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Interview

# 5

異業種とのコラボレーションで日本酒の新たな可能性を切り拓く|イベントプロデュースのノウハウを全投入

SAKE JAPAN 株式会社

代表取締役

西條 智洋(さいじょう・ともひろ)

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コンテンツプロデュースカンパニーを標榜する株式会社ファングリーの代表・松岡です。「コンテンツ界隈ここだけ話」の第5話は、新しい日本酒カルチャーを創るべく奔走しているSAKE JAPAN 株式会社の西條智洋さんがゲスト!

西條さんは、約20年にわたって国内外のイベント・プロモーションの企画や演出に関わってきたいわば「見せ方(魅せ方)」のプロです。ファングリーもクライアントのブランディング支援を手掛ける立場から、「日本酒業界のブランディング」に関する取り組みや気になるノウハウについてお話を伺いました。

西條 智洋(さいじょう・ともひろ)

SAKE JAPAN 株式会社

代表取締役

西條 智洋(さいじょう・ともひろ)

SAKE JAPAN 株式会社の代表取締役で、STARK クリエイティブオフィス代表。世界のエンターテインメント界を股にかけて活動する演出家で、超一流アーティストや大規模イベント・プロモーションなどの企画や演出を手掛ける。数々の飲食イベントやプロデュースが評価されたことを受け、2022年、世界へ日本酒文化を発信すべくSAKE JAPAN 株式会社を設立。

きっかけは飲食店やコミュニティスペースのプロデュース

──取材のお時間をいただきありがとうございます。現在は日本酒業界のブランディングに関わっているということで、お話が聞けるのを楽しみにしていました。

声をかけていただきありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

──はじめに、西條さんの「これまで」についてお聞きしたいです。SAKE JAPANの創業は2022年ですが、それまでは何を?

20年来イベントの企画制作や演出を手掛けていて、現在もアクティブに活動しています。服飾関係の専門学校にいた18歳のときから、ファッションショーを自分たちで開催していたんですよね。その流れで、当時の仲間とイベント企画制作会社を作ったのが20歳のとき。そこから約20年、演出家やプロデューサーとしてさまざまなイベントやプロモーションの企画に関わってきました。今はSTARK クリエイティブオフィス の代表として、SAKE JAPANの業務と連動しながら活動しています。

──演出家やプロデューサーとして活躍されてきた中で、SAKE JAPANを立ち上げた経緯について教えていただけますか?

大阪での仕事をメインにしつつ、東京でも事業を展開するという形で長くやってきたのですが、コロナ禍となりイベントというイベントがことごとく開催できなくなってしまいました。……日本中のイベント業自体がピタッと止まってしまったんです。

──イベント業やプロモーションの仕事をされている方は、特に打撃が大きかったでしょうね。

そうなんです。そしてちょうどイベントを開催できずにいたとき、「天王洲(東京)にあるイベントスペース兼コミュニティスペースのプロデュース相談」のお話がありました。そこで、イベント企画のノウハウを使いながら1年間プロデュースをさせていただきました。

コミュニティスペースにはキッチン、カフェスペースなどの飲食店もあり、その中で酒蔵さんを呼んで日本酒関連のイベントを開催する流れになったんです。

──コミュニティスペースのプロデュースから日本酒につながっていくんですね。

意外ですよね(笑)。イベントはチケット制で、来てくださったお客さんに料理と日本酒のマリアージュを提供しました。私自身、それまでは積極的に日本酒を飲むという習慣がなくて……。というより、20代のときに飲んだ日本酒に対して、あまり美味しいというイメージを持っていなかったんですよ。

ただ、何年ぶりかで飲んだ日本酒はとても美味しかったですね。「瀬戸酒造店」という神奈川の酒蔵さんでした。そこの蔵元さんが、もともと橋の設計をされていて、アルコールを1滴も飲めないという珍しい方で(笑)。ただ日本酒の魅せ方やデザイン、世界進出に対する想いなどがとても面白く、衝撃を受けたのを今でも覚えています。

こうしたイベントの企画・開催を何回か経て、SAKE JAPANを創立しました。会社の登記は2022年4月なので、まだ設立から2年ちょっとという若い会社です。

──日本酒業界のプロデュースやブランディングというのは、これまであまりなかったのでしょうか?

蔵元さんとの話でよく出ていたのが、日本では日本酒離れが顕著だということ。コロナ禍で「宅飲み」の需要は増えたのですが、それはビールやチューハイ、ワインの話。やっぱり、日本酒ってなかなか手を出しづらいみたいなんです。実際、国税庁の調査データなどを見ても酒蔵の数は減少しています。

──企業が酒蔵を買って、酒蔵の復興を目指しながらリブランディングするケースも増えているみたいですね。

ええ。「日本酒を日本文化として継承していきたい」という感情的な動機が当初は大きかったのですが、私たちにはこれまでイベントで培ったプロデュース力があるので「それを活かせるかも」という視点はありました。「得意分野であるイベントプロデュースのノウハウを通じて、いい日本酒を造っている蔵元さんを笑顔にしたい」という思いから始まったのがSAKE JAPANですね。ターゲットは主に日本の若い層、特に女性です。そして海外。その両軸で進めています。

──インバウンド需要はもちろんですが、海外のマーケットはめちゃくちゃ伸びそうですね。

はい。でも、結局日本で作ったものをメイドインジャパンとして打ち出すにあたっては、日本の若くて発信力がある方に「美味しい」と認識してもらい、好きになってもらうことが欠かせないと思うんです。そうなっていない状態で海外のみに向けて発信したところで、「ハリボテ」のようになってしまう気がするので……。なので、「進めるなら国内と海外の両軸で」というのが私たちのこだわりですね。


「日本酒を普段飲まない方」にどうリーチすればいいのか

──「日本の若い層、特に女性がターゲット」と言われましたが、その理由について詳しく教えてください。

日本酒を「おしゃれに、美味しく飲んでほしい」「もっと手軽に手に取ってほしい」と思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが若い女性でした。今の若い方たちは、ビールやワインは飲んでも日本酒はあまり飲まないですよね。一合が何ccなのか、一升が何リットルなのか分からないんじゃないかなと思っていて。日本の文化、日本酒の文化を伝えていく中で、そういったところから変えていきたいと思いました。

──日本酒って「一升瓶」のイメージがあるじゃないですか? あれを見ると、多分カジュアルにお酒を飲みたい若い子はちょっと抵抗ありますよね(笑)。

そうかもしれません(笑)。まだまだ日本酒には良くも悪くも「大人が飲むお酒」といったイメージがあると思っているので、そこを変えていくことも重要ですね。

──以前あるイベントで「地方の酒蔵の復興」を目指して新しい和酒を造っているナオライさんにお話を伺ったことがあって、そこで「浄酎」という不思議な味わいの日本酒を飲んだことがあります。

皆さん非常に素晴らしい、日本酒や国産酒をさまざまなジャンルで造っているので、お酒好きの方がそういった魅力的な商品に出会える機会を増やすのは、ブランディング視点で非常に大事ですよね。私たちも昨年に「SAKE JAPAN EXPO 2023」、今年5月にはEXPOも含めた「SAKE JAPAN WEEK in TOKYO」というイベントを開催しましたが、全国のさまざまな日本酒や国産酒が一堂に会するようなイベントって本当に面白いなと常々思っています。

──ネットワークづくりは、どういった感じでやられているのですか?

そこが私たちの強みでもあるのですが、日本酒とはまったく別の業界の方をお招きして、日本酒の良さを伝え広げることを大事にしています。アーティストの方とか、タレントの方とか、書道家さんとかさまざまですね。こういった方々に日本酒の魅力を発信していただき、若い年代の方に楽しんでもらえるのが、私たちのイベントの良さだと思っています。

──事業展開についてお聞きしたいです。現在は何名体制でやっているのでしょうか?

基本的には広報の田口と私で戦略・企画・演出・運営などを含めすべてやっていますが、周りに協力してくださる方が本当にたくさんいまして!そういった方や企業さんとともにイベントをつくっているイメージです。運営やクリエイティブのリソースは、フリーランスのメンバーにご協力いただいています。

──オリジナルのコラボ商品も販売されていますが、これはいろんなところで需要ありそうですね。

日本酒の販売を伸ばしていくにあたって、コラボ企画やラベルのデザイン、ネーミングなどは結構重要だと思っています。先ほども言ったように、私たちのメインターゲットは若い女性や海外の日本好きの方といった「日本酒を普段飲まない方」です。そこにどうやってリーチすればいいかを日々すごく考えています。

──最近だと、どういったコラボを実施したのでしょう?

直近で実施したのは今年の2月14日で、クラリネット・サックス奏者の辻本美博さんとのコラボレーション企画イベントでした。辻本さんの誕生日がバレンタインデー当日ということもあり、一緒にギフトセットを作成。辻本さんのファンの方の手元に、辻本さんの誕生日当日にそれが届くという企画でした。ファンの皆さん、とても喜んでくれましたね。

バレンタインだったので、熊本の「瑞鷹」という日本酒でもすごく人気がある酒蔵さんが出している、チョコレートリキュール「Chocolat ZUIYO(ショコラ・ズイヨウ)」をメインにしたギフトセットにしました。現在動いているプロジェクトでは、あるアイドルの方やアーティストの方とオリジナル商品を作っています。今後はアニメタイアップやタレントさんとのコラボもいろいろ計画していますよ。

──ブランディング面では、どのようなことを意識されていますか?

酒蔵だけでなく、SAKE JAPANについても認知してもらうことですかね。コラボ商品の企画やイベントの運営など、日本酒業界の方がやらないようなことを手掛けているところがブランドとしての強みじゃないかな、と。コラボに関しても「ただ売上を増やしたい」というのではなく、異なる価値観とのシナジーを狙った企画を意識しています。今年の春には日本語学校さんの企画にも関わらせていただき、新校舎竣工の記念にオリジナルラベルの日本酒を贈呈するという取り組みも行いました。

コラボにおける「組み合わせの意外性」は大事にしていますが、イベントをどんどん世界に向けて発信していきたいという思いもあるので、書道家さんのように日本文化に関わる方を率先してキャスティングしているという側面はあります。演出に「和」の要素が入っていると、海外の方にも分かりやすいですしね。


「地方は地方」ではなく、人が集まる場所に情報の矢印を向けたい

──クリエイティブのディレクションも西條さんがやられているのでしょうか?

はい。カップルや若い女性たちだけの参加者がもっと増えるように、イベントはとにかく敷居を低くしたい。そして日本酒が好きではない方、日本酒をよく知らない方も気軽に参加してもらえるイベントにしたい、という思いでクリエイティブディレクションに関わっています。

また、クリエイティブでは和の要素・モチーフを残すことも意識しています。細かいですが、イベントデザインとして酒樽の上に亀や鶴を乗せるとか。提灯や撮影用スペース、ポスターなど、イベントで使う「リアルなクリエイティブ」は大事にしています。

ですが、Web上のクリエイティブについてはそこまで力を入れられていないんです。SAKE JAPANはまだできて2年と少し、メンバーも少ないので、常にトライアンドエラーを繰り返しながらベストな形を模索しているところです。

酒蔵さんの負担を減らしつつ、満足度を高めたいと考えているので、今のところWeb上で積極的に広告宣伝を打つことも考えていません。地方創生の観点から事業に使える国の助成金制度などを活用していければ、またアプローチは変わってくると思います。

──日本酒ブランドの展望はいかがですか?

今まで日本酒の文化って、各地の地酒は各地で消費される、といった流れが一般的だったと思うんです。そのため、当地ではよく知られている銘柄でも一歩外に出ればほとんど知られていない、ということも珍しくありませんでした。しかし今日では、インターネットの普及や物流の発展に合わせて、いろいろな場所でさまざまなお酒を楽しめるようになっています。なので、「地方は地方」ではなく、東京や大阪といった人が集まる場所に対して情報の矢印を向けていきたいですね。

酒造組合が都内でイベントをやることは多いのですが、「毎年来場される方が同じ」といった意見もありました。若い層や新しいファンを増やせていない現状も、若者が入りづらい雰囲気につながっていたのかもしれません。そういった課題を解消する意味でも、私たちが地方創生も含めて地域のプロモーションを請け負う意義はあるはずです。お酒のPRをきっかけとして酒蔵見学に参加する若い人が増える、といった流れも作れればより親和性が高くなると思います。その意味でも、地方にある酒蔵さんとの連携はすごく重要ですね。

──グローバル展開については具体的なプランはあるのでしょうか?

国内でやっているイベントを海外で開催するイメージで、グローバル展開も考えています。「SAKE JAPAN EXPO in 〇〇」みたいな感じで。日本の蔵元さんにも同行していただき、日本文化・日本酒文化を五感で楽しめる内容にできればと思っています。

フランスに親日家や日本アニメ好きな方が多いというのは知られていますが、実は日本酒のファンの方もめちゃくちゃ多かったりするんですよ。向こうで品評会をやっていたりもしますしね。アジア圏でも、宗教上の問題がない国には日本酒が好きな方もたくさんいます。

──コンテンツマーケティングはこれから本腰を入れられる?

やりたいことの構想はありますが、まだ準備段階です(笑)。今回の記事も含め、各種メディアなどで、リアルに伝えていくっていうのはありかもしれません。これまであまりしてこなかったのですが、「酒蔵のスピーカーになること」の重要性を感じてきました。あと、ECを兼ねたオウンドメディアもやりたいんですよね。

──活動の幅が広くステークホルダーも多そうなので、情報を集約したメディアはありですよね。オウンドメディアを核にしながら、ソーシャルやリアルイベントで発信していくという。

はい、まさにそれがやりたいんです。相談させてください(笑)。

──C-NAPSの読者向けに、西條さんならではの企画やプロデュースの秘訣というか、ノウハウみたいなものはありますか?

私、超がつくほどアナログ人間なので(笑)、企画のタネは全部ノートに走り書きでメモしています。大事にしているのは、シンプルですが内容がほかと被らないこと。なので、類似イベントのリサーチはとことんやります。未開拓のテーマをどんどん広げていくのが自分のやり方なので、そこで他と差別化できればと考えています。同じコミュニティの方たちとばかり話をしていると新しい企画が出にくいので、年齢問わず、業界問わず、できるだけいろんな方と接点を持つことも重視しています。

──ちなみに、「今興味を持っているジャンル」や「つながりたい人」などはありますか?

たくさんありますね。「どんな方でも」って言ったら変ですけど、私たちの活動を面白いと思ってくださる企業さんや個人の方とはどんどんお話をしていきたいです。

「つながりたい人」で言えば、日本酒好きなデザイナーやライターといったクリエイターさんですかね。イベントやプロモーションにおいてはクリエイターさんの力が不可欠ですので。「日本酒が好き」「一緒に何か作りたい」といったエネルギーのある方とお仕事ができたらより楽しいだろうなと思います。

──ファングリーのミッション「コンテンツの力で共創の機会を増やす」という考え方に通じるものが多く、いつかSAKE JAPANさんと一緒にお仕事できる機会があれば面白そうですね!本日は長丁場、ありがとうございました!

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INTERVIEW インタビュー

ファングリー代表の松岡がコンテンツ界隈の方たちをゲストに迎え、「ここだけの話」を掘り下げるインタビュー企画です。

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