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Interview

# 6

マーケティング戦略のコンセプトは「コンテンツとコードへの集中投資」小さなチームが勝てる方法を徹底して実践する

株式会社Cone

代表取締役

佐藤 立樹(さとう・りき)

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コンテンツプロデュースカンパニーを標榜する株式会社ファングリーの松岡でございます。

今回は、「資料作成代行サービス」を軸にBtoBマーケティング領域で存在感を放つ、株式会社Coneの代表・佐藤立樹さんをゲストにお迎えして「コンテンツ界隈ここだけ話」を掘り下げていきたいと思います。

6期目を迎えた今年4月にコーポレートブランドをリニューアルし、より大きなビジネス価値の創出を見据える一方で、「会社は大きくしたくない」と話す佐藤さん。どのようにビジネス価値を高めようとしているのか、そしてなぜ「小さなチーム」にこだわるのか――。その真意を伺いました。

佐藤 立樹(さとう・りき)

株式会社Cone

代表取締役

佐藤 立樹(さとう・りき)

立命館大学を卒業後、2019年にクリエイティブ制作会社の株式会社Coneを設立。資料作成代行サービス「c-slide」、記事作成代行サービス「c-blog」、BtoBサイトテーマ販売「c-web」などのBPO事業を展開し、BPOサービス比較サイト「b-pos」の運営やタスク実行ツール「formwork」の開発・提供を行う。自社メディアにおいてコンテンツマーケティング、コンテンツセールスに関する情報を発信中。

自社の取るべきポジショニングに気づけたのは大きかった

──インタビューのお時間をいただきありがとうございます。私が役員を兼任しているブランディングテクノロジーとの提携リリースは拝見しておりました。

ありがとうございます!昨年、ブランディングテクノロジーさんと業務提携をさせていただきまして。実は御社のオフィスにも行ったことがあるんです(笑)。

──御社のメディアに掲載されている事例記事、写真の背景はうちのオフィスでしたね(笑)。本日は大阪と東京をオンラインでおつなぎし、いろいろお話をお聞きできればと思います。

はい、よろしくお願いいたします!

──早速ですが、佐藤さんのこれまでと株式会社Cone設立の経緯、そしてどんな事業展開をされているのかについて簡単に教えていただけますか?

2019年3月に立命館大学を卒業して、その1ヶ月後に株式会社Coneを設立しました。経緯としては……とにかく就職活動が嫌過ぎましたね(笑)。まあそれが一番なのですが、当時特に仲良くしていたエンジニアの友人と一緒に働きたいと思って起業した、というのもあります。

──「こういうビジネスをしたい」という着想はあったのでしょうか?

プランは特にありませんでしたね。最初は、主にWebサイトや動画の制作をしていました。2019年から株式会社Coneがスタートして、2年くらいは頑張ったと思います。

──なるほど、資料作成代行サービスは祖業ではないんですね?

はい。副業で資料作成サービスをやっていた高校時代の友人がうちに入ってきたんです。彼と仕事をするうちに資料作成のノウハウや提案のアプローチがつかめてきたこともあり、本格的に資料作成代行サービスを始めるに至りました。それが2021年くらいです。

──その高校時代の友人のジョイン、すごいターニングポイントですね(笑)。

Webサイトや動画の制作をしていたときは、正直勝てないと思っていました。だって、世の中にはめちゃくちゃ強い制作会社や広告代理店がたくさんありますから。そこと勝負して、何も持たない後発の自分たちが勝てるはずないじゃないですか。新米の漫画家が、ドラゴンボールを超える少年バトルマンガを描こうとしているみたいなもので。

──大手などの先発企業に勝つためには、ゲリラ戦しかないですよね。「がっぷり四つ」では勝負にならない。

その一方で、資料作成代行をアピールポイントにしている会社はあまりないことが分かりました。世の中に意外なニーズがあること、そして自社の取るべきポジショニングにそのとき気づけたのは、本当に大きかったです。もちろん、資料作成代行サービスを提供してる会社はたくさんあったと思いますが、第一想起を取るマーケティング戦略がうまくハマったことが大きかったですね。

僕たちが想起を取りにいく以前は、バーチャルプランナーさんという資料作成をずっとやっている1社を除けば、個人でやっているような小規模な会社しかいなかったんです。市場を選択してそこにリソースを投下し、競合が少ないところで戦うという判断は間違っていなかったと思います。

──現在はオウンドメディア「Cone-osナレッジ」を運用されていますが、自社でメディアを持つようになってからマーケティングの戦略は何か変わりましたか?

記事作成のノウハウも蓄積できるようになりました。その後、記事作成代行もサービス化しましたしね。代行サービスの集客はなかなか難しいのですが、BPO比較サービスサイト「b-pos」を運営することで集客につなげています。

──今はどんな体制で事業を運営しているのでしょうか?

社員は僕を含めて6人ですね。業務委託のメンバーを合わせると25~26名くらいになるでしょうか。業務委託メンバーには、パワーポイント専門デザイナーや広告運用マーケターなどがいます。社外のメンバーは完全スキルセット採用で、かつこの会社を面白いと思ってくれている人たちに働いてもらっています。

──スキルセット採用ではありながらも、業務委託のメンバーに対しても「共感」というハードルを設けているのですね。

そうなんです。業務委託の採用に関してはひとつポリシーがあって、うちの社名とサービス名を知らない方は採らないようにしているんです。「友人と楽しく働くこと」を目的にスタートした会社なので、みんなで楽しくやるというポリシーはずっと大事にしています。


「コンテンツとコードにしか投資をするな」が社内文化

──現在の事業領域だと、お客様のニーズはどんなものが多いのでしょうか?

最初は「BtoBのコンテンツが作れない」とか「作り方がわからない」といった、リソース不足のお客様が業界や企業規模を問わず多かったですね。ただ最近は、「どうやったら受注額が上がるか」「商談数を増やせるか」など、セールスやマーケティングの責任者からご相談をいただく機会が増えています。

──そこはコンテンツマーケティングの影響が大きそうですね。

そうですね。中小企業はもちろん、大手企業のグループ会社や新規事業チームなどが増えてきていると思います。「コンテンツマーケティングを一通り自分たちでやってみたものの行き詰まった」という方たちが、一周回って戻ってきたような感じですね。実際、ここ1週間で大手商社さんや大手飲料メーカーさんから「営業資料どうしたらいいですか?」「スタッフ全員が売れるように営業資料を改善したいです」「制作したホワイトペーパーから商談が生まれません……」みたいなお問い合わせをいただきました。

──「リソース提供」を軸にしていた初期の頃と比べて事業内容もいろいろ変化していると思いますが、オーダーの難易度も上がっていますか?

上がっていますね。その分、価格も連動させてはいるんですけど。

Coneではサービス提供メニューを完全に決めてしまっています。コンサルティングから入ってソリューション提案していくスタイルではなく、「この課題にはこういったフローでこういったサービスを提供する」という「型」ができているんです。そうすることでスキルセットも上げやすくなりますし、スキルセット自体も提供物の品質基準と統一しやすくなります。これは「品質の統一性」という考え方で、僕の好きな言葉の一つです。

──ある種のパッケージ化ですね。コンテンツマーケ経由でプルの問い合わせを獲得、というパターンが多いと思いますが、そうなると割とオーダーメイドで対応せざるを得ない状況になりませんか?

確かに、顧客のニーズも抱えている課題もまちまちな状況なのですが、そこはうまくサービスメニューに当てはめながら提案しています。当てはまらないケースでは、それこそ「各担当者の技量次第」みたいなところがあるんですけど(笑)。

Coneでは集客用のオウンドメディアとして「Cone-os」を運用していて、記事から流入したユーザーを各種代行サービス別に作ったサービスサイト(LP)に送客する設計になっています。「c-slide」なら「営業資料 代行」「会社紹介資料 作成代行」といったように各サービスサイト上で細かくキーワードを設計し、それぞれの詳細ページを作成することでニーズをセグメントしています。



営業資料の記事から、こちらの営業資料作成のページに誘導するというシンプルな設計です。読者の関心事の先に関連サービスへの導線を置くように意識しています。

──サービスメニューを提案しやすいように、キーワード設計によってニーズを絞っているわけですね。記事の作り方や運用の体制など、具体的に教えていただけますか?

記事の品質担保には、めちゃめちゃ力を入れています。「毎週何本更新」みたいな量的なノルマも決めていて、それを前提にワークフローを完全に組んでしまっています。記事のチェック・フィードバック体制とその基準も全部決めていて、担当者が適当に作るみたいなことは一切ありません。すべての作業を型化して品質を守っています。

──オウンドメディアの記事を拝見しましたが、構成がしっかり整理されていて読みやすく、自然検索から流入したユーザーにフォーカスして丁寧に品質管理されているイメージだったのでお話を聞いて納得です。

ありがとうございます。もちろん型化できないところもあるのですが、型から外れたところはフィードバックでフォローしている感じです。担当記事にそれぞれ構成担当、執筆担当、画像作成担当が1名ずついて、システマチックに動いています。

──メディアの運用はどのような形でやっているのでしょうか?

公開後、3ヶ月半経った記事の中から対象を決め、リライト作業をしています。社内の体制は「新規」と「リライト」で完全に切り分け、競合メディアやオーガニックの状況を見ながら社員6名で対応しています。

──なるほど。メディアの全体戦略を立てたり舵を取ったりというのはすべて佐藤さんがやられているのですか?

そうですね、コンテンツに関しては基本的に全部僕がやっています。というのも、僕たちは「人数が限られているからこそ、投資すべきところにリソースを投下しないとならない」と考えているからです。「人数が限られているのに……(リソースをたくさん投下して大変では?)」と思われるかもしれませんが、むしろ逆ですね。

─分散投資ではなく集中投資。

そうです。社内文化として、僕は常日頃から「コンテンツとコードにしか投資をするな」と言い続けています。

──それはどういった意味ですか?

少ない人数で仕事を動かすには、「人の代わりに働いてくれるもの」が重要です。そしてそれは、基本的に「コンテンツ」か「コード」か「お金」の3つしかないのですが、僕たちには「お金」がありません(笑)。だから、自分たちの代わりに働いてくれる「コンテンツ」と「コード」に投資しているわけです。

「コンテンツ」で言えば、LPは商談を取ってきてくれるし、記事は潜在顧客に対して方法や必要性を説明してくれます。

「コード」は商談プロセスの効率化に有効ですよね。例えば、問い合わせ後のサンクスページにオンライン商談の日程調整ツールを表示して顧客自ら変更できるようにするとか。フォーム記入時、チェックが入った項目によって担当者を変えるとか。「営業関連の問い合わせならAさん、マーケティング関連ならBさん」などとするだけでも、工数を削減しながら顧客により良い体験を提供できると思います。


自分たちなりの「あり方」や「やり方」にはやっぱりこだわりたい

──記事以外のコンテンツマーケティング戦略についても教えていただけますか?

たとえば、ホワイトペーパーは「1to1」で送っています。いわゆるダイレクトマーケティングの考え方ですね。僕たちはメール配信ツールを使わず、お客様のニーズに合わせて事例などを複製・カスタムしながら担当者名義で送るようにしています。冊子をパーソナライズして送ることで、商談の機会が増えるんですよ。

これを僕たちは「コンテンツセールス」と呼んで実践しています。「コンテンツマーケティング」があるなら「コンテンツセールス」もあるだろうと(笑)。顧客にとって有益な情報を潜在層に届けてリードを獲得する、いわばコンテンツマーケティングのセールス版ですね。有益な情報を1to1で提供することで商談化から受注を目指すスタイルで、どこまでいっても「人の代わりにコンテンツに働いてもらう」ことを意識してしいます。これができると、営業成績とかもブレなくなってくるんですよね。

──なるほど、それができるのは強いですね。LPはいかがですか? 以前は1枚のLPでニーズを網羅的に取っていくという戦略が一般的でしたが、昨今は検索ニーズごとに細分化したLPで個別のニーズを取っていく戦略が主流です。

おっしゃる通りですね。ConeではターゲットごとにサービスLPを作っていて、これが結構効いています。商談で1から10まですべて話すと、めちゃくちゃ時間がかかるじゃないですか。仮に営業が1人の顧客に10分間プレゼンする場合、単純計算ですが100人へのプレゼンで1000分もかかってしまう。だから、知っておいてほしいことをLPのコンテンツにあらかじめ説明してもらうほうが、圧倒的に効率がいいんです。

──ここまで話を聞いている限り、生成AIを制作フローに組み込んではいない感じですか?

校正やチェックくらいにしか使っていません。むしろ僕らは、「AIにできないところ」に注力しているイメージです。

──具体的に、どういうことでしょう?

AIは「Web上に落ちている情報」からしかコンテンツを作れません。ユーザーが検索した意図を踏まえて知りたい情報を最短ルートで提示するべきなのに、AIは「遠回り」をしたがるんです。それに対して、作り手の経験やノウハウが盛り込まれた「ユーザーのためになるコンテンツ」は情報の質が圧倒的に違う。そういった有益なコンテンツは、AIが作った量産型のコンテンツを駆逐してくれると思っています。

──その通りだと思います。でも、「AIが作れる記事を人間が作っているケース」が意外に多いんですよね……。

だからこそ、人はAIを超える記事を作らないとダメだと思います。そこが成果に直結するんじゃないでしょうか。たとえば「転職」のことを調べていると、AIは「転職活動とは」みたいなページを提示してきたりします。「それって、本当にユーザーが知りたいこと?」って聞きたいですよね(笑)。ユーザーが知りたい情報を最短距離で提示するにはやはり制作者の経験が重要であり、それがコンテンツの価値を作るのではないかと。

──今年の4月にコーポレートブランドをリニューアルされましたよね。「We are Small up Company」という企業コンセプトを拝見しました。このコンセプトは、ミッションやビジョンとは違う位置づけですか?

ミッションやビジョンって、抽象度が高過ぎるんですよね。意味がよく分からないというか。なので「理想」とか「考え方」だと捉えていただくのがよいかと思います。

──設立からそこまで年数は経っていない中で、なぜリブランディングに取り組んだのでしょうか?

僕の中で、「社員が40人になったら誰一人欠けることなくみんなで引退したい」という最終目標があるんです。「こういう会社が憧れられるような世界を見てみたい」という気持ちが設立当初からあって。それと、「こんな会社に入ってきてくれた友人たちに恩返しをしたい」という思いもあります。

「会社は小さいままでいく」「でもより大きな仕事をしていきたい」というコンセプトがある中で、それを実践していく、全員が誇りを持って向き合っていくには、あらためて運営方針を示す必要がありました。

──社内外に向けた意思表示でもありますね。

とにかく楽しく仕事がしたいので、会社は大きくしない。でも、大きなことはやっていきたい。だから、そのためにコンテンツやコードに投資をする。そういった運営方針というか、「これってクールだよね!」っていう自分たちなりの「あり方」や「やり方」にはやっぱりこだわりたいんです。

先ほどお話しした最終目標を考えると、逆にちゃんと言語化しなければならなかった。そのタイミングが今年だったという感じですね。あと、事業が増えるタイミングでもあったので、「なぜこの事業を始めるのか」をメンバーに説明しなければならなかったという背景もあります。

──事業は、やり遂げたいビジョンと明確に連動しますからね。先ほど「社員が40人」とおっしゃっていましたが、上限は40人と決めているんですね?

はい、社員の最大人数は40人と決めています。そういう会社って、ほとんどありませんよね(笑)。

──確かに、社員の上限設定はあまり聞いたことがないですね(笑)。

学校の1クラスが40人程度。そのくらいが一番働きやすいと思っています。社員が100人に増えても、今と同じような関係性でその全員と向き合うことはできませんから。100人なんて名前も覚えられないです(笑)。

──すごく面白い発想。

「友人と楽しく働くこと」を最後までやっていくには、この考えが必要でした。体育祭で優勝を目指すのと近いかもしれません。そこで、チームを維持していくのに必要なメンバーの給料や満足度をどうやって上げていくか。どうすれば幸せの総量を最大化できるか。それが僕の仕事のすべてです。今のスタンスが正解かは分かりませんが、「誰一人脱落させない企業」があってもいいんじゃないかと思っています。

──「友人」となると逆に採用のハードルは上がりませんか?

採用におけるハードルはめちゃくちゃ高いですよ。だって、「戦略コンサルBIG3」で働いているバリバリのトップコンサルタントが応募してきても入社できないんですから!

今はまだ社員6人の会社ですが、今は毎日仕事が面白いなと感じています。大きなことを成し遂げたときの達成感は重要ですが、仕事を達成するまでの過程が楽しくないのは良くありません。道中の景色を見られない旅行は楽しくないですから。

──佐藤さんや株式会社Coneは、起業したい人や楽しく働きたい人に勇気を与える存在と言えるかもしれません。コンテンツマーケティング領域の同業としてConeさんの今後がとても気になります。どこかでまた一緒にお仕事をしたいですね。本日はありがとうございました!

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INTERVIEW インタビュー

ファングリー代表の松岡がコンテンツ界隈の方たちをゲストに迎え、「ここだけの話」を掘り下げるインタビュー企画です。

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