ホームインタビュー/39歳まで専業主婦だった社長が導いたドムドムハンバーガーのV字回復|ポジショニングを重視しない、日本最古バーガーチェーンのマーケティング戦略

Interview

# 39

39歳まで専業主婦だった社長が導いたドムドムハンバーガーのV字回復|ポジショニングを重視しない、日本最古バーガーチェーンのマーケティング戦略

株式会社ドムドムフードサービス

代表取締役社長

藤﨑 忍(ふじさき・しのぶ)

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コンテンツプロデュースカンパニーとして、企業のコンテンツマーケティングやブランディング活動を伴走支援する株式会社ファングリーの代表・松岡でございます。

「コンテンツ界隈ここだけの話」第39話のゲストは、日本最古のハンバーガーチェーン『ドムドムハンバーガー』を運営する株式会社ドムドムフードサービスで代表取締役社長を務める藤﨑忍さんです。

日本最古のハンバーガーチェーンで最盛期の400店から一時は27店舗まで減少。“絶滅危惧種”とささやかれたドムドムハンバーガーが見事なV字回復を遂げた歩みは、今後の外食産業やブランドマネジメントにどう活かされるのか。ドムドムハンバーガーが目指す「らしさ」を追究したマーケティング、そして2026年1月に新たな体制でスタートを切ったMBO(経営陣買収)の裏側に至るまで、詳しく伺いました。

藤﨑 忍(ふじさき・しのぶ)

株式会社ドムドムフードサービス

代表取締役社長

藤﨑 忍(ふじさき・しのぶ)

青山学院女子短期大学卒業後は主婦として子育てなどに奔走していたが、39歳でSHIBUYA109内のアパレルショップへ就職し、店長を務める。その後、居酒屋アルバイトを経て自身で居酒屋を開業。2017年に株式会社レンブラント・インベストメントに入社し、株式会社ドムドムフードサービスへ出向。そこでドムドムハンバーガーの新商品開発担当や新店店長、東日本地区スーパーバイザーなどを務め、2018年8月から株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長に就任。

わずか9ヶ月でのドムドムフードサービス社長就任と、劇的なスピード感でのV字回復

――藤﨑さんはさまざまなメディアに出演されていますが、本日は、なるべくほかではあまり語られていないようなビジネスのリアルな裏話を伺わせてください。

よろしくお願いいたします。私自身の経歴についてはこれまでお話しさせていただく機会も多く、「もうお腹いっぱい」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんね(笑)

──39歳で働き始め、その後に経営者として大きな成果を出されるわけですが、簡単に経緯について教えていただけますか。

はい。私は21歳で結婚して、39歳まで就職経験はゼロでした。私自身の大きな夢は、”お嫁さんになること”だったんです。いまどきナンセンスと言われるかもしれませんが、「夫に尽くす、良いお嫁さん像」に夢中になっていました。夫は自由な人でしたが、私自身もお嫁さんであることに夢中になっていたという意味では、根っこの部分で何かに没頭する同じようなタイプだったのかもしれません(笑)。

39歳で初めて仕事に出たきっかけは、夫が病に倒れたことでした。お金のために働き始めたというのが、嘘偽りない事実です。その後、店長を務めていたアパレルショップでの仕事は、私が44歳のときに会社都合で退職することになり、そのタイミングで夫が再び病気に……。息子は大学生でしたし、「家族2人を守るために自分がもっと働かなければ」という思いが強かったです。

――家族を守るための手段が、就職ではなく「起業」だった。まさに待ったなしの状況だったのですね。

44歳で居酒屋の店員として働き始めましたが、当時のスキルでは、家族を守れないと悟りました。それならいっそ融資を受けて起業したほうが、より多く稼げるんじゃないかと考えたんです。どうしてもやりたい仕事だったからという美しい話ではなく、自分にできることが「料理」と「接客」しかなかったから、居酒屋という選択肢になっただけですね。

──アパレル店長時代はわずか4年で年商を約2倍にし、そこから居酒屋経営を成功させるという素晴らしい結果を出されています。経営のノウハウはどのようにキャッチアップされたのでしょうか?

経営スキルと呼べるようなものは、最初はまったくなかったんです。「PDFにしておいて」と言われても「PDFって何?」という状態でした。今でこそ社長として稟議書に目を通す立場ですが、当時は「稟議書?何それ?」といったレベルでしたね(笑)。ITツールから経営の仕組みまで、すべて後から必死に学びました。

――未経験から数字を出し続けているのが凄いというか、信じがたいです。その「強さ」の根源はどこにあるのでしょうか。

私の特徴を挙げるとすれば、「高い目標を持たないこと」かもしれません。アパレルも居酒屋も、最初から「売上を倍に」とか「多店舗展開しよう」なんて思ってませんでした。毎日、目の前のお客様に満足していただく。目の前に置かれた小さなハードルを一つひとつクリアしていく。その積み重ねが、結果的に経営の数字につながっていったのだと思います。

──そこからどうやってドムドムハンバーガーの再生プロジェクトに関わることになったのでしょうか? 

ご縁の賜物なのですが、私が経営していた居酒屋の常連だった方が、私の味のセンスと接客を見込んで声をかけてくださったんです。その方は、当時のレンブラントホールディングスの専務でドムドムフードサービスの取締役も兼任されていました。

――オファーを受けたとき、当時の心境はいかがでしたか?

ドムドムハンバーガーはもちろん知っていましたし、商品開発をやれるなら単純に楽しそうだと思い、大変嬉しい気持ちでお受けしました。ただ、当時は居酒屋経営も順調で株式会社化していたため、最初は顧問という形で2017年7月から関わり始め、その後、11月にレンブラント・インベストメントという事業再生の会社に正社員として入社し、ドムドムフードサービスへ出向しました。

──わずか9ヶ月での社長就任。それは「抜擢」というより、崩壊しかけた現場を立て直せる人が他に不在だったということですか?

現場の状況はかなり切迫しており、入社後1ヶ月で店長、さらにその3ヶ月後には店長の管理者であるスーパーバイザー(SV)を務めることになりました。最前線から全体を俯瞰して見えてきたのは、コミュニケーション不足な会議体と、消失した事業ビジョンでした。極めつけは最初の決算ですね。大きな赤字を目の当たりにしたとき、事業再生は難しいと思いました。

――その壁をどう突破したのでしょうか?

自分自身が意思決定の権限を持たなければこの会社は救えないと考え、私を誘ってくださった方に直接「役員になりたい」と直訴したんです。最初は「そんな簡単に役員にはなれないよ」とたしなめられましたが、結果として代表取締役社長という大役を任せていただくことになりました。

──まさに不退転の決意ですね。

もっとも赤字幅が大きかったのは2018年の3月期です。そこから不採算店舗の整理や構造改革を断行し、3年後の2021年3月期に黒字化を達成することができました。

──店舗数を減らしながら売上を1.3倍にするというのは、驚異的な実績ですね。客単価の向上なども影響しているのでしょうか?

業界全体の値上げトレンドも影響していますが、それ以上に大きいのは、月替わりの期間限定メニューの存在です。例えばソフトシェルクラブを使った「丸ごと!!カニバーガー」は、単品で1,290円(2026年3月時点)とファーストフードとしては高価格帯の商品ですが、お客様にしっかり価値を感じていただき選ばれています。こうしたヒット商品の積み重ねが客単価と利益率を引き上げました。

 

丸ごと!!カニバーガー

 

ポジショニングマップは描かない。「ドムドムらしさ」を追求したマーケティング

──ドムドムハンバーガーの市場におけるポジショニングはどのようにお考えですか?

実は、私たちには「ポジショニング」という発想自体がありません。唯一の基準は、「ドムドムらしいかどうか」です。業界のセオリーや常識にこだわらないことこそが、最大の強みだと考えています。

「丸ごと!!カニバーガー」は良い例です。店舗に届いた冷凍のソフトシェルクラブを、店舗スタッフが流水解凍し、水気をしっかり切ってから一つひとつ丁寧に粉をつけ揚げています。飲食に関わったことがある方なら分かると思いますが、こんな非効率なオペレーション、チェーン店では普通あり得ません(笑)。

──一時期はブランドの勢いが失われていた時期もあったかと思います。そこから短期間で、どのようにブランドイメージを刷新していったのでしょうか?

異業種とのコラボレーションや、期間限定のポップアップショップなどを積極的に展開しました。そうしたら、現場の店舗やSNSを通じて「何十年も前に、人生で初めて食べたハンバーガーがドムドムだった」「学生時代に初めてデートした場所がドムドムだった」「水泳教室の帰りに、いつもお母さんに連れて行ってもらった思い出の味だ」といった、お客様からの温かいエピソードの数々が聞こえてきたんです。

――それは嬉しいですね。単なる飲食店という枠を超えて、お客様の人生の大切な思い出にしっかりと寄り添ってきたブランドであることが伝わってきます。

ドムドムハンバーガーの最大の強みは、お客様と共に歩んだ歴史そのものなのだと深く実感しました。そこから、「お客様の人生に寄り添い、並走し、共感し、共存することでブランドを作っていこう」という明確なコアコンセプトを定めました。一方的ではなく、お客様の思い出や感情を大切にしながら、ともにブランドを育てていくという感覚です。

──ドムドムハンバーガーにはXやInstagramなどのSNSのアカウントもありますが、かなり力を入れていますよね。どのようなポリシーで運用しているのでしょうか?

SNSはすべて内製チームで運用しています。もっとも重視しているのは、SNSを一方的な告知ツールとして使わないこと。「お客様の生の声を聞くためのツール」と位置づけています。また、SNS上でドムドムハンバーガーに関する投稿をしてくださる方は、たとえお店でハンバーガーを買っていなくても「ドムドムハンバーガーの大切なお客様」として向き合っています。

――SNSは、どうしても目先のフォロワー数を追うことに縛られがちですが、ドムドムが追っている指標は何ですか?

現在、ドムドムハンバーガーのXのフォロワー数は約12万6,000人です。ほかのハンバーガーチェーンの中には、数百万人規模のフォロワーがいるアカウントもあります。これらには足元にも及びませんが、エンゲージメントの質には自信があります。先日のある投稿では、約12万6,000人のフォロワーに対して、1万3,000から1万4,000もの「いいね」がつきました。ドムドムハンバーガーを愛してくださる方たちにしっかりとメッセージが届いているからこそ、高い反応が得られているのだと考えています。

──ユーザーの声を起点にした事例といえば、2020年5月のオリジナルマスク販売のエピソードも非常に印象的でした。

あれはまさに、コロナ禍でお客様の声に背中を押された事例です。もともとは”マスク不足”の折に店舗スタッフを守るために確保したマスクがあったのですが、お客様もマスクが手に入らず困っているという状況でした。そこで、少しでも社会貢献になればという思いから余剰分を店頭で販売したのが始まりです。すると、それがSNSで一気にバズってしまって……。店舗に長蛇の列ができ、いわゆる「密」の状態を生み出してしまったんです。これでは本末転倒だと考え、すぐに店頭販売を中止しました。

――それがECサイトを立ち上げるきっかけにもなったそうですね。

はい、「遠方で行けないからECサイトを作って販売してほしい」というお客様からの要望が殺到したんです。その声に応えるため急ピッチで作業を進め、わずか10日でECサイトを立ち上げました。結果として、大手アパレルメーカーが本格的なマスクを作り始める前の段階だったので、17万枚ものマスクをご購入いただきました。このとき立ち上げたECサイトでの物販は、今では全体の売上の随分な割合を占めるまでに成長しています。

 

売上規模よりも付加価値。異業種とのコラボレーション先の選定基準

──BEAMSやniko and …など異業種ブランドとのコラボレーションも多いですが、選定基準はどこにあるのでしょうか?

絶対に譲れない条件は、「ドムドムハンバーガーというブランドを大切に守ってくれること」です。例えばアパレルブランドと組む場合、大量生産・大量消費を得意とする会社と組めば、一時的には大きな売上を作ることができるかもしれません。しかし、それが一過性の消費行動で終わってしまえば、ドムドムハンバーガーが大切にしてきた歴史や思い出といったブランドの価値が下がってしまう恐れもあります。目先の数字より、長く良好な関係を築き、互いの価値を高め合える相手かどうかを最も重視しています。

──最近では、日本郵便とのコラボも話題を呼びましたね。どうやってビジネスとして形にしたのですか?

きっかけは、担当者の方がドムドムハンバーガーのレトルトカレーを面白がって郵便局の店頭で販売してくださったことでした。その後、日本郵便のプロジェクトとして、長野県長野市の郵便番号380エリアで「さやまるトマト」というブランドトマトを生産されているので、「ハンバーガーにできないか」とご相談いただきました。1日に50個ほどしか出荷できない非常に希少なトマトですが、「これを世に広めるために、ぜひドムドムさんとコラボしたい」と嬉しいお声がけをいただいたんです。
出荷量が限られているため、全店舗でメニュー化することはできませんでしたが、あえて「大阪の3店舗限定」という特別メニューに落とし込んで展開しました。同時にECサイトでは公式キャラクター「どむぞうくん」のトマトバージョン、「とまぞうくん」のグッズを販売するという連動企画を実施したんです(2026年4月現在、ドムドムオンラインショップで販売中)。お互いの持つ付加価値を掛け合わせ、お客様に新しい喜びを提供できているという点で、とても満足しています。

 

丸ごと!!トマトバーガー

 

とまぞうくんボールチェーンぬいぐるみ

 

日本最古のハンバーガーチェーンを未来へつなぐための決断

──2025年12月、MBO(経営陣買収)を経て、いよいよ藤﨑さんご自身が名実ともにドムドムフードサービスの主導権を握る、新たな経営体制がスタートを切りました。「再生フェーズ」を卒業し、あえて自ら大きなリスクを背負って独立するイバラの道を選ばれました。そこに至った背景にはどのような葛藤や覚悟がありましたか?

5期連続で黒字化し、今期で6期目が見えたこのタイミングが、ファンドとしてバイアウトの最適な時期であることは、私自身も当初から認識していました。そしてありがたいことに、私たちの業績やブランド力を評価してくださった複数の企業様から、買収のオファーをいただきました。

私の心の中に、どうしても拭いきれない2つの大きな不安があったんです。ひとつは、社員たちの未来。客観的に見れば、大手チェーンのような体系的な教育システムはまだ未熟で、社員個々のビジネススキルには不足している部分もあります。もし他社の傘下に入った際、新しい親会社の高度な要求に現場の社員たちがついていけず、みんなを守り切れないのではないかという強い懸念がありました。

もうひとつは、ブランドそのものの保護です。現在、ドムドムフードサービスではIP事業にそこまで経営資源を集中させていないにもかかわらずグッズの力が非常に強く、売上全体の7%ほどを占めるまでに成長しています。もし買収先がIPビジネスに強い企業だった場合、相対的に利益率の低いハンバーガー事業が軽視され、手っ取り早く利益が出るIP事業ばかりに傾注されてしまうかもしれないと考えました。

──ブランドの根幹である「食」と、それを支える「人」を守りたいからこそ、ご自身でハンドリングできるMBOという道を選ばれたのですね。

親会社にMBOを行いたいという強い意思を伝え、銀行からの融資も無事に確保しました。ただ、私一人で全部背負うことには不安もありました。そこで、食品流通業界に精通している青果の加工、仲卸のベジテック社・遠矢社長に相談したところ、「すべて一人で背負い込むのはやめたほうがいい」とアドバイスをいただきました。そこで、名古屋などでラーメン店「スガキヤ」を展開するスガキコシステムズ社さんを紹介してもらったんです。

――あのスガキヤですか。ドムドムハンバーガーとスガキヤ、どちらも独自のポジションをとる、言わば唯一無二のブランド同士ですね。

スガキヤは創業80年の歴史を持ち、現在280店舗を展開する外食産業の大先輩です。彼らなら、もし私に何かあったとしても、絶対にドムドムハンバーガーというブランドを大切に守り抜いてくださるという確かな安心感がありました。そして最終的に、スガキコシステムズさんとベジテックさん、そして食品製造大手のスワローホールディングスさんの計3社と資本業務提携を結び、強力なタッグを組むことになりました。

──最強の布陣ですね。第2の最盛期としてさらなる飛躍が期待される中、今後の具体的な店舗展開などについてはどうお考えですか?

新店の出店も進めていく予定ですが闇雲な店舗拡大はしません。最優先すべきは、ブランドを体現できる「人の教育」です。石橋を叩きながら、人材育成と並行して慎重に進めていきたいと思っています。

──異例のキャリアの中で藤﨑さんが培われた「目の前の小さなハードルを実直に越え続ける姿勢」が、すべての基盤にあるのだと強く感じるインタビューでした。日本最古のハンバーガーチェーンの魂を守り抜くためのMBOという勇気ある決断と、ドムドムフードサービスの次なるステージに向かうバイタリティ。私自身、経営の真髄とはテクニックの先にある「覚悟」なのだと、あらためて考えさせられるお話でした。ドムドムハンバーガーの今後に大いに注目していきたいと思います。本日は本当にありがとうございました!

 

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C-NAPS(シナプス)を運営するファングリーの代表・松岡がコンテンツ界隈の方たちをゲストに迎え、「ここだけの話」を掘り下げるインタビュー企画です。

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