Webサイト制作のプロジェクトを成功させるには、Web制作会社へ依頼する前の事前準備がとても重要です。その内容は、サイトの方向性やサイトを通して伝えたいこと、プロジェクト進行のルール、使用する写真やロゴといった素材などさまざま。これらの準備が不十分だと、価値のあるサイトをスムーズに制作することは難しいでしょう。
例えば、Web制作会社へ提供する情報の準備が不十分な状態で、「なんとなくスタイリッシュでイマドキなサイトにしたい」とWeb制作会社へ依頼をしたとします。このようなケースでは、デザインはカッコいいけど全く成果が上がらないといった残念な結果になることも少なくありません。このように、準備不足はサイトのクオリティや成果に大きく関係するため軽視できないポイントです。
そのような事態を避けるために、この記事では、発注者がWebサイト制作会社へ依頼する前に準備すべき4つのポイントについて解説します。Webの専門的な知識がなくてもできることはたくさんありますので、Webサイト制作やリニューアル担当者に抜擢されて不安に感じている方もぜひ最後まで読んでみてください。
Table of Contents
Webサイト制作会社へ依頼する準備の前に、まずはWebサイト制作やリニューアルにおける重要な考え方についてご紹介します。
まず大前提として、Webサイト制作やリニューアルは自社の重大プロジェクトという意識を持つことです。Webサイトは、注文すれば完成したものが納品されるわけではありません。発注者にWeb制作会社が伴走する格好で進行するものと考える必要があります。
例えば「自社サービスの特徴」「なぜ自社がそのサービスを提供するのか」「どんなお客様に利用してほしいのか」などの情報は、Web制作会社が分析するよりも依頼者自身が精度の高い情報を持っているはずです。そういった情報をどのくらいの粒度で制作会社に提供できるかがWebサイト制作プロジェクトの成功のカギを握ります。
Webサイト制作が進行していく中で、やりたいことが次々と発生してしまう場合があります。
分かりやすい例でいうと「デザイン」です。一般的にWebサイトのデザインは、ターゲットや自社ブランドから掘り下げていくのですが「ここはもっと動きをつけてほしい」や「見出しは変わったフォントを使ってほしい」など、多くの要望が生まれることがあります。
そして、強いこだわりを無理に反映させた結果、完成したWebサイトがターゲットに刺さらないということはありがちな例です。Web制作会社へデザインの希望を出す際は、その理由もセットにして伝えることで、プロのWebデザイナーが最適な提案をしてくれるでしょう。
Webサイトは公開がゴールではなく、その後の運用を続けることが大切。実際に運用してみると想定と違う部分があるかもしれませんし、コンテンツの見せ方やデザインはトレンド要素が高いため定期的な改善が必要です。
また、お問い合わせの増加を目標としてサイトリニューアルしても、基本的にすぐに効果は表れません。Web担当者として、効果測定、コンテンツやターゲットの見直し、改善を繰り返しながら、Webサイトを育てることが求められます。
まず明確にしたいことは、制作の軸になる「Webサイトを制作(リニューアル)する目的」についてです。
「Webサイトで何をしたいのか」という目的が曖昧だと着地点が不明瞭になり、Webサイト制作が成功したのか失敗したのかさえ判断できなくなることもあります。
「お問い合わせの獲得」「ブランディング」「認知拡大」「求人への応募」などWebサイト制作の目的は企業によってさまざまでしょう。「お問い合わせや資料請求を増やして見込み顧客を獲得したい」「自社の魅力を求職者へアピールして採用を強化したい」など具体的にWebサイト制作の目的を考えておくことが大切です。
また、Webサイト制作によって自社が抱える課題にアプローチできる可能性があるため、解決したい課題や問題点も合わせて明確にすることも効果的といえます。この課題や問題点は、Webサイト運用に関わることだけでなく、ビジネス的な領域でも構いません。
自社のターゲットをより具体的に想定することも重要なポイントです。
ターゲットに狙い通りのアクションを起こしてもらうには、そのアクションを起こしたくなるWebサイトにしなければいけません。そのため「部署」「役職」「年齢」など、ターゲットの属性によって最適なWebサイトの設計を行う必要があります。
もちろん、Web制作会社側も市場調査や競合分析を通してターゲット像を設定しますが、自社のターゲットに最も詳しいのは依頼者です。ターゲット像を明確にして制作会社へ伝えることが、より精度の高いWebサイト制作につながります。
Webサイトを通してターゲットと関係性を築くには、競合他社との差別化を図る必要があります。
まずは自社ソリューションの強みをできるだけたくさん洗い出しましょう。強みが競合他社のソリューションにも当てはまるケースは、「なぜ自社がそのサービスを提供するのか」まで深掘りするのがポイントです。自社サービスにかける想いやサービスを通して実現したいことなどが明確になれば「ターゲットに伝えたいこと」が見えてきます。
自社そのものや事業、サービスを文章化したり視覚化したりする作業は、企業の活動を見つめ直す良い機会です。この機会に部門の垣根を越えて自社の強みをまとめてみるのも良いかもしれません。
競合他社の情報はWebサイトの差別化を図るうえで欠かせません。特にBtoB企業は、競合他社と同じようなWebサイトを作ってもターゲットの関心を獲得することは難しいでしょう。
競合他社と一口にいっても、業界をリードする企業から自社と同程度の企業までその規模はさまざま。中には特徴が自社と類似している企業もあるでしょう。競合を分析する際は、自社と競合のジャンルやポジションを意識して細かく分析することが大切です。
また、競合他社がターゲットに対してどのようなアプローチをしているかなどを分析し、自社に足りていないことがあれば取り入れることも検討したいところ。そのうえで、「③自社の強み(会社・事業・サービス・商品)について」を参考にして、自社の色を出す方法を制作会社とじっくり考えましょう。
Webサイト制作(リニューアル)プロジェクトが長期化すると、当初予定していなかった費用が発生したり、リニューアルプロジェクトの目的やゴールの軸がぶれてしまったりすることが少なくありません。円滑にプロジェクトを進行させるには、制作会社とのスムーズなやり取りが不可欠です。そのために必要なプロジェクト進行のルールに関する準備について解説します。
まずは発注側の担当者(窓口)を明確にしましょう。同じ議題で複数の担当者が発議すると、その分コミュニケーションが発生するためとても非効率です。Web担当者が社内で出た意見を取りまとめ、発注側の総意として制作会社へ伝えるとスムーズにプロジェクトを進められます。
しかし、中には決裁者とWeb制作会社の意見伝達係になってしまう担当者がいます。決裁者が制作の中身を把握したうえで意見を出しているのであれば制作進行上問題ありませんが、そうではないケースが多いです。そのような場合は「どのように社内に伝えたのか」を合わせてWeb制作会社に相談しましょう。そこで発注者の意見をまとめられない場合はWeb制作会社に問題がある恐れがあります。
プロジェクトが発足する前に、どのようなルートで決済をとるべきかを必ず確認しておきましょう。また、Webサイト制作は「要件定義」「デザイン」「コンテンツ制作」などの複数のフェーズで構成されているため、この各フェーズで決済をとるようにするのがオススメです。
発注者側の意思決定フローが曖昧だと、頻繁に決定事項が振り出しに戻ってしまいプロジェクトが長期化することがあります。もし、制作における最終フェーズの構築(コーディング・CMS構築)が完了後に決裁者の一声でこれまでのやり取りがすべて覆ると、追加費用が発生する恐れも。そのため、意思決定フローを明確にし、意思決定権を持つ人物との密なコミュニケーションを心掛けましょう。
Webサイト制作で重要な要素の一つにスケジュール管理および課題管理があります。事前に納期のリミットを決めておき、Web制作会社と相談しながら納期から逆算してスケジュールを組むと良いでしょう。
公開時期に明確な目標がないと、コミュニケーションのテンポが悪くなり、案件が長期化するケースがあります。Web制作会社によっては、やむを得ない場合を除いて定めた期間を超過すると追加で費用が発生する恐れがあることは覚えておきましょう。
ただし、Webサイト制作はプロジェクト発足から3~4カ月が納品の目安です。そのため、Web制作会社へ依頼する際は、準備段階から余裕を持って進めることが大切。公開時期が決まっており期間が短い場合は、Web制作会社に問い合わせた段階で必ず伝えましょう。人員を増員して納期を早めるなどの提案をしてくれる可能性があります。
また、スケジュールが遅延する原因の一つに、タスクの把握不足が挙げられます。自社のタスクが把握できていないと、タスクがさばききれずに結果として希望の納期に間に合わないケースも。一般的に制作会社は、フェーズごとにタスクとその担当者をスケジュールに落とし込んだ、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)を作成してくれるので、しっかりとタスクを確認しましょう。
次に、サイト内に使用する素材についてです。素材類は見積もりにも関わる要素が多いので要チェックです。
Webサイト内で写真素材を使用する場合は、フリー素材で賄うのか、カメラマンに依頼して写真撮影を行うのかを決めましょう。
SaaS系企業などはカメラマンが撮影するケースは少ないと思いますが、現場にてサービス提供を行うビジネスでは、プロのカメラマンによる写真撮影を実施することをオススメします。フリー素材では質素に見えてしまうことがあるためです。
また、社内で使えそうな写真素材を集めておき、制作会社へ提供するのもオススメ。同じデザインでも写真素材のクオリティでWebサイトの見栄えは各段に向上するので、理想の完成形を見据えて写真素材の準備を行いましょう。
意外と忘れがちなのが企業ロゴのデザインデータです。必ず編集可能な形式のデータを制作会社へご支給ください。PNGやJPGといった画像形式では画質が悪くなることがあるため、画質が損なわれないAIやEPSなどのベクターデータを用意しましょう。
また、企業ロゴのレギュレーションがある場合はデータとあわせて支給しましょう。ここでいうレギュレーションとは、ロゴやロゴの背景に敷いて良いカラー、周りの余白など、ロゴの使い方を定めたものです。制作会社のデザイナーはロゴを扱う時にレギュレーションがあると作業がしやすいため、効率的に制作を進めることができます。
デザインのイメージや希望がある場合は、参考サイトを提示するとWeb制作会社もイメージがしやすくなります。参考サイトは、「完成形に近いイメージ」と「自社には合わなそうなイメージ」ごとに、それぞれ2~3案ずつピックアップすると良いでしょう。
ただし、「かっこいい」「すごい」「なんかいい」という印象だけで参考サイトを集めてしまうと失敗につながる恐れがあります。好みからデザインを考えた結果、Webサイト制作の目的を見失ってしまうケースも少なくありません。Webサイトは見た目も大事ですが、最も重要なのは自社の課題解決や目標達成という目的であることを忘れずに取り組むことが重要です。
最後は、開発や公開後の運用時に必要な情報です。これらは情報の詳細度が成果物に影響せず、制作会社も必ず確認するため、確認が難しい場合は無理に準備する必要はありません。ただし、これらの準備によってプロジェクトがスムーズに進行するので、どんな情報が必要なのかを把握してくと良いでしょう。
サイトを構築する際は基本的にテスト環境を利用します。制作会社によっては発注者側でテスト環境を用意することを前提としていることがあるので、事前に確認しておくと安心です。
必要な情報としては以下が挙げられます。情報を管理しているのが別部署であったり、元々付き合いのある制作会社だったりする場合は開示してもらいましょう。
一般的なレンタルサーバーを利用している場合を想定して、それぞれ必要な理由を簡単に解説します。
WordPressなどのCMSでWebサイトを構築する際は、サーバー上で設定されているPHPのバージョンを確認する必要があります。WordPressなどのCMSにもバージョンがあり、更新を繰り返しているため、PHPのバージョンと合わなければ正常に動作しない恐れがあります。その他、MySQLの確認や、DNS設定の確認などでサーバー情報が必要になってきますが、テクニカルな内容のため当記事では割愛します。
基本的にサーバー情報とセットで制作会社に伝えましょう。Webサイトリニューアルの場合、既存のドメインを使用するのか、新しいドメインを取得するのかは発注者側で判断します。使用しているドメインが独自ドメインではないなどの特殊なケースを除いては、Webサイトリニューアルでは既存のドメインを継続利用するのがオススメです。安易にドメインを変更してしまうと、検索エンジンにおける評価だけでなくユーザー体験にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
FTP情報は、Web制作会社が新サイトのデータをサーバー上にアップロードするために必要です。FTP情報が何を指すのか分からない場合は、レンタルサーバー会社から契約時に送られてきたメールを確認するか、情報システム部など専門部署の担当者に確認してみましょう。
Googleが無料で提供する「Googleサーチコンソール」「Googleアナリティクス」など、運用時に必要なツールについてです。
Googleサーチコンソール(GSC)は、Webサイトの管理ツールになります。自社サイトへ訪問する際にユーザーが入力した検索キーワード、ページ内のエラー、コンテンツがGoogleに認識されているかなどを確認できます。WebサイトのSEO対策には必須のツールです。
Googleアナリティクス(GA)は、Webサイトのアクセス解析ツールになります。Googleアナリティクスを使うことで、自社サイトを最も訪れている年齢層や性別、ユーザーの訪問経路、集客に最も貢献しているコンテンツなどを知ることが可能です。また、離脱や直帰の多いコンテンツを発見できるなど、サイトの問題点を見つけることにも役立ちます。
これらのツールは、タグと呼ばれるソースコードをサイト内の所定の箇所に埋め込むことによって計測ができるようになります。公開と同時に計測が始められるように解析ツールの埋め込みタグを準備しましょう。
ここまで、Webサイト制作において発注側が準備すべき4つのポイントを解説してきました。
Webサイト制作やリニューアルは企業にとって重大プロジェクトの一つです。これら事前準備によって、最終成果物の質やプロジェクトの進行は大きく左右されます。つまり、担当者の立ち回りがプロジェクト成功のカギといっても過言ではありません。サイト制作やリニューアルの担当を任されたら、まずは落ち着いて事前準備を整えることからスタートしましょう。
私が所属するファングリーは、制作支援とマーケティング支援の機能を併せ持つ支援会社です。とりわけ「BtoB向けのコンテンツ制作」に強みを持った制作会社と自分たちを位置付けており、ブランディングを軸としたサイト制作・コンテンツ制作を通じてお客様のビジネス課題の解決に取り組んでいます。
長年企業のブランディング支援を行ってきたノウハウを生かし、コーポレートサイト、サービスサイト、採用サイト、LPの制作はもちろん、CIやVI(MVV・ロゴ・ブランドメッセージ・タグライン・動画・ブランドブックなど)の開発から企業パンフレット、ホワイトペーパーといったクリエイティブツールの制作までワンストップでご提供します。
「【会社案内】+Web制作事例集(2023年度版)」をご用意していますので、サイトリニューアル等Web制作を検討されている方はぜひ、参考にしてみてください。
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