今回は、”アンノウンマーケティング(Unknown Marketing)”についてお話します。
Unknown……つまり、『まだ見ぬユーザーに対するマーケティング手法』ということです。
現時点ではターゲットとして考えられていない、見込み顧客になりうるユーザーに対して、ペルソナごとに個別化されたアプローチを図る。そんな手法です。
これが昨今、注目を集めているのですが、
を解説します。
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Unknown:未知の、不明、見知らぬ、名も無い
アンノウンマーケティングとは、すなわち”未知の潜在的な顧客”に対するマーケティング手法のことです。
Google Analyticsなど、普段から解析ツールを利用している方なら分かると思いますが、数字上では見込顧客がどれだけいるのか、また、アプローチするターゲットの選定が間違っていないかなど、把握できる情報は多いです。
ただし、資料請求やダウンロード、コンバージョンに至った相手を中心に解析した結果、という方が大半でしょう。
では、その他大勢の中に『見込顧客となりうるユーザー』はいないのでしょうか?
例えば、月間1,000ユーザー(顧客)が訪れる、歯科医院のホームページに、毎月新規の問い合わせが50件あるとします。対ユーザーのCVR(コンバージョン率)は5%です。
この数字だけ見れば、ある程度コンバージョンもあり、問題なく経営できている歯医者のように見えます。
ただ、逆にいうと950人は逃してしまっている、ということになります。
この逃した950人のユーザーは「仕方ない」のでしょうか?また、サイトを訪ねてくれる1,000ユーザー以外のユーザーに、認知させる方法はないのでしょうか?
まだ見ぬユーザーを逃してしまったことをもったいないと思っている企業や個人が多く現れ、デジタルテクノロジーの発展を受けて立ち上がり、注目しているのがこの『アンノウンマーケティング』となります。
もしかすると、あなたが普段認知拡大のために行っていることも、『アンノウンマーケティング』の一つと言えるかもしれません。
これまで、一般的だったマーケティングコミュニケーションは、関連サイトへの流入やお問い合わせのようなアクションを起こしたユーザーに対して行われていました。
これについて、ユーザー心理状態を表す潜在層と顕在層と呼ばれるものがあります。
対象ユーザーのニーズ、欲しているものに該当する場合、潜在層に該当します。
先ほどの歯科医院でいうと、「歯列矯正したほうがいいのかなー」「親知らずが気になるなー」などと思っている人です。
このユーザーに対しては、「歯並びが気になる方へ」などのお悩み解決系のコンテンツをサイト内に配置して対応することが基本となります。
これは簡単で、すでにニーズが固まっており、欲しているユーザーが該当します。
歯科医院の例では、「歯列矯正がしたい!」「親知らずを早く診てもらいたい!」などの訴求が存在する人です。
このユーザーには、「こんな治療を行います」「費用はこれくらいです」といった情報が求められているため、それをサイト内に配置することで対応できます。
アンノウンマーケティングでは、アンノウンリード(未知の潜在顧客)に対して、個別化したアプローチを行うことを言います。
つまり、歯科医院の話でいうと「歯並び悪いけど何か問題あるの?」「親知らずって体に影響あるの?」という、訴求にすらたどり着いていないユーザーのことです。
こうした、潜在顧客となりうるユーザーを対象にアプローチを行う方法を、ここ数年多くの企業や個人が行っているのです。
アンノウンリードは有力な見込み顧客となり得るのですが、これまでは個別に細分化したアプローチというのは非常に難しいことでした。
しかし、昨今はWebやデジタルテクノロジーが発展し、DMP(インターネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォームのこと)やマーケティングオートメーション・AIの普及により、個別に行動履歴や動向を把握、分析することができるようになってきました。
こうした技術の進歩によって、デジタルマーケティング戦略は多岐にわたるようになり、集団へアプローチして個を得るのではなく、個々にアプローチすることで集団を得ることにつなげられるとあり、急激に関心を集めています。
基本的にアンノウンマーケティングは、AIやMAツール、広告システムを導入することによって行われています。
例えば、以下の手順。
すると、そのユーザーが興味関心のあるバナー広告やコンテンツ、商品紹介などを提示し、流入につなげることができるのです。
最近では、パブリックDMPとWebサイトのCMS、広告出稿システムなどとのシームレスな連携によって、現在のWeb広告においてベーシックなものとして身近に出現しています。
ですから、アンノウンマーケティングという言葉を知らずに、こういったシステムを使ってマーケティング活動を行っている方も多いのではないでしょうか。
例えば、Amazonでビーチサンダルを検索し、購入はしないものの商品の目星をつけたとします。
翌日、通勤中にスマホを開き、情報まとめサイトを見ていると、その商品が広告領域に表示された、ビーチボールなどの関連商品が併せて表示された、といった経験はありませんか?
これはもちろん、Amazonやビーチサンダルに限らず、一度閲覧したことのあるサイトの広告が表示されるなど、様々な形でリマインドされることがあります。
これも1つのアンノウンマーケティングです。
ユーザーの行動履歴から、自動的に判断してアプローチをかけているので、知らず知らずに追跡されており、不快に思う方もいるでしょう。
そのため、アンノウンマーケティングを行う際は、アンノウンリードが離れてしまわない程度にアプローチするための、しっかりとした計画が必要と言われています。
昨今では、Webマーケティングの一環として活用する企業が多く、一般的なWebマーケティング手法の1つとなっていることも事実です。
2016年頃から急速に普及した『インフルエンサーマーケティング』も、アンノウンマーケティングの1つの手法といえるでしょう。ターゲットに対し、より影響力のある人に宣伝活動を行わせるため、未知の顧客に対するアプローチを可能にしています。
キュレーションメディアとは、簡単に言うと「お役立ち情報サイト」で、様々な企業や個人が立ち上げており、今では日常的に誰もが目にしていることでしょう。
ただ、大きな社会問題となったことがあります。それが、DeNA社の医療系メディア「Welq」の問題です。誤情報や事実無根な情報を、あたかも実際に効果がある、実在するかのように表現した記事を数万記事単位で発信していたのです。最終的には、同社の運営する数多くのメディアが閉鎖される運びとなりました。
当時、それらのメディアにおいてライターに支払われていた原稿料は、安いもので数百円程度。医療系の情報を発信していたため、その情報の真偽はしっかりと確かめる必要があるはずですが、それはなされていなかったことは大きな問題です。
ライターも、数百円のものに時間をかけていられないので、人によるとは思いますが、半ば投げやりに作っていたのではないかといった想像も容易にできます。
そんな問題があったにも関わらず、日々同様のメディアは増え続けています。目的はやはりアンノウンリードに対するアプローチのためです。実際に自社のサービスとは異なる内容でも、関連する情報を発信し、認知させることで最終的に自社のサービスへとつなげることができます。または、そのメディアの認知が高まることで他社がそのメディアに情報を載せたいと思えば、広告料を得ることができます。
何度も出てきますが、歯科医院で例えるとします。
歯科医院のホームページとは別に、新たに記事を更新するサイトを立ち上げます。そこでは、口臭対策に関する記事を更新。口から嫌な臭いがする原因などの情報を発信するなか、実はその口臭が虫歯や歯周病が原因である可能性を示唆します。そして、その情報を見て気になったユーザーが、口臭対策の記事を更新しているその歯科医院について興味を持てば、作戦は成功、となるのです。
※実際は医療広告ガイドラインなどのルールに則る必要があり、医療機関が行う際は難しい場合もあります。
また、歯磨き粉などのメーカーが、このメディアを見つけ、商品の販売につながると思えば自社の商品を使った記事や広告を載せてほしいと、お金を出してくれるかもしれません。
こういった、様々なユーザーの潜在的なニーズ、興味・関心を高めるために、キュレーションメディアを運用しているため、運営元がどんな会社か不明なこともあります。
アンノウンマーケティングを簡単にまとめると、「実は意外と身近で行われている、ユーザー単位で行動を追跡したり、まだ存在すら不明な潜在顧客へアプローチしたりする手法」という感じでしょうか。
スマホの普及とSNSやメディアの乱立、AI・人工知能の発展が後押しとなり、情報が飽和状態にある現代において、細分化した個へアプローチできるアンノウンマーケティングは、企業側にとってなくてはならない手法として存在し続けるでしょう。
アンノウンマーケティングのためのコンテンツ作りに欠かせないライターは、各々のスキルを磨き、専門的な知識(得意分野)を明確に示すことで仕事があり続けるのではないか、と考えています。
専門性のあるライターニーズは、今後より強まっていくでしょう。選ばれるライターとなるために何が必要かを、今一度振り返ってみては?
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