。
まだAMPメールが登場したばかりなので仕方ないのですが、AMPメールの受信できるメーラーが少ないです。今後、Yahoo Mail、Outlook.com、mail.RuがAMPメールを受信できるようになっていくので今後に期待はできると思います。
AMPメールはまだ登場したばかりなので、どれだけ使われるかは未知数ですが、メールの歴史を変える大きなきっかけになるかもしれません。2019年の7月2日からはG suiteでも動的メールがデフォルトで使えるようになるとGoogleから発表されたようなので、ビジネス目的でも利用が活発になりそうです。今後のAMPメールの動向を気にしておきましょう。
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