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Interview

# 44

「約400億円の売上を10年で倍にする」Francfrancの勝ち筋約90%の高い認知率を、価値につなげる新たな成長戦略

株式会社アインファーマシーズ

Francfranc事業部長

佐伯 佑介(さえき・ゆうすけ)

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コンテンツプロデュースカンパニーとして、企業のコンテンツマーケティングやブランディング活動を伴走支援する株式会社ファングリーの代表・松岡でございます。

「コンテンツ界隈ここだけの話」第44話のゲストは、株式会社アインファーマシーズでFrancfranc事業部長を務める佐伯佑介さんです。約90%という非常に高い認知率を誇る人気インテリアショップ「Francfranc(フランフラン)」が、400億円規模の売上水準からさらなる躍進を目指すために掲げる新たな成長戦略とは――。

高い知名度の一方で直面している「年間購入回数」の壁やそれを打ち破る施策、トレンドのモーメントを捉えた商品開発の仕組み、広告やコラボレーションに対する考え方、そして挑戦を促す組織風土づくりまで、仕掛け人である佐伯さんに詳しく伺いました。

佐伯 佑介(さえき・ゆうすけ)

株式会社アインファーマシーズ

Francfranc事業部長

佐伯 佑介(さえき・ゆうすけ)

2004年に株式会社日立製作所へ入社し、システム開発などに従事。2011年に株式会社ドリームインキュベータ、2015年にスマートキャピタル株式会社へ移籍し、2016年より株式会社Francfrancの経営企画に携わる。2021年に株式会社Francfrancへ正式入社し、以降は経営企画部門、サプライチェーン管掌、商品部門などの責任者を歴任。現在は株式会社Francfranc(2024年に株式会社アインホールディングスの完全子会社化)の常務執行役員および株式会社アインファーマシーズのFrancfranc事業部長として、ブランド戦略や事業全般の指揮を執っている。

ファイナンシャルアドバイザー時代にFrancfrancがお客様だった

――早速ですが、まずは佐伯さんのご経歴を教えていただけますか?

学生の頃は「技術で日本を救う」という思いがあり、社会インフラの仕事がしたくて新卒で日立製作所へ入社しました。その後、事業経営に携わるため一念発起し、2011年にドリームインキュベータへ入社しました。さらにファイナンスの能力を身に付けたいとの思いから、コンサルティングファームに業態が近い、M&A領域を得意とするFA企業に転職しました。

実は、そのFA時代のクライアントがFrancfrancだったんです。ジョインした当初は経営企画を担当し、その後、サプライチェーンや商品の管掌などを経て現在に至ります。

――幅広いキャリアですが、筋が通っていますね。現在のポジションや担当領域、ミッションについても教えていただけますか?

現在は事業責任者として、Francfrancの事業全体を見ています。株式会社アインホールディングスのグループ内にアインファーマシーズという事業運営会社があり、さらにその中に調剤薬局やコスメティックストアのAINZ & TULPE(アインズ&トルペ)などの事業部門があります。Francfrancは、アインファーマシーズ内の事業部(Francfranc事業部)という位置付けです。

少しややこしいのですが株式会社Francfranc自体も存続しており、そちらでは商品の企画や輸入などを行っています。私はアインファーマシーズの事業部長であり、株式会社Francfrancの執行役員も兼ねています。

――経営企画から事業責任者になられた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

コンサルティングやFAをしていたのはファイナンスを学ぶためであり、それを生業にしたいというわけではありませんでした。それよりは、「事業を動かしたい」という思いのほうが強かったんです。それまで販売の経験はなかったので、最初はファイナンスやコンサル的アプローチでアウトプットを出しやすい商品企画やサプライチェーンの領域から入りました。物流領域のコンサルティング経験があったので、当時の社長にお願いしてサプライチェーン部門に異動させていただいて。

商品会社なのでサプライチェーンの仕事は非常に楽しく、気付けば商品開発を含めて管掌するようになっていました。その頃から「事業全体を運営すること」を少しずつ意識し始めて、販売部門のトップも経験して今に至る、という流れです。自分がやりたいことを実現してきたという感覚は、完全にありますね(笑)。

組織として意思決定していく必要性とそのプロセスの仕組み化

――佐伯さんから見て、現在のFrancfrancの市場におけるポジションや強み、届けている価値についてはどう捉えていますか?

強みは明確にお客様の基盤にあります。マスを狙うインテリア雑貨企業は多くありますが、私たちは積極的にはマスを狙わず、ターゲットを絞り込み、その方々の価値観を理解しながら「代弁者」として企画・提案を行っている点が大きな特徴だと思っています。

そしてもう一つ、強みとしてあるのが「若年女性向けのブランド」であり続けていることです。Francfrancは来年でブランド設立35周年を迎えますが、そこは35年前も現在も一貫しています。

――一般的に、ターゲットとなるお客様と一緒にブランドも歳を取っていくケースが多いですよね。

はい。ですが私たちFrancfrancには「若年女性の価値観の代弁者であり続ける」 というDNAがあります。頑張って100年後も若い女性たちの価値観を代弁する存在でありたいですし、そのDNAと文化を持っていることはブランドとして大きな強みですね。

――しかも35年間というのはすごいですね。ターゲット層を変えずに提案し続けられるDNAは、なぜ維持できているのでしょうか?

理由は2点あると思っています。一つは開発チームやマーケティングチームそのものが新陳代謝を繰り返し、常にターゲット世代の感覚を理解できるメンバーで構成されていること。もう一つは、秋冬・春夏で商品を入れ替える際、「何を作るか」ではなく「どのようなオケージョン(機会)やモーメント(場面・瞬間)に対して価値を提供するのか」というレベルから決めている点です。

世相やトレンドを踏まえて商品を企画するため、自然と今の若者のフィルターを通すことになります。例えば、「昭和ノスタルジー」がブームになった際には、それを捉えて開発した純喫茶風の食器類が大ヒットしました。企画がうまくいったのはトレンドやオケージョン、モーメントを理解し、ターゲットのフィルターを通して再定義する仕組みができているからです。

――そのプロセスや仕組みは、佐伯さんが構築されたのですか?

私が商品部門のトップになった際に改定、再定義しました。商品開発から店頭で訴求するまでのステップを35個ほどのプロセスに細分化して落とし込み、市場の動きやトレンドを捉えられる仕組みにしています。

――ターゲットは「若い女性」ということですが、具体的にはどのように定義されているのですか?

「20代女性」や「30代女性」といった大まかな定義ではなく、価値観をフィルターにしてクラスタリングを行っています。価値観クラスターの分類は全部で9つ。単に「安ければいい」という層ではなく、「生活を豊かにするためにどのような工夫や暮らしをすべきか」という価値観への共感度が高いクラスターをターゲットに設定し、その方々に向けてモノづくりや売り場づくり、プロモーションを展開しています。

――そうした仕組みや考え方は、関係するメンバーにしっかり浸透しているのでしょうか?

私が正式に入社した当時は個人の感覚に頼っていた部分もあり、創業者の時代は社長自身のインプットと直感で決定していた部分も多かったと思います。現在は組織として意思決定を実行していく必要があると判断し、体制が変わるタイミングでプロセスの共通化を進めました。具体的にはここ3年ほどで仕組み化し、共通理解として浸透を図ってきました。

――佐伯さんの正式入社は2021年でしたね。入社されて5年ほどで、具体的な数値や商品戦略、組織戦略で明確に変わった部分はありますか?

外部環境の影響もあり、祖業であった家具の売上比率は下がり続けています。世間的にも「Francfranc=家具のお店」というイメージは薄れてきており、今では「Francfranc=インテリア雑貨のお店」のイメージのほうが強くなっている気がしますね。このあたりは大きな変化と言えるのではないでしょうか。

その一方で、アパレルファッションやヘルス&ビューティーといった領域の売上構成比は増え続けています。特にUSB充電式携帯扇風機「フレ ハンディファン」などの季節商品は、年間150万台以上を売り上げるヒット商品になりました。「これから日本は絶対に暑くなる」という季節のモーメントと、すべての小物がパーソナル化していくトレンドを捉え、2018年頃から商品企画を展開してきた結果、このジャンルの先駆けとしてトップシェアの獲得につながっています。



季節的なモチベーションが高まらない時期だからこそ話題になる

――マーケティング戦略や具体的な施策について、手応えのある部分や逆に課題を感じている部分について教えてください。

新商品やシーズナルアイテムの打ち出しにおいては、お客様のモーメントに合わせたクリエイティブや媒体展開を一気通貫で行えているので、かけている予算の割に大きなインパクトを出せています。ここも、スタッフがお客様のモーメントを理解してくれていること、どういう価値を提供するかが組織として明確なことが大きいですね。

一方で課題に感じているのは、通年で販売するルームフレグランスやタオル、食器といった定番商品の売上構成比が伸び悩む点です。また、シーズン商品は販売期間が決まっているため在庫管理が難しく、マーケティングがうまくいきすぎると欠品が発生してしまうという負の側面もあります。

――在庫ビジネスの悩ましい部分ですね。ブランド全体のマーケティングを強化して、ベースとなる購買を底上げしていく必要がありそうです。現在のFrancfrancの国内のブランド認知率はどれくらいあるのでしょうか?

認知率は9割ほどと理解しています。売上400億円程度のブランドとしては、非常に高い数字だと思います。ですがその一方で、9割近く認知されているにもかかわらず、売上が400億円前後で横ばいになっているという現実があります。この点は課題だと思っています。

お客様の来店頻度はおおむね月1回から2ヶ月に1回程度となっており、そこまで低くありません。ですが、年間購入回数は他のブランドに比べて少ない状態です。現状、お客様の中に「Francfrancはかわいいけど、キュートすぎて自分には無理かも」といった誤解やイメージの固定化があるんじゃないかと考えていて。これをマーケティングの力で解消し、日常の購入機会を増やしていきたいと思っています。モノもちゃんとしているし、伝え方を変えればもっと伸びていくはずです。

――ターゲットへのメッセージをしっかり届けるための施策として、SNSやデジタル広告、店舗との連動についてはどのように取り組んでいますか?

SNSやCRMを通じた既存ファンへの情報発信には、非常に手応えを感じています。今後はさらに広告やPRへの投資を増やし、新規顧客へのプッシュを強めていく方針です。

店舗とECの役割で言えば、メインは店舗です。EC比率はコロナで一度グンと上がった時期もありましたが、現在は全体の2割弱ほどで落ち着いています。商品を使った空間コーディネートやブランド全体の提案力を体感してもらう場所、それが店舗であり、そこに商品の機能性や詳細な使い方をしっかり説明して補完する役割としてECを連携させているイメージです。指標としては単純な売上だけでなく、SNSでのリーチ数やメディア露出など、施策ごとの細かいKPIを注視しています。

――あくまで店舗が持つ提案力を活かすためのデジタルマーケティング、という役割の再定義ですね。店舗でしか表現できないストーリーは確かにあると思います。他ブランドとのコラボレーションやタレント起用については、何か選定基準があるのでしょうか?

コラボについては、パートナーとなるブランドのアイデンティティや世界観、トレンドへの敏感さを基準に選定しています。例えば、直近では人気スイーツブランドと食器類をコラボ展開し、大きな話題になりました。その他にも、ファッションブランドや人気キャラクターなど、お客様に驚きや新鮮さを提供できるブランドとの企画を実現させました。

春の新生活関連、夏の暑さ対策関連、そして冬のクリスマス関連といった季節的な需要が落ち込みやすい時期にインパクトのあるコラボや施策をぶつけることで、購買の動機付けを行い、トレンドの波を作りたいと考えています。

――季節的な需要が落ち込みやすいタイミングで、特に重要だと捉えている時期はありますか?

9月ですね。近年は「四季がなくなっている」と言われていて、秋は中途半端に暑い日が多い。どうしても季節的なモチベーションが高まらないんですよね。アパレルも化粧品も、秋冬の新商品に対する反応は昔より鈍くなっていると思います。だからこそ、この時期にコラボを打てると話題になる。そこを狙っていきたいですね。

また、近々の大きな施策として、ブランドイメージをアップデートするための大規模なプロモーションやタレントを起用したテレビCMなども視野に入れた発信を計画しています。キュートさだけでなく、「大人も使える」「トレンドを押さえている」という先進性やターゲットに対する安心感をしっかり伝えていく狙いです。

――今後の事業目標や、佐伯さんが関心を持っていることについて教えてください。

Francfrancの事業単体としては、10年ほどかけて現在の売上の倍以上(800億円以上)を目指していきたいと考えています。そのためには、店舗数の拡大(2026年8月時点で国内156店舗)や、マーチャンダイジング(商品計画)の改革、年間購入回数の引き上げなどが不可欠なので、そこを頑張りたいですね。

個人として今最も関心があるのは「組織作り」です。かつてのような強いトップダウン型のリーダーシップではなく、現場のメンバー一人ひとりがチャレンジし、自ら意思決定して修正しながら進んでいける組織を作りたいと考えています。私自身、「前に転べ(前向きな失敗を恐れるな)」という言葉が好きで大切にしています。前向きにチャレンジして失敗する分には、すぐに立ち上がることができますから。

SPA(製造小売り)のモデルはどこも似通ってきています。だからこそ、サプライチェーン、商品開発、コミュニケーションの各現場でいかにイノベーションを起こせるかが勝負です。メンバーが生き生きとチャレンジできる環境と仕組みを作り、ブランドのさらなる成長を牽引していきたいと考えています。

――35年にわたってFrancfrancというブランドが歳を取ることなく、ターゲットを一切ぶらさずに成長を続けてきたことは驚異的だと思います。さらに成熟期を迎えたブランドが「10年で売上を倍以上にする」という高い目標を掲げ、改革に挑むポジティブな姿は、ブランドビジネスに関わる人にとっては大きな勇気を与えてくれます。今後、佐伯さんがどのようなアプローチでそれを実現するのか非常に楽しみです。本日はありがとうございました!

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