※株式会社エッジコネクションより寄稿いただいた内容を掲載しています。
営業活動を行っている企業であれば、ほぼ間違いなく営業資料を作成しているかと思います。しかし、「うちの営業資料は使いにくい」とほぼフリートークで商談を行っている担当者がいたり、担当者によって説明の内容がバラバラだったりするなど、営業資料を活用する重要性が十分に理解されていないケースは意外に少なくありません。
また、「資料を作り込んでいるのに商談が盛り上がらない」「説明は丁寧なのに提案が刺さらない」という悩みも多く聞かれます。その原因の多くは、営業資料の中身(詳細)ではなく「商談全体の流れを設計できていないこと」にあります。
本記事では、営業資料を単なる説明ツールではなく、商談全体を設計するためのツールとして捉え直し、相手を引き込む資料の構成と活用方法について解説します。
目次
営業資料が重要な理由は、営業担当者間のスキル差を平準化できる点にあります。資料に書いてあることは、資料を使えば必ず相手に伝わります。そのため、重要な事項を伝え忘れる心配もありません。そして、営業資料が購買意欲をそそる構成になっていれば、すべての商談で成約率が底上げされます。
属人的な商談に頼っている組織では、トップ営業の成果は出る一方で、他の担当者は「何を話せばいいか分からない」「どの順番で説明すればいいか迷う」という状態になりがちです。営業資料が整備されることで、経験の浅い担当者でも一定の品質で商談を進められるようになります。
当社でも、以前は担当者によって商談内容やロジックが大きく異なっていました。営業資料を整備してからは、新人でも経験者に近い水準でトークを展開できるようになり、組織全体の商談品質が向上しています。
口頭の説明だけでは、商談のたびに伝える内容がブレます。「サービスの料金体系について聞いていなかった」「導入実績があることを知らなかった」など、伝え漏れによって顧客の検討が止まるケースは多いものです。資料があれば必要な情報を必ず届けられるため、機会損失を招くリスクも低減できます。
営業資料の最大の役割は、成功(受注)確率が高い商談のシナリオを準備することです。どの順番で何を伝え、どのタイミングで顧客にどんな質問してもらうか――。この具体的な設計があるかどうかで、商談の質は大きく変わってきます。
逆にいえば、「使いにくい」営業資料は「相手を引き込む営業資料の作り方(設計やシナリオ)」を押さえていないと言えるかもしれません。営業資料は、新人でも受注しやすくするために活用するもの。「使いにくい」まま放置するのではなく、使えるように作り直すことが重要です。
整備された営業資料を使っても商談がうまくいかない場合は、構成上の問題が隠れていることがあります。相手を引き込めない営業資料には、以下のような共通したパターンがあります。
会社紹介からサービス説明まで、ひとつの資料に詰め込んで一気に説明してしまうケースです。情報量が多くなるほど、顧客が質問したり自分の状況を照らし合わせたりする余地がなくなり、一方的な説明で終わってしまいます。
会社案内とサービス紹介が同じ資料にまとまっていると、「信頼を得るフェーズ」と「提案するフェーズ」の切り分けができません。顧客がまだ自社のことを知らない段階でサービスの詳細な説明を始めても、なかなか興味を持ってもらえません。
「資料を一通り説明してから、あとは質問」という流れでは、顧客が受け身になりがちです。商談後半のフリートークは盛り上がりに欠け、提案の核心に触れられないまま終わってしまうかもしれません。
フリートークのタイミングと目的を設計することが、商談を前に進める鍵です。
先述した3つの問題に共通しているのは、資料が1点にまとまっているがゆえに商談の流れを設計できていないことです。この構造的な問題を解消するのが、営業資料を「2つに分ける」という考え方です。
相手を引き込む商談を実現するには、営業資料を「会社案内」と「サービス紹介」の2つに分け、その間にフリートークを挟む構成にすることが重要です。
テレビショッピング(通販番組)を見たことがあるでしょうか。商品の概略や特長を説明した後、出演しているタレントから「流石にこの汚れは落ちないよね?」「操作が難しいんじゃない?」などさまざまな質問や疑いの目が向けられます。それに対して一つひとつ答えていく過程で視聴者は引き込まれ、最後の料金提示で全員が「安い!」となるのがお決まりの流れです。
これが、相手を引き込む商談です。営業資料を1点にまとめて最初から全部説明してしまうのは、テレビショッピングでプレゼンすべき機能をすべて最初に紹介し、タレントが質問する余地をなくしてしまうのと同じです。盛り上がらないのは当然と言えるでしょう。
商談の最初で会社案内を行い、「信頼できる会社だ」と思ってもらうことが先決です。人間は情報を「何を言ったか」以上に「誰が言ったか」で判断します。採用活動でまず履歴書と職務経歴書を提出するように、相手の経歴や実績を把握して初めて、その人の言葉を正確に受け止めることができるようになります。これは会社に対しても同じです。
どんなに優れたサービスや戦略があっても、自社が信頼されていない状態では伝えた内容を正しく評価してもらえません。まず会社概要と取引実績で「どんな会社か」を把握してもらい、その上で事業内容を説明する。その順番を徹底するだけで、同じ言葉でも伝わり方が大きく変わってきます。
会社案内でしっかり信頼を得られれば、フリートークに入った段階で「提案を聞いてみたい」と顧客が前向きになり、より饒舌に自社の課題を話してくれるようになるでしょう。
フリートークでヒアリングした内容をもとに、「そうした状況でお役に立てるサービスがあります」とサービス紹介に入ります。このひと言があるだけで、顧客は「自分のための提案だ」と感じ、資料の内容を自分事として聞いてくれます。
また、資料説明後に質問が出てきた際も、「その件は先程のページに書いておりまして…」と戻るより、「それはこちらの資料で説明させていただきます」と別の資料を取り出すほうが、顧客が引き込まれていく様子がイメージできるはずです。
実際に資料を作る際のポイントを、会社案内とサービス紹介に分けて解説します。
会社案内・サービス紹介ともに、「1ページ1トピック」を原則とします。
たとえるなら、紙芝居です。会社概要と事業概要を同じページに載せると、会社概要を説明している途中で事業概要の質問が飛んできて話の腰を折られてしまうでしょう。1ページにつき1トピックのテーマに絞り、1枚ずつめくりながら丁寧に説明することで、顧客は情報を整理しながら提案を聞けます。
会社案内は、以下のような流れを推奨します。
よくあるのが、表紙の次に理念を掲載し、会社概要を最後に持ってくるパターン。しかし、どんなに素晴らしい経営理念でも、その会社の規模や実績を知らない状態では正しく受け止めてもらえません。まず会社概要と取引実績で「どんな会社か」を把握してもらい、その上で事業内容や理念を伝える。それによって、より正確に自社のことを理解してもらいやすくなります。
なお、会社概要に書く内容は履歴書・職務経歴書をイメージすると分かりやすいでしわか。資本金が少ない場合は記載しない、本社住所が印象的でない場合は立地の良いシェアオフィスを事業所として記載するなど、見せ方の工夫で信頼感は変わります。創業間もない企業の場合は、取引実績の代わりに経営陣の略歴を掲載するのも有効です。
サービス紹介のポイントは、「伝えたい順」ではなく「理解してもらえる順」で構成することです。推奨する流れは以下のとおりです。
オーダーメイドでソリューションを提案する企業の場合は、サービス紹介資料が作りにくいこともあります。その場合は事例集を整備し、業界・業務内容・予算規模といった顧客の判断軸になり得る条件で絞り込んでおき、「御社の場合はこちらの事例が近いですね」とすぐに見せられる状態にしておくと効果的です。
ここまで説明してきた構成は、あくまで出発点です。最も重要なのは、「営業資料に完成形はない」という認識を持つことです。
商談を重ねる中で、「ふとした言い回しで顧客の表情が変わった」「あるページの説明で急に前のめりになった」といった反応は、資料を改善する上での貴重なヒントです。こうした気づきをその場限りにせず、商談後に記録する習慣を持ちましょう。記録があれば改善の根拠になり、チームでノウハウを共有することもできます。
商談で同じ質問が繰り返し出てくる場合、それは資料の説明が不足しているサインです。「料金体系が分かりにくいと言われた」「導入後のサポートについて毎回聞かれる」といった兆候が見られたら、その情報を資料に先回りして組み込んでいきましょう。顧客の疑問を潰しておくことで、商談はよりスムーズに進むようになります。
時代の変化によって、これまで効果的だった資料の言い回しや訴求ポイントが通じなくなることもあり得ます。常により良いページの流れはないか、言葉の使い方はないか、とアンテナを張り続けながら改善し続ける姿勢を持つことが、長期的に成果を出し続ける営業資料を整備する条件です。
本記事では、相手を引き込む営業資料の考え方と作り方について解説しました。以下に要点を整理します。
営業資料は「一度作ったら終わり」ではなく、商談のたびに磨き続けていくべきものです。まずは自社の資料が「会社案内」と「サービス紹介」に分かれているかどうかを確認するところから始めてみてください。
最新記事
タグ