本記事では、ユーザーの検索体験を根底から変える新機能「Google AIモード」の基本的な使い方や、ビジネスへの深刻な影響などについて網羅的に解説しています。
「AI検索を使ってみたいが、自分のGoogleアカウントでは使えない」
「AI検索の普及で、自社サイトへのアクセスが減るのではないかと不安だ」
このようなお悩みを抱えるWeb担当者の方に向けて、今すぐ試せる設定手順と、AI時代を勝ち抜くための具体的な活用術・対策を紹介します。
この記事を読めば、Google AIモードの導入トラブルを解決し、情報収集を劇的に効率化できるようになります。さらにビジネスにおいては、検索市場の変化を脅威ではなくチャンスと捉え、競合他社に先駆けた「AIに選ばれる集客戦略」を明確に描けるようになるでしょう。
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Table of Contents
Google AIモードとは、従来の「関連するWebサイトのリンク一覧(青色で示されたリンク)」を羅列する検索体験とは根本的に異なる革新的な体験を提供するAI検索機能のことです。
ユーザーが入力した質問(クエリ)の意図をAIが深く理解し、「答えそのもの」を検索結果の最上部に文章で提示します。Googleの最新かつ最も高性能なAIモデル「Gemini」のカスタムバージョンを活用しており、複雑な文脈や質問の裏にあるニュアンスを汲み取った精度の高い回答が得られます。
出典:Google「Supercharging Search with generative AI」
Google AIモードはPCやスマホのブラウザ、あるいはGoogleアプリ(iOS/Android)で検索を行い、画面上部にある「AIモード」のタブを選択するだけで起動できます。
下図は、PCのブラウザで「AIモード」を起動し「コンテンツマーケティング」と検索した際の画面です。

大きなメリットは、ボタンひとつでAIによる要約と従来のWeb検索結果をスムーズに行き来できる点。まずはAIで全体像を把握し、気になったら通常の検索結果で深掘りするといった使い分けが可能です。
Google AIモードは日本語だけでなく、英語やスペイン語、フランス語、韓国語、インドネシア語、ヒンディー語、ポルトガル語といった世界中の言語にも対応しています。
AIモードが生成する回答は、単一のWebページからの抜粋(スニペット)ではありません。AIがユーザーの質問に関連する複数の信頼できるWeb情報を横断的に検索・統合し、それらを分かりやすく要約した「概要」として提示します。
ユーザーは従来のように複数のWebサイトを行き来して情報を断片的に集め、自ら答えを組み立てる必要がなくなります。この「情報収集にかかる手間の劇的な削減」こそが、AIモードが提供する最大の価値のひとつです。
従来の検索では複数回の操作を必要としたような「長く複雑な質問」にも、Google AIモードなら一度で回答できるように設計されています。これを実現しているのが「クエリファンアウト技術(Query Fanout Technology)」と呼ばれる機能です。
例えば、以下のような複雑な質問を一度に投げかけることができます。
Google AIモードは、この複雑な要求を「旅行プラン」「伝統工芸」「歴史的場所」「ディナー」といったサブトピックに自動で分解。それぞれを同時に検索・統合して、包括的な回答を一度で生成します。
従来、検索クエリに対する回答は、下図のようなオーガニック検索結果に並ぶ青いリンク(情報源)の一覧でした。

これに対し、Google AIモードでは検索クエリに対する回答として「AIによる回答(要約文)」がページ上部を占有します。
これは、検索結果の主役が「情報源へのリンク」から「AIによる回答そのもの」へ移行したことを示していると言えるでしょう。
Google AIモードはAIによる最初の回答が提示された後、関連する質問を続けることが可能です。
ユーザーは提示された回答内容にもとづき、まるでAIアシスタントとチャットで会話するように追加の質問を投げかけることができます。AIは直前の質問の文脈を維持したまま対話に応じるため、従来の検索では難しかった双方向的かつ深層的な情報探索ができるのです。
Google AIモードの登場は単なる検索機能のアップデートではなく、検索という行為そのものの「パラダイムシフト(劇的な変革)」を意味します。
もう少し噛み砕いて説明すると、従来の検索エンジンは「世界中の情報を整理し、関連する情報源(Webサイト)への“索引”を提供する図書館の司書」のような役割でした。一方、Google AIモードは「情報を“解釈”して要約し、“答えそのもの”を生成するリサーチアシスタント」の役割を担うと言えるでしょう。
具体的な違いについては、下表にまとめました。
| Google AIモード | 従来の検索エンジン | |
|---|---|---|
| 主な目的 | ユーザーの疑問やタスクを直接的に解決する | ユーザーが情報源(Webサイト)を発見する |
| 表示形式 | AIによる要約文 + 根拠となった引用リンク | Webサイトのリンク一覧(オーガニック検索結果) |
| 情報源 | AIが複数のWebページを統合・解釈・要約した内容 | 検索アルゴリズムが評価した個別のWebページ |
| ユーザー行動 | AIの回答を読み、ゼロクリックで完結、または対話で深掘りする | リンクをクリックし、Webサイトを回遊して情報を探す |
| 基盤技術 | 生成AI「Gemini」を基盤としたディープラーニング | PageRankに代表されるWebページのランキングアルゴリズム |
| 情報鮮度 | リアルタイムのWeb情報を検索・反映 | インデックスにもとづき、比較的新しい情報を提供 |
| 得意なこと | 具体的な「答え」を出す、複雑なタスクを処理する | 特定のサイトを探す(指名検索)、広範な選択肢を見る |
以上から分かるように、Google AIモードは情報収集のプロセスを「検索と回遊」から「質問と対話」へと変貌させるものです。これにより、ユーザーはより迅速に答えにたどり着けるようになりました。
一方でWebサイト運営者にとっては、従来のSEO(検索エンジン最適化)戦略の根本的な見直しを迫られる状況になっています。
出典:Google「3 new ways generative AI can help you search」
Google AIモードはすべて生成AIを搭載していますが、その目的と得意分野が異なります。
▼ AIモード vs Gemini vs ChatGPT 機能比較
| Google AIモード | Gemini | ChatGPT | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 検索結果の要約・情報収集 | 対話・創造・タスク実行 | 対話・創造・タスク実行 |
| リアルタイムWeb検索 | 標準搭載(必須) | 可能(Google検索と連携) | 一部可能(有料版のブラウズ機能) |
| 回答の根拠(引用) | 必ず表示される | 表示される場合がある | 表示されない(URLを要求する必要あり) |
| 得意なタスク | 最新情報をまとめる | ・アイデアを出す ・文章を書く | ・アイデアを出す ・文章を書く |
簡単に言えば、Google AIモードは「最新情報を調べる」ためのツール、GeminiやChatGPTは「創造的な作業や対話をする」ためのツールです。
▼ Geminiについては以下の記事もご覧ください。
Google AIモードの日本語版は、2025年9月9日 にGoogleから公式に発表され、同日より順次提供が開始されています。
提供開始当初は、新機能のフィードバックを収集するため、一部のGoogleアカウントに対して限定的に提供されていました。しかし、現在(2025年12月時点)は後述する利用要件を満たしている日本のほぼ全ての一般ユーザーが、この新しい検索体験を利用できる状況になっています。
なお、Google AIモードは日本市場のみならず、グローバルに展開されています。日本語版の発表と同時にインドネシア語や韓国語、ヒンディー語、ポルトガル語(ブラジル)での提供もスタート。Googleが、いかにAIによる検索変革を全世界で急速に進めているかがうかがえるでしょう。
Google AIモードへのアクセス方法は複数用意されていますが、Googleが公式に案内している主なアクセス経路は次の3つです。
なお、GoogleはこのAIモードを「検索の標準体験」と位置づけており、アカウント設定などで「Google AIモードを完全にオフにする」方法は公式に用意されていません。
ただし、技術的な回避策として、従来のWeb検索の結果を意図的に表示させる方法がいくつか存在します。
対処法1(一時的):URLパラメータの追加
もっとも確実な対処法は、検索結果を表示しているWebブラウザのURLの末尾に、特定のパラメータ「&udm=14」を追加してページを再読み込みすることです。これは「Web検索のみ」を強制するパラメータで、Google AIモードの呼び出しをバイパスすることができます。
対処法2(設定変更):Search Labsの設定画面
一部のアカウントでは、Google Search Labs の管理画面からAIモードのオン・オフを切り替えられる場合があります。
出典:SerpApi「Every Google &udm=? in the world」
ここでは、もっとも一般的であるPCとスマホでの具体的な使い方を、操作の流れに沿って解説します。
PCのWebブラウザ(Google Chromeなど)でGoogle AIモードを利用する場合は、検索結果ページから切り替える方法が一般的です。
まずPCでChromeブラウザを開き、Googleの検索ページにアクセスします。

検索窓に質問やキーワードを入力します。
検索窓の右側にある「AI モード」ボタンを押すと、Google AIモードによる回答が表示されます。

スマホでは、Googleアプリを利用するのがもっとも手軽な方法です。
まず、スマホで「Googleアプリ」を開きます。アプリのホーム画面(検索バーが表示されている画面)で、検索バーの直下(またはキーボードの上部)に AIモード と書かれた専用のアイコン(またはボタン)が表示されます。

この「AIモード」アイコンをタップすると、即座にAIモードが起動し、チャット形式の入力画面が表示されます。ここに質問を入力するだけで、AIとの対話型検索が開始します。

AIモードの真価は、テキスト入力だけに留まりません。音声や画像といった異なる形式の情報を組み合わせて検索できる「マルチモーダル検索」に対応している点が、非常に強力です。

音声入力での質問
検索窓横のマイクアイコンをタップすれば、キーボードで文字を打つ代わりに、口頭でAIに直接質問を投げかけることができます。
画像を使用して質問
Google AIモードの入力画面で「画像をアップロード」から画像をアップロードすれば、テキストと画像を同時に使った質問が可能です。
Googleが公式に紹介しているマルチモーダル検索の例として、海外旅行中の利用シーンが挙げられます。
レストランで、読めない言語のメニューをスマートフォンのカメラで撮影します。その画像をGoogle AIモードにアップロードし、テキストで「このメニューが何かわからないんだけど、どれがベジタリアン向けか教えて」と質問。
AIは、Googleレンズの技術で画像内のメニューテキストを認識・翻訳し、同時に「ベジタリアン向け」というテキストの要求を理解します。その結果、「○○という料理がベジタリアン向けです」と、具体的な料理名を推薦してくれるのです。
このように、現実世界の情報(画像)と、ユーザーの具体的な要求(テキスト)を組み合わせて答えを導き出せる点が、AIモードの革新的な活用法と言えるでしょう。
「Google AIモードが自分のアカウントでは表示されない」といった現象が、一定のユーザーにおいて発生しています。
Google AIモードが使えない原因は、アカウント設定の問題や利用環境、Google側の提供ステータスなど多岐にわたります。原因はひとつではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているケースも少なくありません。
自身の状況がどれに当てはまるか、以下のチェックリストでまず確認してください。
▼ Google AIモードが使えない原因別トラブルシューティング・チェックリスト
| カテゴリ | 主な原因 | 確認すべき場所 | 対処法 | 主な対象ユーザー |
|---|---|---|---|---|
| アカウント設定 | 18歳未満の年齢制限 | Googleアカウントの生年月日設定 | ・年齢確認の完了 ・(18歳未満の場合)18歳になるのを待つ | 個人 |
| Family Linkによる制限 | 保護者の「ファミリー リンク」アプリ | 保護者によるAI機能のアクセス許可 | 個人 | |
| Workspaceアカウントの制限 | Google管理コンソール(管理者) | 組織のIT管理者に相談 | 法人・学校 | |
| 利用環境 | アプリ・ブラウザのバージョンが古い | App Store / Google Play ストア | Googleアプリ / Chromeを最新版にアップデート | 全員 |
| シークレットモードの使用 | ブラウザの設定 | 通常モード(プライベートブラウジングをオフ)で試す | 全員 | |
| JavaScriptが無効 | ブラウザの設定 | JavaScriptを有効にする | 全員 | |
| 提供ステータス | ロールアウト(順次展開)の対象外 | – | 「待つ」、または別のアカウントで試す | 全員 |
以下で、各原因を詳細に掘り下げて解説します。
AIモードが利用できないもっとも一般的かつ見落とされがちな原因は、Googleアカウントの設定にあります。
Google AIモードを含む多くの生成AI機能には、厳格な年齢制限が設けられています。Googleアカウントに登録されている生年月日の情報にもとづき、18歳未満のユーザーはGoogle AIモードの利用が制限されます。これは、AIが生成する内容の安全性を担保するための措置です。
対処法
アカウントの年齢設定を確認してください。もし18歳以上にもかかわらず誤った設定になっている場合は、年齢確認プロセスを完了させる必要があります。
18歳未満(多くの場合は13歳未満)のユーザーアカウントが、「Family Link」によって保護者に管理されている場合、Google AIモードへのアクセスはデフォルトでオフになっています。
対処法
保護者が自身の「Google ファミリー リンク」アプリから、対象者(子ども)のアカウントに対しAI機能へのアクセスを個別に許可する設定が必要です。
個人のGmailアカウント(@gmail.com)ではなく、会社や学校から支給されたGoogle Workspaceアカウント(@company.com や @school.ac.jp など)を利用している場合、Google AIモードが使えないケースがあります。これは管理者(会社や学校)が意図的に使用を制限している可能性が高いでしょう。情報漏洩のリスク管理や、教育現場でのAIによる安易な課題作成の防止といった目的が考えられます。
対処法
ユーザー(従業員・学生)側でできる対処法はありません。組織のIT管理部門に、Gogole AI機能の利用の可否について確認してください。プライベートで利用したい場合は、個人のGmailアカウントに切り替えて試す必要があります。
アカウント設定に問題がない場合、次に確認したいのは利用環境です。
アカウント設定に問題がない場合、次に疑うべきは利用しているソフトウェアのバージョンです。Google AIモードは比較的新しい機能であるため、古いバージョンのアプリやブラウザでは対応していない可能性があります。
対処法(スマートフォン)
App Store(iPhone)または Google Play ストア(Android)を開き、「Google」アプリや「Chrome」アプリが最新版になっているかを確認してください。アップデートが保留になっている場合は、すべて最新版に更新しましょう。
対処法(PC)
Google Chromeブラウザの右上メニューから「設定」→「Chromeについて」を開き、ブラウザが最新バージョンであるかを確認し更新してください。
シークレットモードやプライベートブラウジングといったモードでは、パーソナライズ機能や履歴が制限されます。
そのため、Google AIモードが正常に動作しない、または表示されない場合があります。
対処法
シークレットモードやプライベートブラウジングを解除し、通常モードで試してみましょう。
Google AIモードは、JavaScriptというプログラミング言語を使用して動作しています。ブラウザの設定でJavaScriptが無効になっていると利用できません。
対処法
ブラウザの設定を確認し、JavaScriptを有効にしてください。
ここまでに紹介した原因1・2を確認し、問題がないにもかかわらずGoogle AIモードが表示されないケースもあり得ます。その場合の原因としては、Google側による機能の段階的な提供(ロールアウト)の対象に、あなたのアカウントがまだ含まれていない可能性が考えられます。
Googleは新機能を提供する際、全ユーザーに一斉に提供するのではなく、サーバーの負荷分散のため、あるいは問題発生時の影響範囲を最小限に抑えるため、段階的に対象者を広げていきます。
対処法
この場合、残念ながらユーザー側でできることは「待つ」以外にありませんが、現在ログインしているGoogleアカウントから一度ログアウトし、別のアカウントでログインし直すとGoogle AIモードが利用できる場合があります。ただしこれは、Googleアカウントを複数持っていることが前提となります。
Google AIモードは非常に強力なツールですが、その回答の質(精度や有用性)はユーザーの質問の仕方(プロンプト)によって劇的に変化します。単にキーワードを投げ込むだけでは、AIの能力を最大限に引き出すことはできません。AIは「指示されたこと」しか実行できないため、いかに「賢く指示するか」が重要です。
ここでは、より精度の高い回答をGoogle AIモードから引き出すための質問のコツを、具体的な悪い例と良い例を挙げて紹介します。
AIに、特定の専門家としての役割(ペルソナ)を与えてから質問します。回答の視点や専門性、トーン(口調)を固定化させることで、回答の質を高めやすくなります。
悪い例
ミステリー小説を書いて
上記のようなプロンプトでは、AIはどのようなスタイルやレベル、長さの小説を求めているか判断できません。
良い例
あなたはプロのミステリー小説家です。以下の条件から、読者を引き込むような衝撃の展開がある短編小説(約1000文字)を執筆してください。
# 条件:
– 舞台は現代の東京
– 主人公は探偵ではなく普通の会社員
– 結末は必ず読者を驚かせること
AIは、背景や目的を推測することが苦手です。あなたが「誰で」「何を目的として」「どのような形式の回答を」求めているのかを示しましょう。
このような前提条件や文脈を具体的に提示することで、AIの「推測」を排除し、あなたの意図に沿った回答を引き出すことができます。
悪い例
LLMO対策を教えて
上記のようなプロンプトでは、対策のレベル(初心者向けか専門家向けか)や目的(ECサイトかブログか)、何を知りたいのかが不明瞭です。
良い例
# 前提条件:
私は中小企業のECサイト運営担当者で、SEOの知識は基礎レベルです。
# 目的:
Google AIモードの回答に、自社の商品が引用・推奨されるようにしたいです。
# タスク:
AIに引用されやすくするための具体的なコンテンツ戦略(LLMO)を、初心者にも分かるように、今すぐ実行できる5つのステップで説明してください。
Google AIモードは情報収集を劇的に効率化する一方で、生成AIという技術の特性上、無視できないリスクも内包しています。AIを盲信するのではなく、その特性を理解し、賢く付き合うための「リスク回避策」をセットで理解することが、AI時代のリテラシーとして不可欠です。
Google AIモードが生成する回答には、事実にもとづかない「もっともらしい嘘」が含まれる可能性があることを、常に念頭に置く必要があります。
AIは文脈的にそれらしい単語を並べることは得意ですが、その内容が正確かどうかを「理解」しているわけではありません。
とくに医療や金融、法律といった個人の生活や財産に重大な影響を与える領域(YMYL:Your Money Your Life)の情報について、AIの回答を鵜呑みにすることは極めて危険です。
必ず、出典元(引用リンク)でファクトチェックを実施しましょう。Google AIモードの回答には、その情報を生成する根拠となったWebサイトへのリンク(引用元)が表示されます。AIの回答を読んだら、必ずその引用元リンク先のWebサイトを訪問し、AIの要約内容と元の情報が一致しているか「裏付け」を取る習慣をつけてください。
また、固有名詞や数字はダブルチェックを習慣化しましょう。AIの回答に含まれる人名や会社名などの固有名詞、日付や金額、統計データなどの数字は、ハルシネーションがとくに起きやすい情報です。これらの情報が出てきたら、Googleの通常検索で再検索し、事実関係をダブルチェックする癖をつけることが重要です。
出典:EFF「AI ハルシネーションと偽情報のリスクについて(英語)」
▼ YMYLについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼ ファクトチェックについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
Google AIモードでは、「以前の会話の文脈を理解する」「ユーザーの好みに合わせて回答を調整する」といった高度なパーソナライズ機能を提供しています。なぜなら、ユーザーの「Webとアプリのアクティビティ」がオンになっており、過去の検索履歴や対話履歴をAIが学習しているためです。
これは、「利便性」と「プライバシー」のトレードオフであることを理解する必要があります。
AIに過去の対話履歴を学習させることで、回答の精度は向上します。そのデータ(あなたがこれまでAIに何を質問したか)は、Googleのサーバーに保存され、活用されることになります。
大前提として、Google AIモードに会社の機密情報、業務上の顧客データ、個人のプライベートな医療情報などは入力しないでください。入力されたデータはAIの学習に使われる可能性があり、情報漏洩のリスクとなり得ます。
Googleは、ユーザーが自身のデータを管理する手段を提供しています。Googleの「マイ アクティビティ」にアクセスすることで、過去の対話履歴を一覧で確認することが可能です。プライバシー上懸念のある履歴やAIに学習させたくない対話履歴は、削除しておきましょう。
また、アクティビティが一定期間(例: 3ヶ月)経過後に自動で削除されるように設定することも、プライバシーを保護する上で有効な手段です。
Google AIモードの普及は、単なるユーザー体験の変化に留まりません。Webサイトを通じて集客やビジネスを行うすべての企業にとって、従来のWebマーケティング(SEO)のルールを根本から覆す「地殻変動」ともいえる影響をもたらします。
最大かつもっとも直接的な影響と言えるのが、「ゼロクリック検索」の急増です。Google AIモードが検索結果の最上部で「完璧な答え」や「優れた要約」を提示すると、ユーザーはAIの回答を読んだだけで満足し、その下にある従来のWebサイトのリンクをクリックする必要がなくなります。
実際に、海外では「AIによる概要(旧:SGE)」が導入された後、一部のニュースサイトや情報サイトではオーガニックトラフィック(検索流入)が大幅に減少したという報告も出ています。
出典:PressGazatte「AI Overviews cutting publisher clickthrough rates by 50%, new report finds」
多くの企業がコストをかけて検索上位表示を実現し、それがWebサイトへの安定した集客の基盤となってきました。しかし、Google AIモードの普及が進めば、オーガニック検索からの流入は激減する恐れがあります。
この「ゼロクリック時代」においては、Web戦略の根本的な転換が求められます。
これまでは、検索エンジン(クローラー)に評価され、検索結果で「上位に表示される」ことを目指す SEO (Search Engine Optimization:検索エンジン最適化) が主流でした。
しかし今後は検索エンジンではなく、AI(大規模言語モデル)に「回答の根拠」として引用され、推奨されるコンテンツを目指す戦略(LLMO/AIO)への移行が不可欠となります。もはや「検索順位」は重要ではなく、「AIに引用されるか否か」がビジネスの明暗を分ける時代が始まろうとしているのです。
では、具体的にどうすればAIに引用されやすくなるのでしょうか。この戦略は、AIがコンテンツを「発見」して「理解」し、「推奨」するまでのプロセス全体に介入し、最終的に「コンバージョン」につなげるための体系的なアプローチです。
▼ AIに引用・推奨されるためのLLMO/AIO戦略 4フェーズ
| フェーズ | 戦略 | 主な施策 |
|---|---|---|
| AIに発見してもらう | AIクローラーに、数ある候補の中から自社サイトを優先的に読み込ませる | ・XMLサイトマップの最適化(情報の新しさと網羅性をAIに迅速に伝達) ・権威性の明示(タイトルに「公式サイト」「最新情報」などと明記) ・内部リンク構造の最適化 |
| AIに理解してもらう | AIがコンテンツの価値ある部分を効率よく解釈(パース)できるよう支援する | ・構造化データ(FAQPageスキーマ、Articleスキーマなど)の適切な活用 ・結論ファーストの簡潔な記述(AIが引用しやすい形にする) ・箇条書きや表形式を用いたエッセンスの整理 ・平易な言葉で、AIが解釈しやすい自然な文章を心がける |
| AIに推奨してもらう | AIに「最も信頼でき、推奨に足る情報源」と総合的に判断させる | ・E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の徹底 ・専門家による監修体制や、監修者情報の明記 ・客観的な数値データや引用元の明確な提示・一次情報(独自調査、独自インタビュー)の提供 ・第三者の権威あるサイトからの言及(被リンク・サイテーション)の獲得 |
| AIからの推奨をCVにつなげる | AIの推奨によって流入したユーザーの期待値とのギャップをなくし、CVRを最大化する | ・AIが自社を「どのような文脈で」推奨しているか分析・AIの推奨内容(例:「A社は初心者に最適」)と、サイト流入後のLP(ランディングページ)の訴求内容を完全に一致させる |
ゼロクリック検索によってオーガニック流入が減少する一方で、Google AIモードによる回答内に表示される広告は、Googleの主要な収益源として今後さらに拡張されると予想されます。
なお、2025年12月時点でアメリカではGoogle AIモード内の広告表示が試験的に開始していますが、日本では開始されていません。
これは、ユーザーが購入したい具体的な商品やサービスを決める前、すなわち検索行動の上流(検討段階)にいる潜在層・準顕在層にリーチできる新しい広告枠となります。この領域でのプレゼンスを高めるためには、広告クリエイティブの最適化と、自社ブランド名での「指名検索」を増やすブランド認知活動が、マーケティング戦略としてより一層重要になると考えられます。
Google AIモードの進化は、単なる「検索の要約」には留まりません。Googleの最終的な目標は、従来の「情報検索エンジン」から、ユーザーのタスクや生活そのものを実行する「生活実行プラットフォーム」へと変貌することにあると考察されます。
その兆候として、以下のような機能の拡張が予測・テストされています。
AIエージェント機能(Project Mariner)
ユーザーに情報を提供するだけでなく、ユーザーに代わって「タスクを実行する」AIエージェント機能への進化です。例えば、「12/12(金)19時に渋谷で2名、予算1人5,000円でイタリアンを予約して」と指示するだけで予約まで完了できます。AIが複数の予約サイトを横断的に検索して最適な選択肢を提示し、そのまま予約まで代行してくれるような機能が想定されています。
Deep Search(ディープサーチ)
一度の検索では答えが出ない、より複雑な調査(リサーチ)を行うための「Deep Search」機能の統合も進んでいます。特定のトピックについてAIが深く掘り下げ、多角的な視点から詳細なレポートを生成する機能です。
Search Live(リアルタイム検索)
カメラや音声を使ったリアルタイム検索機能もテストされており、現実世界とデジタル情報がよりシームレスに融合していくと予想されます。
こうした進化は、ビジネスのあり方にも影響を与えるでしょう。今後は、自社のサービスがGoogleのAIエージェントに「予約可能な対象」として認識される必要があります。
さらに、パートナーとしてシステム統合されることが、デジタルマーケティングの新たな重要課題となると考えられます。
Google AIモードに関するよくある質問をまとめました。
Google AIモードは、日本語の他にも、英語、スペイン語、フランス語、韓国語、インドネシア語、ヒンディー語、ポルトガル語など、多数の言語に対応しています。
詳しくは、記事内の「Google AIモードとは?AIを活用した革新的な検索体験」をご覧ください。
Google AIモードは「最新情報を検索する」ためのツール、GeminiやChatGPTは「創造的な作業や対話をする」ためのツールです。
詳しくは、記事内の「Google AIモードとほかの生成AIツールの違い」で解説しています。
アカウント設定などで、Google AIモードを完全にオフにする方法は公式に用意されていません。ただし、技術的な回避策として、URLパラメータを追加したり「Google Search Labs」の管理画面からオフにしたりすることで無効にすることが可能な場合があります。
詳しくは、記事内の「Google AIモードの基本的な使い方【PC・スマホ別図解】」をご覧ください。
Googleアカウントに登録されている生年月日が18歳未満の場合、AIモードの利用が制限されることがあります。また、保護者が「ファミリー リンク」アプリを使っている場合、保護者の設定によっても利用が制限されます。
詳しくは、記事内の「Google AIモードが使えない主な原因と対処法」を参照してください。
Google AIモードの登場は、私たちと情報の関わり方を「検索して探す」から「対話して解決する」へと根本的に変える大きな転換点です。
「使い方が分からない」「表示されない」といった導入の壁や、ビジネスにおける「検索流入の減少」という不安はあるかもしれません。しかし、この技術を単なるツールとして捉えるのではなく、情報の真偽を見極めるリテラシーや、AIに選ばれるための新たな戦略(LLMO)とセットで理解することが重要です。そうすれば、Google AIモードはあなたの生活やビジネスを加速させる強力な武器になるでしょう。
また、マーケティング・SEO担当者にとってAIモードの登場は、オーガニックトラフィック減少を招く「脅威」です。しかしそれと同時に、新しいルールのもとで他社に先んじる「絶好の機会」でもあります。
もはや、従来のSEOの常識は通用しません。ただ検索順位を追うのではなく、「AIに引用され、推奨される」ためのLLMO/AIO戦略に取り組むことが急務です。
AIとユーザーの両方から信頼される高品質なコンテンツ(E-E-A-T)を提供し、AIが理解しやすい形(構造化データ、結論ファースト)に最適化することこそが、AI時代の競争優位性を確保する唯一の道と言えるでしょう。
執筆者
生成AIエンジニア / Webマーケティング・生成AI講師
シバッタマン(柴田義彦)
Webマーケティング講師 兼 生成AIエンジニアとして、GA4×BigQueryで計測設計と分析基盤を構築します。研修と伴走で自走化を促進し、広告・SEO・CRMを成果につなげます。