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Interview

# 10

若手が多い組織では「共通言語」があるとうまくいく|変化に強い組織を作るなら、組織自体が変化するべき

株式会社FinT

代表取締役

大槻 祐依(おおつき・ゆい)

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コンテンツプロデュースカンパニーを標榜する株式会社ファングリーの松岡でございます。

「コンテンツ界隈ここだけ話」、第10話はSNSマーケティングなどの事業を手掛ける株式会社FinT(フィント)の代表取締役・大槻 祐依さんをゲストにお招きし、リブランディングの背景から組織作りのこだわりまで詳しく伺いました。

大学在籍中に起業したFinTで代表を務め、2024年8月にはForbes JAPAN が発表した「世界を変える30歳未満の30人」(BUSINESS & FINANCE & IMPACT 部門)に選出されるなど、女性経営者として注目されている大槻さん。SNSマーケティングという変化が激しい市場でどのように戦い、そしてこの先どのような未来を描いているのか――。ぜひ最後までお付き合いください。

大槻 祐依(おおつき・ゆい)

株式会社FinT

代表取締役

大槻 祐依(おおつき・ゆい)

1995年生まれ。早稲田大学に在籍中の2017年にFinTを創業。合計100万以上のフォロワー数を誇る若年層女性向けSNSメディア『Sucle(シュクレ)』を運営し、300社を超える大手企業のSNS起点マーケティングや海外(ASEAN)進出を支援している。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」選出。経産省などが主催する日本とASEAN各国のZ世代リーダーが集うビジネスコミュニティ「AJZL Community」の日本代表を務める。

自分の強みやポジションを活かせると思って会社を立ち上げた

──8月に移転したばかりのきれいなオフィス、そして最上階の角部屋、最高ですね!本日はどうぞよろしくお願いいたします。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

──「FinTといえばSNSマーケティング」という印象が強いですが、祖業は別だったんですよね?

はい、FinTはもともと「ファイナンス(Finance)にヒント(hinT)を」が名前の由来で、「金融リテラシーを若者に広げることで日本の国力を高めたい」という想いから金融事業を展開していました。

ですが、金融のバックグラウンドや大きな強みがなかったことから方針を転換しました。そして2017年に立ち上げたのが、Z世代向けに最新のトレンドやさまざまなライフスタイルを提案する女性向けメディア『Sucle(シュクレ)』です。

ちょうど日本でInstagramが伸びてきたタイミングだったこともあり、『Sucle』のフォロワーがどんどん増えていったのを覚えています。その中で『Sucle』という土台を使いながら、さまざまな企業さんのSNSマーケティングを支援させていただくようになりました。

──2023年には東南アジアのベトナムに進出しましたね。当社もホーチミンにVIETRY(ベトライ)というグループ会社があり、割と密に取引しているので、ASEAN進出については詳しく聞きたいと思っていました。

そうなんですね~!弊社もホーチミンに支社があるんですよ。実はベトナムに続いて今年8月には、ASEANにおける2拠点目としてフィリピンのマニラにも進出しています。

──現地ではどのような事業を展開しているのでしょうか?

エースコックさんや伊藤園さんなど、大手日系企業のマーケティングを現地で支援させていただいています。また、最近では日本以外の企業のローカル支援も始めています。

「良いもの」を作って国内でマーケットを拡大してきた企業さんが、グローバルチャレンジしようとしているって素敵じゃないですか。そういった会社さんが海外進出していく際にしっかり伴走できる企業になりたいですね。そのためにはグローバルな支援体制の構築が不可欠だと考えており、その足掛かりとして、急激に経済が成長しているASEANで日本企業の海外進出マーケティング支援に取り組み始めている段階です。

──ベトナムやフィリピンにはオフショア開発会社が割とありますよね。一方で、SNSマーケティングの会社はあまり聞かないのですが、そもそもあるのですか?

あります、あります。ローカルでもありますよ。でも、私たちには日本で成熟させてきたマーケティングノウハウがたくさんあるので、それを現地の支援でも活かせると思っていますし、日本企業の「当たり前基準」の高さや質の高いマネジメントは実際に評価していただいています。

目指すべきところが少しずつシャープになっていった

──話は大きく変わりますが、FinTさんは2022年にリブランディングを行っています。実施した一番の理由は何ですか?

以前は「世界をまるごとハッピーに」というビジョンを掲げてきたのですが、このビジョンがシャープじゃないなと思って。「もっとグローバルで戦えることをパーパスにしたい」という意気込みをベースに、「モヤッとしたものをよりシャープに言語化したい」「大事にしていることを齟齬なく伝えたい」という想いからリブランディングに踏み切りました。

──「シャープじゃない」というのは、ビジョンに対する言葉としての解像度が低かったということですね。企業の根幹であるCIを変化させていくというのは、言葉でいうのは簡単ですがなかなか実行できないと思います。

会社を経営していく過程で、自分の視座が上がっている感覚がありました。そして、「今のまま」という発想がもったいないと思うようになって。メンバーからもたくさんの気付きをもらいました。そういう中で、自分たちの目指すべきところが少しずつシャープになっていったんですよね。

それと、「できるだけ長く続く会社」にするために今を変化の土台にしたいとも思っています。コアな部分はもちろん大事ですが、「時代に合わせて多様に変化できること」が成長し続ける会社には欠かせないと考えているからです。会社としての歴史は残しながらも、変わるべきところは変えていけるような環境にしたいなと。

──素晴らしいですね。行動指針はどのように考えたのですか?

行動指針は、当時のマネージャー全員で合宿して考えました。今のFinTに残したいもの、働く上で大事にしていること、良いと思っているカルチャーなどを要素として抽出。クレドは大きく4カテゴリーに絞り、17の指針を作りました。これでも絞り切れなかったんですけど(笑)。行動指針は、社内表彰などの形で評価制度にも組み込んで運用しています。

──当社ファングリーは6つのコアバリューを掲げていますが、6個でも多いと言われてしまうこともあります(笑)。

そうなんですか(笑)。個人的には多くてもいいと思います。求めたい価値観は多く、全部は叶えられていませんが、特に大事な要素をピックアップして評価・表彰・マネジメントすることで組織を強化できたらと思っています。

──リブランディングは採用にも影響しましたか?

グローバルを意識している求職者の方が多くなりましたし、パーパスに共感して入ってきてくれたメンバーも増えました。

──やっぱり、MVVなどのブランド言語を定義して発信していくと、確実にエントリーの質は変わりますよね。

「若くても裁量権を持って活躍したい」といってくださる方もいます。FinTでは若手にもいろんなチャンスがあるので、それを楽しみたいという方が多いかもしれません。

──Z世代中心のSNSマーケの会社というと“何となく緩そう”な印象もありますが、FinTさんにはチャレンジャーとして変化に対応しながら、ガツガツ突き進んでいくというイメージを持ちました。

はい、そのイメージで合っています!ベンチャーなので(笑)。そこは行動指針でも「CAN MIND」や「THINK BIG, GO GLOBAL」という言葉で表現しています。

直近では映画「カメラを止めるな!」で脚光を浴びた上田慎一郎監督のもと、三井住友カードさんとショートドラマを制作し、総再生回数300万回を達成することができました。FinTとして初めての施策ではありましたが、「CAN MIND」の精神で前向きにチャレンジしようと取り組んだからこそ、このような成果を出すことができたのだと考えています。

一人ひとりのメンバー、その人自身を受け入れることが重要

──今年8月に移転したばかりというオフィスについても聞かせてください。割と大きいフロアですが、現在は出社がベースなのでしょうか。

社歴が一番長い私でも8年目で、まだ入社して日が浅いメンバーも多くいます。まだカルチャーを作っている最中ということもあり、皆でコミュニケーションを取りやすいようにワンフロアのオフィスにこだわりました。

出社はマストではなく、ハイブリッドです。でも、週に何回かは時間をかけてオフィスに来てもらうわけですから、テンションが上がるような環境にはしたいですよね。実際に週3回出社している社員が90%以上と、進んで出社するメンバーが多く、仕事に熱狂できる環境を作ることができています。

──Z世代を中心に「20代の若い方が多い会社」というイメージですが、組織運営の面でうまくやっていくコツなどはありますか?

「一人ひとりのメンバー、その人自身を受け入れること」ではないでしょうか。FinTに入社してくれるメンバーも、そこに共感してくれるケースが多いですね。「強みを活かす」という方針を私たちは重視しており、その強みが最大限に発揮される場所はどこなのか、その強みをマネージャーが見つけた上で、適したプロジェクトにアサインすべきだと思っています。

──短所を矯正するというより、長所をより伸ばしていく采配ですね。

実際、映像制作に強みを持つメンバーがショートドラマ制作のチームリーダーになったり、日本で営業として活躍したメンバーがグローバルの立ち上げにチャレンジしていたりします。変化に強い組織を作るなら、組織自体が硬直化せずどんどん変化していく必要がありますよね。機会を作り、与え、そこで変化への適応を促す。それが組織を動かす一番の原動力になると考えています。

──「誰でもできる仕事」ではなく「あなたじゃないとできない仕事」を任せることが大事。

おっしゃる通りです。それとマネジメントに関しては、若手が多い組織では「共通言語」があるとうまくいきやすいと思います。行動指針は、マネジメントの引き出しのひとつです。行動指針という共通言語があることで「これは評価できる(できない)」といった話をしやすいですし、意思決定の場面でも使いやすいですよね。全部を追うのは大変ですが、数ある引き出しの中から自分が目指しやすいもの、取り組みやすいものを見つけてもらいやすいんじゃないかと思っています。

──Forbes JAPANにも取り上げられましたが、大槻さんはテレビ出演など多方面で広報活動をなさっています。支援会社の社長が表に出るメリットについてお聞きしたいです。

広報の機会があれば、それだけFinTを知ってもらえることにつながります。私たちは今、ASEAN進出にチャレンジしていますが、広報活動をしていなかったらいただける相談は今よりずっと少なかったと思います。情報発信しているからこそ気づけたニーズや課題はありますし、採用活動へのポジティブな効果もありますね。

意図的に前に出ているわけではないのですが、取り上げていただきやすいんだと思います。私の活動によって、若手や女性がチャレンジしやすい会社だと思っていただけたら嬉しいです。

──ブランディングの観点で「こんなふうに変わりたい」「こう変えていきたい」といった具体的なイメージはありますか?

私はFinT創業時から一貫して、「若者の力で日本を強くしていきたい」と思っています。日本は少子高齢化の問題もあり、その点ではとても難しい状況にあると思うんですよ。そんな中、若者が頑張っていることを印象付けたい気持ちはあります。日本が明るくなるため、前向きになるために、若者の力でグローバルチャレンジをしていきたいですし、そういう企業さんを支援していきたいですね。

──今後の構想、興味があることや実現したいことを教えてください。

「日本を世界で勝たせる」ことをやっていきたいと考えています。日本の「良いもの」を世界で使ってもらえるように発信していき、日本のプレゼンスを上げる取り組みに力を入れたいです。アメリカはマーケットが広いので、将来的には展開していきたいと思っています。中国や韓国の企業など、日本的な商品をアメリカでうまく展開させているケースもあるので、日本の良さ、日本の価値をグローバルマーケットに打ち出せればチャンスはあるはずです。

──そうした「日本の価値」の発信に注力されているのは、昔からですか?

昔からですね。高校1年生でオーストラリアの留学生をホームステイとして受け入れたときには、海外から見た日本の素晴らしいものやカルチャーを教えてもらいました。また、自分自身も海外に行く中で日本の良さを知ることができました。大学では異文化のゼミに参加したり、シンガポールへの留学やアメリカでのバックパック旅行などを経験したり。起業前から、日本への誇りとグローバルへの憧れを持っていました。

でも、近年は日本のプレゼンスがどんどん下がっていて。昔は世界で評価されるブランドがいろいろあったのに、今は変わってしまいました。そこをきちんと残したいという想いがあり、日本の良いものを世界に広めるためにまず、経済成長を遂げているASEANで日本企業のSNSマーケティング支援をしています。

──やりたいことにとことんチャレンジしようと思ったら、今の体制では難しいところがあるかもしれません。

そうですね。現在の会社規模は100人くらいなので、3年後に300人から400人くらいの組織にしていきたいというビジョンはあります。拠点も今は3ヶ国ですけど、今後はタイ、 シンガポール、韓国、台湾などにもチャレンジしたいです。こういった事業拡大を成り立たせるためにはより仲間やソリューションが必要ですし、増やしていかなければなりません。

──海外情勢は国内以上に変化が激しく、それゆえに大槻さんが持っているような「変わることを恐れず常にアップデートできるマインド」が成功のカギになるのは間違いないですね。今日は本当にいい刺激をいただきました。長い時間、ありがとうございました!

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INTERVIEW インタビュー

ファングリー代表の松岡がコンテンツ界隈の方たちをゲストに迎え、「ここだけの話」を掘り下げるインタビュー企画です。

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