情報過多の時代に、自社の魅力を的確にリーチさせるための企業戦略として「コーポレートブランディング」への注目が増しています。しかし、いざ「うちもコーポレートブランディングに力を入れてみよう」と一念発起しても、何から始めていいのかわからないということもあるでしょう。
なぜ多くの企業は、スムーズに自社のコーポレートブランディングに取り組むことができないのでしょうか。その答えは、コーポレートブランディングに対する誤解と認識違いにあります。コーポレートブランディングとは、ただ自社の認知度や話題性を高めるために、大々的にプロモーションをすることではありません。
それゆえに自社の特徴・個性・想いを的確に捉えたキャッチコピーの作り方やコーポレートブランディングの定義について理解したうえで、自社らしさを周囲に浸透させることこそが重要になります。
この記事は、「10年100年と企業の存在感を保つための優位性を手にしたい」「市場動向とステークホルダーのニーズにマッチした経営戦略を検討したい」「自社のホームページに“らしさ”を加えてリニューアルしたい」と考える経営者、担当者にコーポレートブランディングの重要性について紹介します。
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「ブランディング」とは、ブランドに対する共感や信頼を通じて価値を高めること、またはブランドそのものを形づくることです。ブランディングを明確に理解したことで、また新たな疑問が生じるかもしれません。それは「そもそもブランドとは何か」という問いです。ブランドをイメージするためにも、まず1つ例を挙げましょう。
例えば、「スターバックスコーヒー」と聞くと、多くの人が「おしゃれなカフェチェーン店」とか「駅前にあって便利」とか「おいしいコーヒーが飲める」などと思い浮かべるはずです。スターバックス=おいしいコーヒーを提供するおしゃれなカフェとして多くの人に認知されているということは、スターバックスコーヒーのブランドが世の中に根づいていることの証左です。
企業にとって「ブランド」とは、自社独自の価値を指します。金銭や不動産のように形あるものではなく、目には見えない経営資産です。ブランドは実態のない無形資産ですが、多くの人の印象やイメージに大きな影響を与えます。同じくスターバックスを例に挙げて説明します。
1971年にアメリカ合衆国ワシントン州シアトルで誕生したスターバックスも、最初は田舎にある名もないコーヒーショップでした。それが今や、全世界90か国に展開する一大バリューチェーン店にまで拡大できたのは、ユーザーの心理に「コーヒーと言えばスターバックス」という目に見えないブランド価値を浸透・認知させた結果です。
高品質のコーヒーが飲めるというだけでなく、居心地のよい空間でくつろぐひととき、コーヒーが飲みたいと思ったときにすぐそばにある立地環境のよさ、明るい従業員との会話など、コーヒーを通じたさまざまな体験価値と唯一無二の存在感がスターバックスの強みであり、ブランド・エクイティ(ブランドの持つ資産の集合体)と言えます。
ブランドは高価だから、デザイン性が良いから価値が高いとは限りません。より重要なことは、ブランドに込めた企業側の意図と、ユーザーや顧客が抱く企業・サービス・商品へのロイヤリティー(愛着や愛情)の一致です。企業・サービス・商品独自の資産価値を広めて認知させる活動のことを、ブランド構築(ブランディング)と言います。
アメリカ合衆国の経営学者デービッド・アーカーは「ブランドは資産」と定義し、その資産価値を構成するブランド・エクイティは「ブランド認知」「ブランド連想」「ブランドロイヤリティ」「ブランド品質」「ブランド以外の無形資産」の5つだと説明しています。ここではブランド・エクイティをベースに、企業ブランドを構築するために特に重要な3つの要素についてお伝えします。
「ブランド認知」とは、一般的に広く認知されたブランドイメージが正しく認識されているかを指します。スターバックスであれば、あの緑の看板を誰もが知っていることに加え、「キャラメルマキアートがおいしい」、「内装がおしゃれでくつろげる」というブランドイメージが認知されています。
ユーザーがブランドについて思い浮かべる一連のイメージが、「ブランド連想」です。例えば、ニトリはコスパのよいインテリア家具が手に入りますが、そのほかにもシーズンごとの雑貨や家族・友人へのプレゼントになるセンスのいい商品がたくさんあり、欲しいものが必ず見つかるという連想につながります。
企業やサービスに愛着が湧いて、リピートして購入したり継続してサービスを使い続けたりする割合が高い状態が「ブランドロイヤリティ」です。「アップル製品はUIデザインがよく使いやすい」などほかの企業にはないブランド価値を提供することで、ブランドに対しての信頼度が高い「ロイヤルカスタマー」としてファン化が見込めます。
ブランド認知はその企業が好きか嫌いかではなく、無意識のうちに認識しているブランドイメージです。そもそも自社の強みやサービスの特徴を正しく世間に広められなければ、認知されることはなくリピーターやファンは生まれません。ブランド認知→ブランド連想→ブランドロイヤリティのステップでブランドを確立するためには、「自社の見えない価値とは何か」、「競合に負けない強みは何か」などをしっかりと分析・把握することが重要です。
現代のような高度情報化社会では、インターネット上にさまざまな情報が溢れているため、他社との差別化やファンを増やすことは非常に難しいと言えるでしょう。だからこそ、BtoB、BtoCともに顧客の期待に応え、選ばれるブランドを構築することが不可欠なのです。
ブランドを認知してもらい、連想させ、最終的に高い忠誠心を持ってもらうことは、企業価値向上にもつながります。そして、企業そのもののブランド価値を向上させ、競合他社との差別化を実現することを「コーポレートブランディング」と言います。
コーポレートブランディングは、企業経営における「人、物、資金、情報」に次ぐ5番目の資源「ブランド」を戦略的に高める施策として、90年代のアメリカで広まりました。それまでコーポレートブランディングとは、商品のイメージ戦略などマーケティングの文脈で語られることが多い傾向にありましたが、現在では経営者自らがコミットする企業全体の経営戦略の一つとして、多くの企業が実践しています。
コーポレートブランディングは、企業の経営・事業活動に関わる従業員や顧客らさまざまなステークホルダーとのベストな関係構築を促す施策です。
自社の経営を盤石なものにし、持続的な成長を続けていくためには、さまざまなステークホルダーと最適なコミュニケーションを取り、ブランド価値を向上させることが重要です。
コーポレートブランディングは、ステークホルダーが抱く企業価値を高めることができ、採用にも大きな効果が期待できます。コーポレートブランディングに取り組むことで得られる3つのメリットを、以下に紹介します。
社内にブランドを浸透させること(インナーブランディング)で、従業員が自社で働くことに誇りを持ち、「この会社で働けてよかった」「自信を持って自社の製品をすすめたい」と思うようになります。従業員一人ひとりが自らキャリア形成を考え、自社の発展や人材育成に積極的になることで持続的な企業成長につながります。
コーポレートブランディングによってブランド価値が高まることで社会的な信頼性を高め、自社の提供するサービス・製品の信用度もアップします。ファンになってくれた顧客は、ポジティブに製品購入や契約更新をしてくれるようになり、まわりの企業にも自社を紹介してくれるなど、ビジネス上での優良顧客になってくれます。
求職者にとって、働く企業のイメージは重要。採用効率を上げるためにも、コーポレートブランディングによってブランド価値の向上は必須です。ただし、採用のため発信した企業イメージと、入社後の印象にギャップが生じると離職につながりやすくなるので注意しましょう。
企業側が求める人物像と求職者が働きたい企業イメージにズレが生まれないように、企業のホームページやリクルートサイトには、経営者からのメッセージ、企業理念、事業戦略など「何を基準に採用しているか」「どういう人物と一緒に働きたいか」「入社後のキャリアプランについて」など明確な情報を掲載することで、採用のミスマッチを減らすことができます。
上述したように、コーポレートブランディングとはステークホルダーとベストな関係を構築し、顧客や従業員をファン化させることです。企業が目指す姿・経営者の想い・発信したいメッセージを「言葉」として表現することで、「自分たちはこうありたい」という自社のブランドイメージをわかりやすくステークホルダーに伝えることができます。それが「言語化」です。
コーポレートブランディングのプロセスとして、①ポジショニング(位置づけ)、②コンセプトの構築(自社のあるべき姿と顧客、提供価値の明確化)、③メッセージの発信(コンセプトの発信)というフェーズがあります。
まず、ステークホルダーとの関わり、競合他社との比較など自社が市場のどの位置にいるのかをポジショニングで詳細に把握・分析します。そして、その後の②③のフェーズにおいて自社のブランドを言語化していきます。中でもコンセプト構築において根幹を成すのがミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の作成です。
MVVとは社会と従業員に発信する企業の存在意義であり、使命であり、目標です。経営学者のピーター・F・ドラッカーが提唱したMVVの定義は、以下の通りです。
どの企業にも経営者が策定した経営理念があり、実現したい目標に対して事業戦略があります。その事業を推進していくのは、企業で働く従業員たちです。企業がどこに向かって何を実現したいのかを従業員がしっかり理解して把握していないと、思うような成果を出すことはできません。
経営の考えは、社是、宣言、行動方針といった名目で掲げている企業も少なくありません。これらは創業時に策定された企業理念であることが多く、社内に浸透しにくい例が見受けられます。MVVは、企業活動の基礎となる考え方を整理し、明確で明瞭な言語に変換することで、企業で働くすべての人が同じ方向を向いて、モチベーションを維持しつつ働くことを実現する羅針盤のような役割を持っています。
ミッションは主観的、ビジョンは客観的な視点で言語化するのがポイントです。以下では、株式会社ファングリーのMVVを紹介します。
コンテンツの力で共創の機会を増やす。
国内でもっとも信頼できるコンテンツプロデュースカンパニー
私たちは、企業として果たすべきミッション、中期的なビジョンを実現するべく、
大切にしたい価値観やあるべき文化として「 FUNGRY 6Values 」を定め、遵守しています。
詳細はこちらをご覧ください→ミッション・ビジョン・バリュー|コンテンツマーケティングの戦略立案・企画・制作・運用は株式会社ファングリー
キャッチコピーは、ステークホルダーを振り向かせて惹きつける役割を持つ印象的なフレーズであり、商品やサービスの広告には欠かせない要素です。
コーポレートブランディングのキャッチコピーは、「ブランドメッセージ」と呼ばれることもあります。ブランドメッセージとは、“ファーストビューで企業のらしさ、想いを伝える”役割を持っています。“らしさ”とは、その企業が持つ独自性や個性を指します。
ここで、誰もが聞いたことがある企業のブランドメッセージの事例を紹介します。
3つのメッセージに共通していることは、「短く、わかりやすい言葉」「企業の想い、らしさを込めている」という点です。そして、ブランドメッセージでは「誰に」「何を」伝えたいのかを明確にすることが一番重要です。
「カラダにピース」は、人々の健康をサポートする企業の理念・意思を伝える言葉で構成され、「お口の恋人」は、チョコレートやアイスといった菓子商品を扱う企業であることをイメージさせます。
このように、社会やお客様との関わり方、価値観、思想を端的に伝え、「どんな会社なのか」を瞬間的に理解させる言葉がブランドメッセージです。
目に見えない自社の“らしさ”を明確に言語化するためには、ライターによるインタビューが必須です。「自社が目指す姿」を的確に捉えている企業のトップや経営陣に対して、顧客や従業員にどんなイメージを持ってほしいかをインタビューでヒアリングし、言語化していくというプロセスが必要なのです。
コーポレートブランディングには、企業が目指す姿を実現するためのさまざまな取り組みがあります。キャッチコピー、サイトリニューアル、ミッション、ビジョン、事業戦略など、これまでバラバラに見ていた施策の一つ一つをブランドという軸を定めて俯瞰することで、自社が描いていくべき未来が見えてくるはずです。
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