本記事では、BtoB・BtoC企業におけるコンテンツマーケティングの成功事例と、成果を出すための共通点、そして今後のトレンドについて詳しく解説しています。
「どんなコンテンツが成果につながるのか具体的なイメージがわかない」「他社の成功事例を参考に、自社の戦略をブラッシュアップしたい」などの課題を抱えるマーケティング担当者の方に向けて、すぐに実践できるヒントを紹介します。
この記事を読めば、成功事例の背景にある戦略的思考を理解できます。さらに、自社の顧客獲得やブランド価値向上につなげやすいコンテンツマーケティングの企画立案ができるようになります。
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BtoB(Business to Business)領域のコンテンツマーケティングでは、顧客の課題解決を実現するための専門性や信頼性の高い情報提供が欠かせません。とくに、顧客が抱える課題を丁寧に解決へ導くコンテンツは、リード(見込み顧客)獲得から育成、そして顧客化に至るまでの長期的なプロセスを支える重要な役割を果たします。
ここでは、成果につながっているBtoB企業のコンテンツマーケティング成功事例を5つ紹介します。

FA(ファクトリー・オートメーション)機器メーカーのキーエンスは、専門性の高い技術情報を活用して見込み顧客を獲得しています。
サイト内では「センサとは.com」「静電気ドクター」といった技術者向けの基礎知識や実用的なノウハウなどを学べる「ものづくりお役立ち情報」ページを構築し、技術資料やホワイトペーパーを多数公開。これらの資料をダウンロードする際に会員登録を求めることで、質の高いリード情報を効率的に獲得しています。
また、顧客が本当に知りたい専門情報を的確に提供することで、購買意欲の高い潜在顧客リストを構築し、その後の営業活動の成約率向上につなげているのも特徴です。

出典:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/
グループウェアを提供するサイボウズは、自社メディア『サイボウズ式』を通じて「新しい価値を生み出すチームのメディア」というコンセプトを体現。製品を直接PRするのではなく、働き方や組織論、多様性といった社会的テーマを発信することで共感を集めています。
『サイボウズ式』では、経営者や専門家へのインタビューやコラムを中心に発信し、読者とともに「これからのチームや社会のあり方」を考えるコンテンツを展開しています。
結果として、企業の思想やビジョンに共感するファンを獲得。BtoBマーケティングにおけるブランディングを成功させ、長期的な視点での事業成長につなげています。

住宅設備メーカーのLIXILは、建築のプロフェッショナル(工務店、設計事務所、ビルダーなど)をターゲットとした専門的な情報発信で、リードナーチャリングや顧客関係強化を実践。
事業者向けの専門サイト『LIXIL ビジネス情報』を運営し、新製品情報に加え、省エネ基準などの法規制解説、設計・施工ノウハウ、補助金情報といった実務に役立つコンテンツを提供しています。
Webセミナーも積極的に開催し、住宅設備における信頼性の高い情報源として地位を確立しました。結果として製品選定の第一想起を獲得し、パートナー企業とのエンゲージメントを高め、自社製品の採用率向上に大きく貢献しています。

出典:https://www.fujifilm.com/fb/solution
複合機やITソリューションを提供する富士フイルムビジネスイノベーションは、「オフィスの課題解決」を大きなテーマに掲げてコンテンツを展開し、顧客との接点を創出しています。
同社のオウンドメディア『Bridge DX Library』ではペーパーレス化や情報セキュリティ強化、DX推進など中小企業の経営層や管理部門が関心を持つテーマのコラムや導入事例、ホワイトペーパーを多数公開。単なる「複合機メーカー」ではなく、「オフィスのDXを支援するソリューションパートナー」としてのブランドイメージを確立しました。課題を抱える潜在顧客に有益な情報を提供することで、質の高いリード獲得と顧客育成を実現しています。

クラウド録画サービス「Safie」を提供するセーフィーは、導入事例をコンテンツの核に据える戦略で製品の価値を具体的に伝えています。
導入事例コンテンツでは小売や飲食、建設、工場など、業界ごとに「どんな課題があり、それをSafieのカメラでどう解決したのか」をストーリー仕立てで紹介。例えば「万引き被害が8割減」「従業員の作業効率が15%向上」といった具体的な成果を数値で示すことで、顧客に明確なメリットを伝えています。
製品の利用シーンが具体的にイメージできるため、検討段階の顧客の不安を払拭し、導入の意思決定を強力に後押ししています。業界特化の成功事例が新たな顧客を呼び、問い合わせを獲得する好循環を生み出しているのが特徴です。
BtoC(Business to Consumer)領域のコンテンツマーケティングでは、顧客の共感や憧れを育み、日常やライフスタイルに寄り添うようなコンテンツが効果的です。ブランドの世界観を伝えることで企業のファンを獲得し、継続的な購入や口コミ拡散へと結びつけることで成果につながります。
ここでは実際にファンを増やし、成果を上げたBtoC企業のコンテンツマーケティング成功事例を5つ紹介します。

クラフトビールの「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングは、ファンとの「共創」を軸にしたユニークなコミュニティ運営で、熱狂的なファンを生み出し続けています。
具体的にはオウンドメディアやSNSの運用を通じて、ビールの楽しみ方や開発秘話、ブルワー(醸造家)の素顔など、企業に親しみの湧くコンテンツを発信。また、「超宴」といった大規模ファンイベントを企画し、オンラインとオフラインを融合させたファンコミュニティを形成しているのも特徴です。
これらのファンコミュニティが自然な口コミを生み、共創を通じたブランドロイヤリティを高めることで、広告に頼らず安定した売上基盤を築いています。

京都発のジュエラー「NIWAKA」は、指輪一つひとつに込められた「物語」を売る、卓越したストーリーテリング戦略で顧客の心を掴んでいます。
「初桜」「木洩日」など、指輪ごとに美しい名前と情景が浮かぶような詩的な物語を設定し、Webサイトや店頭で丁寧に紹介することで、顧客は単なる製品ではなく「二人のための特別な体験」として指輪を選べます。
この独自の物語こそが、同社のコンテンツマーケティングにおける成功事例です。その結果、「自分たちらしさ」を重視するカップルから絶大な支持を獲得しました。高価格帯でも指名買いされるブランド力により、価格競争に左右されないポジションを築いています。

出典:https://fp.moneyforward.com/
家計簿アプリを提供するMoney Forward MEは、ユーザーの「お金の悩み」に寄り添うメディア『Money Forword お金の相談』でサービスの信頼性を高めています。
アプリの活用法だけでなく資産形成や節約、保険、ローンなど幅広いテーマにおいて、FP(ファイナンシャルプランナー)など専門家監修の記事を提供。アプリの潜在ユーザー層に有益な情報を提供することで、「お金の悩みならマネーフォワード」という第一想起を獲得しています。
結果として、アプリのダウンロード促進や継続利用率の向上につながり、顧客との長期的な関係構築に成功しています。

出典:https://www.snowpeak.co.jp/mag-spw/
アウトドア用品メーカーのスノーピークは、製品ではなく「キャンプという体験」の価値を伝えることで唯一無二のブランドを築いています。
同社が運営するオウンドメディア『THE SNOW PEAK WAY』では、製品情報だけでなく「キャンプという体験」の価値を伝えることに注力。キャンプの哲学や自然との共生を発信し、全国のキャンプフィールドで社員とユーザーが交流するイベント「Snow Peak Way」を定期開催しています。さらに、ユーザーを「野遊び人」と呼ぶ独自のコミュニティを形成し、熱狂的なファンを育成しているのも特徴です。
この高いブランドロイヤリティにより、高価格帯の製品でも指名買いにつながり、顧客との長期的な関係構築に成功しています。

コピーライターの糸井重里氏が主宰する『ほぼ日』(ほぼにち)は、「コンテンツからビジネスが生まれる」という非常にユニークなモデルを体現したメディアです。
特定のジャンルに縛られず、編集部が「おもしろい」と感じた対談やエッセイ、企画などを毎日更新しており、その人気コンテンツから派生する形で「ほぼ日手帳」や「生活のたのしみ展」といった商品やイベントが生まれる仕組みとなっています。
同社は、商品を売るためのメディアではなく、魅力的なコンテンツとコミュニティから自然に収益につなげる独自モデルを構築。そうすることで、読者との信頼関係が高いエンゲージメントと購買行動につなげています。
ここまで紹介してきた、BtoB・BtoCそれぞれの成功事例には、業種やターゲットの違いを超えた共通点があります。自社のコンテンツマーケティング施策を成功に導くためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
コンテンツマーケティングを成功させるための第一歩は、ペルソナを明確することです。年齢や職種といった基本的な属性にとどまらず、抱えている課題や情報収集の方法、意思決定のプロセスまで具体的に描いたペルソナを設定することで、コンテンツマーケティングにおける軸がブレなくなります。
例えばBtoBのペルソナ設計では「30代のWebマーケティング担当者で、SEOの知識はあるが広告運用に課題を感じている」というように、悩みや課題、情報収集の行動特性まで具体的に設定します。この明確なペルソナ設計によって企業は人物像をリアルにイメージでき、ターゲットに響くコンテンツを設計しやすくなるのです。
▼ ターゲット、ペルソナについては以下の記事もあわせてご覧ください。
コンテンツマーケティングで成果を出すには、自社の製品PRや発信したい内容を前面に出すのではなく、まず顧客が直面している課題やニーズを正しく理解することが欠かせません。
BtoBであれば専門知識の提供、BtoCであれば悩みに寄り添った体験談を紹介するなど、常にユーザー視点に立ったコンテンツは「このブランドは自分を理解してくれている」という共感を呼び起こします。結果として、信頼とエンゲージメントが積み重なり、購買やサービス利用への自然な動機づけにつながっていくのです。
コンテンツは公開して終わりではなく、その後の成果検証と改善が成功の鍵を握ります。PV数やリード獲得数、エンゲージメント率など、目的に応じた具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に効果を測定することで自社の強みと弱みが見えてきます。
データに基づいて「どのコンテンツが読まれているのか」「どこを改善すればもっと成果が出るのか」を分析し、PDCAサイクルを回し続けることで、長期的に安定した成果を生み出す仕組みへと成長していきます。
コンテンツマーケティングは、正しく取り組めば大きな成果をもたらします。ただし、進め方を誤ると効果が出ないままリソースを浪費してしまうリスクもあります。
あらかじめ、コンテンツマーケティングの失敗のパターンを理解しておくことも大切です。ここでは、とくに注意しておきたい3つの注意点を紹介します。
「とにかく記事を増やせば成果につながる」というように、目的やターゲットが曖昧なままだと顧客ニーズに合わないコンテンツばかりが並び、ブランド価値を下げかねません。
まずは誰に何を届けるのかを明確にし、戦略に沿ったコンテンツを積み重ねることが成果への近道です。
コンテンツマーケティングは、顧客へ価値を提供し続けることで信頼関係を育む、中長期的な資産構築の施策です。広告のように即効性を期待できるものではありません。
数日から数週間で結果が出ないからといってすぐに方向転換すると、施策の効果を正しく検証できなくなります。コンテンツマーケティングを実践する際は、成果が得られるまで長期的に発信、効果測定、改善を繰り返す必要があることを理解しておきましょう。
せっかく質の高いコンテンツを作成しても、ユーザーに届かなければ意味がありません。作りっぱなしにしてしまうと、時間やコストをかけた労力が無駄になってしまいます。SEO対策はもちろん、SNSでの拡散やメールマガジンでの告知など、コンテンツを「届ける」仕組みを整えることが重要です。
また、コンテンツの公開後は定期的にアクセスや検索順位をチェックし、必要に応じてリライトや情報更新を行いましょう。定期的な更新や改善を行うことで、コンテンツの鮮度と成果を維持し、長期的な企業の資産として価値を発揮します。
コンテンツマーケティングは日々進化しており、テクノロジーの発展や顧客ニーズの変化に伴い、これまで以上に戦略的なアプローチが求められています。
近年はAIが急速に普及しており、新規顧客獲得の難易度が非常に高まっています。そうした時代のなかでコンテンツマーケティングを成功させるには、コンテンツのAI最適化(LLMO/AIO)や、顧客体験を最適化するパーソナライズへの対応が欠かせません。
これらの最新トレンドを押さえることで、競合他社との差別化や成果向上につなげられるでしょう。
AI技術の普及と進化は、コンテンツマーケティングに大きな変革をもたらしています。企業はAIを活用することで、キーワード調査や競合分析、文章の草案作成などの自動化や、コンテンツ制作の効率を飛躍的に向上が可能です。
一方で、AIの登場によって顧客の情報収集行動は、従来の「検索」から「AIへの質問・対話」へと変化しています。企業は従来のSEO対策に加えて、AIの回答に自社ブランドを引用してもらう「AI最適化(LLMO/AIO)」を行う必要性が高まっています。
現代は誰でも簡単にコンテンツを作れる環境だからこそ、顧客に確実に価値を届ける「コンテンツの質」が重視される時代になっているのです。単なる情報提供ではなく、独自の視点や深い洞察、人間的な共感といったAIに評価されやすい情報を盛り込むことで、自社コンテンツの価値を高められるでしょう。
▼LLMO/AIO対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
インターネットの普及などで誰でも情報を入手できる現代では、新規顧客獲得の難易度が高まっています。こうした状況下で企業が顧客との関係を築くには、顧客一人ひとりの興味関心に合わせて、最適なコンテンツを最適なタイミングで提供する「パーソナライズ」の重要性が増しています。パーソナライズは、エンゲージメント向上やコンバージョン率アップに直結します。
さらに、MAツールなどを活用して顧客データを分析することで、BtoBでは業種や役職に合わせた情報提供、BtoCでは趣味嗜好や購入履歴に応じた情報提供といったきめ細やかなコミュニケーションも可能。既存顧客の体験価値を高めることがますます重要になる現代では、パーソナライズされたコンテンツ発信を通じて、顧客一人ひとりに確実に価値を届けることが成功の鍵を握ります。
コンテンツマーケティングを成功させるには、専門知識を持つパートナー企業を活用することが効果的です。しかし、数ある企業の中からどこを選べば良いか迷うことも少なくありません。
ここでは、自社に最適なコンテンツマーケティングのパートナーを見つける5つのポイントを解説します。
自社のコンテンツマーケティングを成功に導くには、パートナー企業が業界や事業について深く理解していることが大切です。
BtoBかBtoCか、SaaSか製造業かなど、自社のビジネスモデルや業界特有のトレンドを理解しているかを確認しましょう。パートナー企業に業界知識があれば、より的確な戦略立案や専門性の高いコンテンツ制作が期待できます。
単なる記事作成だけでなく、ペルソナ設計やキーワード戦略、KPI設定といった上流の戦略設計から制作、効果測定、改善提案までを一貫してサポートできるかを見極めましょう。
コンテンツの公開までではなく、その後の改善まで支援し、PDCAサイクルを回せるパートナー企業を選ぶことが成果につながりやすくなります。
自社が求めるコンテンツの種類に応じた専門性があるかも重要なポイント。
例えば「SEOに強いライターがいる」「専門家(監修者)のネットワークがある」「動画やホワイトペーパーなど多様なフォーマットに対応できる」など、求めるコンテンツの種類に応じた専門性があるかを確認しましょう。パートナー企業の実績を確認することで、実際の制作物の品質などを把握できます。
過去にどのような企業の支援を行ったのか、具体的な数値で示せるかを確認しましょう。「サイト流入数○倍」「コンバージョン率○%向上」など、自社の目標に即した支援実績が確認できると、成果が出た際のイメージを持ちやすくなります。
とくに自社と似た業界や課題を持つ企業の成功事例があれば、信頼性も高まるでしょう。
コンテンツマーケティングは長期的な取り組みです。PDCAサイクルを回すためにも、定例会の対応や迅速なレスポンス、柔軟な対応など、パートナー企業がスムーズに連携できるかどうかを確認しておくことが重要。
担当者との相性も含め、信頼して任せられる「伴走者」となり得るかを見極めましょう。
コンテンツマーケティングを成功させるには、以下の3点が挙げられます。実際にコンテンツを制作する前に、社内体制を整備したり、目的やターゲットを明確に定めたりして運用を始めることが成功への近道です。
詳しくは、記事内「成功するコンテンツマーケティングの3つの共通点」で解説しています。
コンテンツマーケティングでは、以下のようなケースが失敗につながりやすくなります。これらを避けるためには、中長期的な視点を持ってターゲットや目的、KPIなどを設定しておくことが重要です。
詳しくは、記事内「知っておきたい!コンテンツマーケティングの落とし穴」をご覧ください。
広告のような短期的な効果は期待できません。コンテンツマーケティングは、時間をかけて顧客と信頼関係を築き、中長期的に成果を生み出す施策です。
詳しくは、記事内「知っておきたい!コンテンツマーケティングの落とし穴」で解説しています。
コンテンツマーケティングに成功する企業は、明確なターゲット設定や顧客の課題解決につながるコンテンツの継続的な発信、効果測定と改善を繰り返しています。こうした取り組みこそが、競争の激しいデジタル時代において企業を成長させる原動力です。
価値あるコンテンツは、単なる情報発信を超えて企業の大きな資産となります。だからこそ、戦略的かつ継続的に取り組む姿勢が欠かせません。
執筆者
コンテンツディレクター/ライター
Miho Shimmori
2023年ファングリーに入社。以前はWebマーケティング会社で約2年半コンテンツマーケティングに携わり、不動産投資メディアの編集長を務める。SEOライティングが得意。ほかにも士業関連や政治など複数メディア運営の経験あり。Z世代の端くれ。趣味はサウナと競馬と街歩き。
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