※プラスシーブイ株式会社より寄稿いただいた内容を掲載しています。
「会社のロゴはあるけれど、今の会社の雰囲気と合っていない気がする」
「創業当時のロゴを使い続けているが、高い認知効果を得られているのか分からない」
このような悩みを抱えている経営者やマーケターは少なくないのではないでしょうか。
ロゴは、企業や商品・サービスの顔です。しかし「とりあえずカッコよければいい」という認識のまま制作が進んでしまうケースも多く、結果として企業や商品のブランド強化につながっていないロゴが、世の中にはあふれています。
本記事では、ブランディングにおけるロゴの本質的な役割をあらためて整理した上で、プラスシーブイ株式会社が実際の現場で実践しているロゴ制作のフローとノウハウを公開します。
ただ「カッコいい」で終わらない、ブランドを育てるロゴの作り方を知りたい方にとって、参考になれば幸いです。
目次
ブランド(brand)という言葉の語源は、古ノルド語の「brandr(ブランドル) = 焼く」という動詞に由来しています。放牧した牛が混在しないよう、所有者を示す焼き印を押すことで「これは誰のものか」を視覚的に識別するための行為——これがブランディングの原点です。
家畜への焼き印という行為そのものの歴史は古く、紀元前2700年ごろの古代エジプトの墳墓壁画にも、牛へのブランディングを描いたとされる図像が残っています。また古代ローマでも同様の慣習があったことが文献に記されており、その後ヨーロッパ全土へ広がっていきました。
とくに大規模な牧畜文化が根付いていたスペインでは組織的な焼き印の運用が発展し、1500年代には征服者エルナン・コルテスらによって新大陸へも持ち込まれたとされています(諸説あり)。
この発想は、時代や文化を超えて人類の歴史の中で普遍的に用いられてきました。例えば、戦場や航海において自軍や自国の船を遠くからでも識別できるように作成された「国旗」はその一例です。
日本においては「家紋」が同じような役割を担い、武家社会における「家」の象徴として、衣服・器・建築物など生活のあらゆる場面に用いられてきました。世界を見渡しても、識別や差別化のために視覚的なシンボルが使われてきたという事実は、数え切れないほど多く存在します。
現代の企業ロゴやサービスロゴは、この長い歴史の延長線上にあります。「誰が作ったものか」「どの企業のサービスか」を瞬時に伝えるという本質的な役割は、牛の焼き印と変わりません。
ルイ・ヴィトンのモノグラム、シャネルのダブルC、エルメスの馬車——。いわゆる高級ブランドのロゴが強力なパワーを持つのは、それが単なる「優れた装飾だから」ではなく、品質・歴史・価値観という目に見えない資産を可視化しているからです。
ここでは、ブランディングにロゴが不可欠な理由を紹介します。
MVV(Mission / Vision / Value)やブランドブックに記された言葉は、読まなければ伝わりません。
一方で、ロゴは違います。ロゴは名刺を差し出した瞬間、Webサイトを開いた瞬間、店頭に置かれた商品を手に取った瞬間——。こうしたタイミングで言語を介さずに、瞬時に「何か」を伝えることができます。
その「何か」こそが、ブランドの本質です。洗練されているのか、それとも親しみやすいのか。革新的なのか、あるいは伝統的なのか。ロゴが放つ印象は、企業とターゲットの最初の接点において、大きな意味を持ちます。それゆえ、ロゴは企業の「視覚的アイデンティティ」の中核を担う存在と言われることもあります。
ロゴのもうひとつの重要な役割は、消費者とのコミュニケーションの接点(タッチポイント)に統一感をもたらすことです。名刺・Webサイト・パンフレット・SNSのアイコン・店舗の看板・商品パッケージなど、これらすべてに同じロゴが使われることで、ターゲットの記憶に蓄積されるブランドの印象は徐々に強固になっていきます。
一方、媒体ごとにロゴのサイズや色、余白などがバラバラに扱われていると、たとえ同じ企業であっても統一感が損なわれ、信頼感の醸成が妨げられるといったデメリットがあります。ロゴは単なる「デザインのパーツ」ではなく、「ブランドの一貫性を担保するシステム」として機能するものです。
ロゴ制作は、デザイナーの感性だけで完結するものではありません。ヒアリング・言語化・コンセプト設計・検証というプロセスを経て、はじめてブランドに根ざした強いロゴが生まれます。
ここでは、当社が実践している制作フローを公開します。
制作したロゴがビジネス成果を生むか否かは、デザインを始める前の段階でほぼ決まります。
まず取り組むべきは、クライアントへの徹底したヒアリングです。「どんなロゴにしたいか」という外見の話から入るのではなく、「この会社は何者なのか」「どんな価値を誰に届けたいのか」「競合と何が違うのか」という、ブランドの本質に関わる問いを丁寧に掘り下げることから始めます。
ヒアリングで確認すべき主な観点は以下のとおりです。
そしてこのヒアリングと並行して取り組みたいのが、競合を含めた同業他社のロゴのマッピング(位置づけや関連性の整理)です。収集したロゴを四象限マトリクス上に配置し、業界全体のビジュアルイメージを俯瞰します。このとき重要なのは、競合ロゴが特定の象限に偏っていないかを確認することです。
例えば業界全体に青いロゴが多い場合、同じ方向性で制作すると埋もれてしまうだけでなく、競合と混同されるリスクも生まれます。あえて赤を選ぶといった戦略的な色の選択が、差別化の強力な武器になることがあります。
自社ブランドのポジショニングを決める前に競合の布陣をチェックすることで、後工程のデザイン提案における判断軸がより明確になるのです。
コンセプトが固まったら、いよいよデザインの制作フェーズに入ります。このとき当社が実践しているのが、「四象限での方向性の整理」と「白黒から始める」というアプローチです。
まず四象限では、縦軸と横軸にブランドの方向性を示す対立概念(例:「シンプル ⇔ 複雑」「フォーマル ⇔ カジュアル」など)を設定し、自社がどのポジションを目指すかを可視化します。こうすることで、クライアントと制作者の間でデザインのゴールイメージを共有しやすくなります。
次に重要なのが、最初はカラーを使わずに白黒でデザインを進めることです。色が加わると「なんとなく好き(嫌い)」という感情的な判断が先行しやすく、本来確認すべき形・構造・バランスの議論が後回しになってしまいます。まず骨格に集中し、形として成立しているかどうかを確認した上で、最後に色を加えていくのが正しい順序です。
デザインの方向性を検討する際には、「何を主役にするか」という軸の整理も欠かせないポイントです。サービスや事業内容をビジュアルとして直感的に伝えたいのか、それとも社名・屋号をシンプルに認知させることを優先するのか。この選択によって、ロゴ制作のアプローチは大きく変わります。
ターゲットが複数いる場合は、どちらの層に寄せるか、あるいは中間をとるかによってデザインのトーンも変わります。そのため、提案の段階では軸足を変えた複数のパターンを用意し、クライアントとともに選択肢を比較・検討できる状態を作ることが重要です。
見落としがちな視点として、競合他社が軒並みまじめで誠実なトーンのロゴを使っている業界では、あえてそれを「崩す」アプローチが有効なケースもあります。親しみやすさやユーモアを前面に出すことで、同業他社のなかで際立つポジションを取れる場合があるためです。重要なのは「なんとなく崩す」のではなく、競合マッピングの結果とブランドのコンセプトを根拠として「意図的に崩す」という判断であることです。
「分かりやすさ」だけが、ロゴに求められるわけではありません。あえて一目では意味の読み取れない抽象的な造形で、戦略的に「気になる・引っかかる」アテンションを生むロゴも存在します。分かりやすさと引っかかりのバランスをどこに置くかを、クライアントと丁寧に議論することが求められます。
ロゴは、完成した瞬間がゴールではありません。名刺、Webサイト、パンフレット、看板など、日々のあらゆる場面で使われてこそ、はじめてブランドの入口として機能します。つまり、「運用しやすいロゴを作る」こと自体が、制作の重要な目的のひとつになるわけです。
その観点から、デザイン案が固まってきたら、実際の使用シーンを想定した耐久テストを行います。確認したいポイントは以下の通りです。
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POINT1 縮小したときの視認性 名刺やスマートフォンのアイコンサイズまで小さくしても、形が潰れないか? |
POINT2 拡大したときの品質 看板や展示パネルなど大判に使用した際に、違和感や粗さが出ないか? |
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POINT3 白黒・反転時の再現性 モノクロ印刷やネガポジ反転でも、ブランドロゴとして成立するか? |
POINT4 異なる背景色との相性 明るい背景・暗い背景・色付きの背景、それぞれでロゴが引き立つか? |
こうした観点でのブラッシュアップを経て、最終的に仕上がったロゴは「ロゴガイドライン(ロゴレギュレーション)」として運用をルール化します。
使用可能なカラー・最小サイズ・余白の取り方・NG例などを文書にまとめることで、制作会社やデザイナーが変わっても、ブランドの一貫性が担保される仕組みが整います。
ロゴガイドラインの制作はしばしば後回しにされますが、後回しにするリスクは想定外の場面で顕在化します。例えば、ロゴ制作に関わったデザイナーや担当者が、仕様を十分に引き継がないまま退職してしまうケースです。
「なぜこの色なのか」「最小サイズはどこまで許容されるのか」といった判断基準を理解しているのが退職したデザイナーだけだと、その後の運用で一貫性が損なわれてしまうでしょう。制作と並行してガイドラインを整備しておくことが、長期的なブランド管理の基盤となります。
ここでは、実際に当社がこれまでに手がけたロゴを紹介します。


BtoB向けの緑化事業を新しいサービスブランド「Wellne(ウェルネ)」としてローンチすることになり、当社にてサービスサイト制作と同時にサービスブランドロゴのデザイン制作を担当しました。
老舗企業である日比谷花壇というネームバリューに頼り過ぎず、お花のイメージが先行するブランドから独立させ、新しいブランドとして育てたいという想いを受け止め、サービスの頭文字である「W」をモチーフに決定。
緑のグラデーションカラーは緑化事業の植物をあらわし、多層の色合いによって提案の幅の広さ、柔軟な対応力を表現しています。
また、ブランド認知を重視するシチュエーションで使用する英語のロゴも用意し、掲載する媒体や用途に応じて使いやすいようにバリエーションを持たせました。

競合のロゴマッピングを行った際に分かったのが、子ども向け施設のロゴデザインは原色やビタミンカラーなどで元気を表現するものが多いこと。
Ohana幼児教室では、一人ひとりの才能と向き合う真摯なスクールの姿勢を反映することに注力し、これから自分の色をつけていく子どもたちの可能性を応援する意味合いを込め、あえて白い花と白い葉をロゴのベースにしました。
花の中央にある5つのカラーは多様性をあらわし、成長とともに彩っていくさまざまな個性をデザインしています。
ブランディングの語源に立ち返りながらロゴの本質的な役割を整理し、当社が実践する制作フローを実例とともに紹介しました。
最後にあらためて強調したいのは、ロゴに求められるのは「見た目の斬新さ」よりも「耐久性と普遍性」であるという点です。時代のトレンドを追いすぎたロゴは、数年後に陳腐化するリスクを抱えています。骨格がしっかりとしたシンプルな構造を持ち、あらゆる媒体・サイズで一貫して機能するロゴこそが、長期にわたってブランドを支え続けます。
プラスシーブイ株式会社では、ロゴ制作をはじめとするブランドコミュニケーションの設計・実行を支援しています。「今のロゴがブランドとして機能しているか分からない」と感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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