Interview
# 11
株式会社COLORFULLY
代表取締役
筒井 まこと(つつい・まこと)
コンテンツプロデュースカンパニーを標榜する株式会社ファングリー代表の松岡でございます。
「コンテンツ界隈ここだけ話」第11話のゲストは、モデルやインフルエンサーと企業をつなぐプラットフォームを運用している株式会社COLORFULLY(カラフリー)の代表・筒井まことさんです。
マイクロインフルエンサーの活用という文脈でファングリーが展開する「オーソライズ」に近いソリューションを展開している点、「女性の新たな働き方の選択肢」としてモデルというテーマを扱っている点など共感する内容が多く、非常に有意義なインタビュー取材となりました。
株式会社COLORFULLY
代表取締役
筒井 まこと(つつい・まこと)
1979年、広島生まれ。株式会社COLORFULLYの代表取締役社長。IT企業に入社し営業として成果を発揮した後、さまざまなビジネスの立ち上げを経験。その過程で制作力の重要性を感じたことをきっかけに「株式会社MONOKROM」を立ち上げ、2017年12月に複業モデルアプリ「週末モデル」をリリースした。2021年、社名を現在の「COLORFULLY(カラフリー)」へ変更。
──『LIFULL STORIES』で取材させていただいたご縁もあり、今回のインタビューを快諾していただきありがとうございます。
こちらこそありがとうございます!
──さっそくですが、カラフリーという会社や手掛けている事業について教えていただけますか?
はい。当社のビジネスは企業のプロモーション支援をメインとしています。事業は大きく二つあって、一つが2013年の設立当初から行っている広告クリエイティブの制作です。もともとはオフラインのクリエイティブが軸でしたが、現在はWebを中心にオンラインもオフラインもやっています。
──2013年というと、ちょうどスマホシフトのタイミングだったと記憶していますが、スマホ用を含めてLP制作のニーズは多かったんじゃないですか?
時代的にはバナー広告やリスティング広告などがWebマーケティングの主流だったので、LP制作は多かったですね。設立当初は代理店を挟まずにやっていきたいと考えており、特にネット広告まわりは大手代理店を通さなくてもできる環境にあったので、エンドクライアントと直接関わりながら広告の制作や運用をやっていました。現在は半々といったところでしょうか。
──もう一つの事業の柱であるプラットフォームサービスはいつからですか?
立ち上げは2017年です。モデルを探している企業に対して登録済みのモデルさんをキャスティングするサービスで、はじめは「週末モデル」という名称でした。「モデル」といっても、パリコレや東京ガールズコレクションのランウェイを歩くような方ではなく、「読者モデル」のイメージが近いですね。
読者モデルと、彼女たちをプロモーションに活用したい企業。サービスをローンチした当時は両者の接点がほとんどなく、モデルを探したい企業は誰かのツテを頼り、その誰かにまた次の誰かを紹介してもらって……といった方法を取るしかなく、非常に手間も費用もかかる状況でした。
──マッチング系のサービスは当時からいろいろありましたが、読者モデルをマッチングするという発想は斬新だったのでは?
はい、モデル系のマッチングサービスはなかったですね。なので、企業とモデルを直接つなげることができればWin-Winだと思い、サービス化を考えるようになりました。もともと広告制作でいろんなモデルさんとお仕事をしていたこともあり、自分たちならできるかなと。
──実際、どのような方法でモデルさんを探したのですか?
先ほどお伝えしたように紹介をいただいたり、街に出てスカウトしてきたり……といった感じですね。
──人海戦術のようなこともされていたんですね。
ここ数年はSNSが自己PRのツールとして普及したことで、そこでいろんなモデルさんを知ったりつながったりできるようになりましたが、割と最近まで本当にそんな感じだったんですよ(汗)。Instagramは偉大です。
「インフルエンサー」という言葉が出てきたのが5年くらい前だったと思いますが、その頃当社では「インフルエンサー事務所になるべきか、モデルキャスティングサービスとして展開すべきか」で悩んでいました。
──なるほどですね。ひと口にモデルと言っても、ニーズはどんどん多様化していますから。
SNSの普及によって「個人で直接発信できる時代」になり、事務所の存在意義が薄れてきました。実際、苦戦しているモデル事務所や芸能事務所があったりしますよね。それと同時に、いわゆる「美人でかわいい」と言われる女性とはまたジャンルが違う、多様性に富んだ女性へのニーズが高まっていました。
──つまり、マッチングプラットフォームがうまくいく土壌はあったと。
はい。多様性が求められるようになり、ニッチなジャンルのモデルが重宝され始めた時期でもありました。
──プラットフォームへの登録は有料ですか?
モデルも企業も、基本的には登録無料です。マッチングが成立したら成果報酬が発生し、企業側からプラットフォームを介して支払われる形です。登録モデルがバラエティに富んでいるので、特化型のモデルをキャスティングしやすいのが強みだと思います。
──現在、モデルや活用側の企業の登録者数について教えてください。
現時点(2024年10月)で、登録モデル数は13,000名ほど、登録企業数は3,900社を超えています。モデルさんの中には、カラフリーを通した活動からインフルエンサーになった方もいます。顔出しをしたい方、しない方を含め、本当にいろんなタイプの方がいますね。その選択肢の広さこそがプラットフォームサービス「カラフリー」の魅力だと思いますし、そういった方々の可能性をさらに広げてあげられるようなサービスでありたいです。
──登録企業やモデルを増やすためにどのようなマーケティング活動をしているのですか?
モデルへの訴求と企業への訴求は別ラインになります。モデルさんに関してはSNS広告やWeb広告が多いですかね。最初は大変でしたが、テレビ番組などで紹介されたりする中で世間的な認知や信用度も高まってきた印象です。
クライアント向けに関しては、はじめは中小企業に使っていただくことを前提に立ち上げたのですが、フタを開けてみたら大手企業もいらっしゃって。モデルを使ったことがない企業も多かったので、そこをカバーするために全部やりますよっていうサービスも用意しています。
──めちゃくちゃ大きなマーケットではないように思いますが、競合やマーケット状況についても教えてください。
ネット広告を使った販促やUGC (User Generated Content/企業側ではなく消費者によって制作・発信されたコンテンツ)展開を検討している企業からのモデルキャスティング需要は年々高まっており、今はSNSを使ったクロスメディア的なプロモーションも当たり前になっています。ただ、ひと口に「モデル」と言ってもいろんな方がいるので、競合やマーケットの捉え方も難しいですよね。私たちとしては、モデル事務所を競合とは考えていないのですが。
──このマーケットをくくる、共通言語になるようなちょうどいいワードカテゴリーがまだないんですよね。
「モデル」という言葉では、どうしても「おしゃれな服を着てランウェイを歩く人」「テレビCMに出ている人」といったイメージになりがちです。でも、先ほども言ったように、企業のプロモーションに求められるモデルさんには本当にいろんなニーズがあります。なので、強いて言えば「読者モデル」や「マイクロインフルエンサー」、「ナノインフルエンサー」といったキーワードになるでしょうか。
イベントのMCや出演など、最近ではモデルの仕事自体が幅広くなっています。なので、キーワードもよりニッチになっている気がします。
──カラフリーは「女性のための複業支援プラットフォーム」をうたっていますよね。これにはどういった想いがあるのでしょうか?
この事業は、もともと副業支援という形で始めたんです。本業と両立しながら週末にモデル活動ができるサービス、だから「週末モデル」。
──なるほど、ストレートですね(笑)。
その後、「週末に副業」という枠にとどまらないほど働き方が多様化したことからサービス名を「カラフリー」へと変更しました。ですが、副業・複業・兼業にチャレンジする女性を支援したい、新しい働き方の選択肢を提供したい、という当時のコンセプトは変わらず大事にしていきたいと考えています。
「昔モデルをやっていたけど、結婚や出産を機にやめてしまった」とか、「モデルに憧れがあって、需要があるならちょっとやってみたい」とか。そういった方たちが、自分の強みを活かして報酬をもらえたらいいなと。
──実際にはどのようなニーズでマッチングがあるのでしょうか?
「モデル=見た目」ではなく、その人の能力を活かせるような仕事をご紹介するケースもあります。例えば、食器を紹介したい企業に対して料理家であるモデルさんをキャスティングし、その方の作った料理とセットで食器を紹介する、といった感じですね。現役ドクターでもあるモデルさんを起用した医療系の案件などもあります。
繰り返しになってしまいますが、今は仕事のバラエティも増え、モデルに対するニーズも変わってきています。そうなると、私たちが目指す方向性や登録者の方が実現したいことと「週末モデル」というネーミングが合致しません。なので、サービス名称を変更したわけです。
──サービス名称の変更はブランディングを意識してのものですよね。自社のブランディング活動についても教えていただけますか?
当社が提供しているサービスの中にはブランディング関連のクリエイティブもあるので、その重要性を会社として理解しているつもりです。そして、主に女性を扱うサービスということもあり、ブランディングに関しては気をつかってもいます。ローンチ当初は「できるだけ分かりやすいサービス名称で」という考え方でしたが、時代や競合状況の変化にともない変えるべきだろうという方向性になりました。
私は「朝令暮改」という四字熟語を”前向きな言葉”と捉えていて、今は「言ったことがすぐ変わる時代、変えるべき時代」だと思っています。なので、短いスパンでリブランディングを実施するというのもまた正しいことなのかなと。
──現在はサービス名も社名も「カラフリー」ですが、以前の社名は「モノクロム」だったと伺いました。社名変更にはどんな意味があったのでしょうか?
モノクロムはデンマーク語で「白黒」。「色鮮やか」という意味を持つカラフリーとは正反対の印象ですよね。でも、実は言葉に込めた想いは似ているんです。というのも、モノクロムというのは裏方視点の言葉であり、「関わる人たちをカラフルにしたい」という意味合いがあったからです。このときから奥底にはカラフリーの信念がありました。ただ、この社名だとやっていることを理解してもらいにくかったんです(笑)。それで、「サービス名=社名」へと変更しました。これによって、プラットフォーム事業をより大きくしていくための土台は整ったかなと思っています。
──近年では、AIとコンテンツ制作は切っても切り離せない関係になりつつありますよね。特に広告の領域ではかなり進んでいる印象です。
気になっているのは、AI技術を活用したモデルキャスティングサービスです。というのも、バナー広告やSNS広告などの運用を手がけている経験から、広告領域のAIモデル活用はけっこう可能性があるなと思っていて。
実際、広告領域におけるAI活用によってモデル業界も変わってきています。技術の革新とか新たな活用法とかがここ1~2年くらいでどんどん進んでいて、本当にスピードが早すぎます(笑)。生成AIで制作された人を広告に用いる点には賛否両論ありますが、モデルキャスティングに活用していくための議論は避けて通れないところまで来ていますね。
──「AIドル」など、実際にAIモデル(AIタレント)生成をサービス化している企業もありますよね。AIモデルの運用にあたってはどんなニーズや課題があるのでしょう?
AIモデルでは実在する人物のデータをペルソナとして設定するケースがあります。そういったケースにおいて、「どんな人物データを使えるのか」「その人物データはちゃんと許可を得たものか」を気にしたり、特定のモデルがいることを重要視したりする企業は少なくありません。
──そこは実際のモデルと同じような管理が求められるわけですね。
そうです。なので、リアルモデルの人物データをたくさん持っていて、かつ適切に管理しているというのは、そういった企業に対して大きな強みになります。
そして、AIモデルは納期の面でもメリットが大きいんですよね。撮影のために何日も何週間も待ったりする必要がなく、基本的に撮影のやり直しも発生しません。何パターンにも増やせるのでABテストもしやすく、コスト面でも悪いことは何もない。そして、モデルさん側にもメリットがあります。データを登録しておけば本人は稼働しなくてもフィーが入ってくるので、新しい稼ぎ方ができるんです。
──人物データ管理以外にも課題はあったりするのでしょうか?
写真でも動画でもそうですが、AIモデルというと「日本人設定なのになぜか顔が日本人っぽくない」というケースがあったりしませんか?例えば、アジアンチックな女性だったりとか。
現状の日本人AIモデルは中国や東南アジアなどアジア系の人物データを多く使って作っているので、「日本人らしいAIモデル」が作れないんです。先ほどのお話につながりますが、日本人リアルモデルの人物データを活用することでこの課題は解消できます。
──現在の関心領域や今後の取り組みや展望があれば教えてください。
今は世界規模、地球規模で変化の時期にありますよね。その影響でウチの事業がダメになる可能性もありますし、逆に大きく好転することも考えられます。なので、いかにしっかり世の中の状況を見て対応するかが重要です。その意味で、今最も関心があるのは世界情勢と言えるかもしれません。心配込みで(笑)。
──サービスの海外展開はお考えですか?
オンラインサービスなのでやりやすいとは思っています。日本は総人口が1.2億人程度で、今後減っていくことが分かっています。そういった状況なので、7億人、8億人を相手にできるのは大きい。需要はどこの国にもありますし、現地の企業が現地のモデルさんを使うこともできるようになるのです。そうなると、海外への展開を急ぐことも必要かなと。
──ちなみに今、個人的に気になっている人はいますか?
海外の経営者などたくさんいるんですけど、モデル関係では岡田紗佳さんが気になっています。グラビアアイドルから入って好きな麻雀の世界でプロになった方で、プロデュース力の高さから今はいろんな方面で活躍されていますよね。彼女のようなモデルさんがウチのプラットフォームから出てきてくれたら嬉しいです。
「カラフリー」の登録では、出身や国籍を問いません。今お名前を出した岡田さんは中国にルーツがある方ですが、海外から見た日本人の価値は割と高い気がするので、日本人モデルの方を海外で起用するケースも今後増えてくるのではないかと思います。
──モデルキャスティングが非常にスピード感のある業界であることがよくわかりました。「カラフリー」が今後どのような進化を遂げるのかにも注目ですね。本日はありがとうございました!
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